今シーズン最高のスーパープレイ:カイラー・マレーの活躍でアリゾナ・カージナルズがリーグタイトルを視野に

Vinnie Iyer

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史上初めてMLBとNFLの両方のドラフトで1巡目指名を受けたのちにアメフトを選択し、アリゾナ・カージナルズに入団して2年目のクオーターバック(QB)、カイラー・マレーの勢いが止まらない。アメフトでは起死回生のロングパスを「Hail Mary」(“ヘイル・メアリー”)と呼ぶが、11月15日(日本時間16日)のバッファロー・ビルズ戦の終了間際にマレーが投じた43ヤードの逆転タッチダウンパスはその称号にもっとも相応しいものだった。早くも今シーズンの最高プレイに推す声が聞こえている──

NFLシーズン10週目、カイラー・マレーが ディアンドレ・ホプキンスに投じた「ヘイル・メアリー」タッチダウンパスが成功し、アリゾナ・カージナルズがバッファロー・ビルズから逆転で勝利をもぎ取ったとき、本当は誰も驚くべきでも、衝撃を受けるべきでもなかった。2020年シーズンにおいて、このカージナルズ2年目のQBが見せている輝かしい活躍のハイライト動画を作成するとしたら、そこに欠けていたスーパープレイのひとつに過ぎないからだ。

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もっと重要なことは、マレーの高いレベルのパスとランの能力が、彼のフットボールキャリアで今まで何回も達成してきたものを呼び寄せていることだろう。それは勝利だ。カージナルズは伝統的にランもディフェンスもさほど強くはない。そのことを考えると、ここまでチームに6勝3敗の好成績をもたらし、混戦のNFC西地区で1位に押し上げたマレーは最優秀選手賞(MVP)の有力候補に挙げられるべきだ。

パトリック・マホームズやラマー・ジャクソンがNFL2年目のシーズンに大ブレークしたことに続くように、23歳のマレーは2年目の今シーズンでチームを力強く引っ張っている。クリフ・キングズベリー(カージナルズのヘッドコーチ)が要求する目まぐるしく速い動きのオフェンス戦略に対応した全方向へのパス能力もさることながら、マレーのラン能力はさらに特筆されるべきだ。

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ビルズ戦でも2つのタッチダウン・ラッシュを決め、マレーはスーパーボウルが始まって以降55年の歴史において5試合続けてランで得点を挙げた初めてのQBとなった。シーズン9週目のマイアミ・ドルフィンズ戦ではキャリア初の1試合100ヤード以上のラッシュを記録した。今シーズンここまでの通算ではラッシング・ヤードは604で、10個のタッチダウンを挙げている。このままのペースを保てば、マレーはランだけで1,073ヤードと18個のタッチダウンを積み上げることになり、その数字はリーグのほとんどのランニング・バックたちが羨むであろうものだ。

マレーが自らの足で時間を稼いだ後にホプキンスにボールを投じた時、この43ヤードのパスが成功する可能性は十分にあった。マレーは強い肩とそして自信に溢れているからだ。マレーはパスでも4,222ヤードと30個のタッチダウンを挙げるペースなのだ。

シーズン7週目に本拠地アリゾナのシアトル・シーホークス戦で劇的な延長戦を制したとき、マレーはラッセル・ウィルソン(シーホークスのQB)のパフォーマンスを上回ったことで、カージナルズがNFC西地区でシーホークスの上位につける可能性を示唆した。その4週間後、木曜日の夜(日本時間20日)に対戦が組まれているシーホークスを連破することがあれば、マレーはカージナルズがNFC西地区1位につけた位置をさらに強固にすることができる。

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NFCの現在順位はどうであれ、このリーグの最終的な行方は各チームのQBがいかに1月まで調子を高めることができるかにかかっていることは間違いない。マレーを擁するカージナルズはスーパーボウル55へ向けたプレーオフ・トーナメントで他の強豪チームに並ぶ存在になれるだろう。

