ダン・パトリックが言葉を失うことはめったにない。だが、フル・セイル大学における「Dan Patrick School of Broadcasting」について語るとき、伝説のスポーツキャスターは言葉が出ないほどに感動する。
10年前、パトリックはどうなるか分からない未来のために『ESPN』を去るという賭けに出た。『Sports Illustrated』のコラムニスト、リック・レイリーは「チアーズ」のシェリー・ロングやほかのテレビスターとともに、脚光を浴びなくなると予想していた。
『ESPN』を去ってから消えていった人たちは多い。だが、パトリックは成功した数少ないひとりだ。自身が組織するテレビやラジオの番組、ウェブサイトを発足させ、『NBC Sports』で「Football Night in America」のホスト役を務め、『Sports Illustrated』でコラムを執筆している。
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61歳のパトリックは現在、自身の放送スクールを発足させているところだ。キース・オルバーマン、リッチ・エイセン、故スチュアート・スコットと組み、1989年から2006年まで「SportsCenter」の全盛期で「Big Show」を放送していたパトリックほど、スポーツ放送を知っている人物はいない。
1970年代終盤にパトリックが大学を後にしたとき、彼はスポーツ放送についてほぼ何も知らなかった。約5年前、彼はエージェントである「Playbook Inc」のリード・バーグマンに、最も競争的で大変な分野のひとつであるスポーツ放送における若手の育成を望んでいると明かしている。
『SportsBusiness Journal』のジョン・ウーランドが最初に伝えたように、パトリックの放送スクールは1月29日にフル・セイル大学でデビューする。
パトリックによると、ただ名前の使用を認めただけではない。彼は直接教え、ウェブでのセミナーを持ち、空いている時間に学生の“放送”をチェックする。ビル・シモンズやセイジ・スティール、ジェレミー・シャープ、ケビン・ネガンジー、ジェイ・ハリスなど、『ESPN』時代の元同僚の多くがゲスト講師として予定されている。
マンハッタンでの発足イベントで、『Sporting News』のマイケル・マッカーシーが、パトリックやエミー賞を受賞した『ESPN』のプロデューサー、ガス・ラムジーを直撃した。ラムジーはDan Patrick School of Broadcastingのプログラムディレクターを務める。
パトリックはラムジーを「必要不可欠」と評し、彼がいなければスクールを始めることはなかったとまで述べた。パトリックとラムジーの独占インタビューを抜粋してご紹介する。
SPORTING NEWS(以下SN):ダン、このアイディアを思いついた経緯を教えてください。
DAN PATRICK(以下DP):この子たちが来るのを見たいんだ。彼らは卒業した。でも、まだ準備はできていなかった。だからエージェントのリード・バーグマンに言ったんだ。「これを進めるために私を助けてくれる人を見つけよう」とね。翌日、彼はマイアミからフル・セイルまで車を飛ばした。長時間の仕事だったよ。でもこの2年で実現したんだ。
SN:競合ひしめくJ-schoo市場で目立つには?
DP:この学生たちを成長させるシステムを用意したいと思っている。彼らは自分たちが望むことやどのようにそれをやるかしっかり分かっているんだ。十分じゃないか?我々は(テレビの)ネットワークや自分たちが持つコンタクトを用い、それを広めるようにする。「あなたを助けられる人が我々にはいます」といった具合にね。インターンとしてやってもらいたくはないんだ。制作アシスタントになってもらいたい。みんなより一つ先に行ってほしいんだ。私はこの学生たちを見つけた。彼らは目を大きく見開いており、とても無垢なんだ。私は誰かが彼らに実際を教えたかどうかを知らない。だから、我々はセイジ・スティール、ジェレミー・シャープ、ビル・シモンズに「これはやる必要がある。これはやるな。私はこれをやった」と言ってもらうんだよ。実際のチェックができる人たちがいることが本質なんだ。誰もが「(スポーツ放送を)やりたい」と言う。最も競争的なフィールドだよ。座ったまま「車のメカニックになりたい」「心臓外科医になりたい」なんて言っている人はいないだろう。誰もが簡単だと考えている。テレビに出られると思っている。誰もがボブ・コスタスじゃないってことを、彼らに分からせなければいけないんだ。そんな簡単じゃない。我々の多くがアヒルみたいなんだよ。水の上ではよく見えるが、下ではとてつもなく足かきしているのさ。
SN:もっと細かく教えていただけますか。
DP:(スクールをしたいのは)全体像を与えるためだ。カメラやポッドキャスト、ラジオで出演するチャンスを得られる。大学に行ったときよりも評判を得られる。カメラの前や後ろでね。我々には『ESPN』で仕事をしたディレクターたちがいる。プロデューサーたちもいる。だから、キャンパスで直に会うにしろ、ウェブでのセミナーにしろ、提供してくれる人たちがいるということだ。私はテープをレビューする。ただ、私にとってキーパーソンだったのは、ガス・ラムジーだよ。彼には23年の経験がある。ガスは『ESPN』に来たすべての学生たちを扱った。彼は注目のスーパーバイザーだったんだ。彼は彼らがいかに準備できているかをしっかりと知っている。私にとっては彼がいることが大事だったんだ。私が得られる最も重要な人物だった。彼はそれを分かっている。どのプロデューサーもカメラに映りたいと望む。あるいは望んでいた。それが映らないと分かったときにどうするのか?そこでガスが別のレベルに連れていってくれた。彼の仕事は、その人に自分が誰かを理解させ、『ESPN』のシステムの中で私がその人にどう仕事をさせ、アシスタントプロデューサーやプロデューサーにしていくのかということだった。ガスがいなければ、私がそれをすることはなかっただろう。だから彼は重要なんだ。
(後編につづく)
原文:Dan Patrick discusses ESPN, Barstool Sports and his latest sports media venture