現段階において、マレーと他のスターQBたち、すなわちウィルソン、アーロン・ロジャーズ、トム・ブレイディ、そしてドリュー・ブリーズを隔てる唯一の違いは、はるかに若いと言うことを別にすれば、それはスーパーボウルの優勝リングを手にしていないことに他ならない。カーソン・ウェンツ(フィラデルフィア・イーグルスのQB)は現在のところ本調子ではないが、彼のプレイがかつてイーグルスを優勝に導いたことを忘れてはならない。ウェンツを擁する同じチームが今のところプレーオフを狙える位置にある。

今シーズン、マレーが大きく調子を崩したゲームはまだない。しかし、それはすべてのベテランが経験することだ。キングズベリー率いるカージナルズが早くもプレーオフの有力候補に躍り出たのは、もっとも危険なパーティー・クラッシャーであるマレーの存在が大きい。カージナルズGMのスティーブ・ケイム氏も大いに称賛されるべきだろう。ケイム氏はかつて米スポーティングニュース選出のNFL年間最優秀経営者賞を受賞したことがある。マレーを獲得し、ジョシュ・ローゼンを放出したことが、カージナルズがどん底から躍進することに繋がったのだから。

マレーが「独り立ちした」QBになるまでに長い時間はかからなかった。オフェンスとディフェンスにさまざまな問題を抱えながらも、マレーは毎週のように勝利へのチャンスを作り上げている。だからこそ、ケイム氏とカージナルズがヒューストン・テキサンズからホプキンスを盗み取ったことは、マレーを止めようとするすべての相手チームにとって大きな痛手となった。マレーは現代のNFLにおいて最速のスピードを誇る選手であり、そのパワーとスピードはますます高まっている。マレーを捕まえることは難しくなる一方だし、広いターゲットのパス方向をすべてカバーすることはさらに難しい。

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ビルズは試合前半にマレーのランを囲い込むことに成功したし、試合後半になるとマレーはエンドゾーンに2つの不成功パスを投げてしまった。もっともそれが、終了間際の奇跡的な逆転勝利に繋がったわけであるが。最近は相手チームのホプキンスへの警戒が強まってきたことで、マレーはクリスチャン・カークを用いることが多くなっていた。しかしこの試合ではカージナルズはホプキンスがチーム第1のレシーバーであることを明確に示し、マレーにとってもっとも信頼すべき場面にホプキンスはいた。

当初はウィルソンが初の最優秀選手賞(MVP)を受賞するシーズンになると見られていたが、ウィルソン自身のミスが重なり、シーホークスが連敗したことで、その雲行きは急に怪しくなった。それと同時に同じ西地区からマレーとカージナルズがNFCのタイトルを脅かす大いなる存在として浮上してきた。マレーの驚くべきパフォーマンスと素晴らしい成績によって、カージナルズはどのチームであっても、どの場所であっても、破ることができることが現実味を帯びてきた。

現在までのNFLキャリアでもっとも奇跡的なプレイを演出するまで、マレーはすでにフィールド上で万能選手であることを証明済みだった。あのようなプレイはこれからも何回も続くだろう。かつてはマレーの身長が低いことが唯一の懸念材料だった。だが、それは今や問題にもならない。後は今シーズンのカージナルズがマレーを擁したことで、チームがどこまでの高さまで上ることができるかが問題なのだ。

(翻訳:角谷剛)

Vinnie Iyer

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Vinnie Iyer, has been with TSN since 1999, not long after graduating from Northwestern University’s Medill School of Journalism. He has produced NFL content for more than 20 years, turning his attention to full-time writing in 2007. A native of St. Louis, Mo. but now a long-time resident of Charlotte, N.C. Vinnie’s top two professional sports teams are Cardinals and Blues, but he also carries purple pride for all things Northwestern Wildcats. He covers every aspect of the NFL for TSN including player evaluations, gambling and fantasy football, where he is a key contributor. Vinnie represents TSN as host of the “Locked On Fantasy Football” podcast on the Locked On network. Over his many years at TSN, he’s also written about MLB, NBA, NASCAR, college football, tennis, horse racing, film and television. His can’t-miss program remains “Jeopardy!”, where he was once a three-day champion and he is still avid about crossword puzzles and trivia games. When not watching sports or his favorite game show, Vinnie is probably watching a DC, Marvel or Star Wars-related TV or movie.