トム・ブレイディとビル・ベリチックが再び並ぶ…MVPと最優秀コーチ賞の筆頭候補に

Sporting News Japan Staff

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トム・ブレイディ(タンパベイ・バッカニアーズ)は今でも自身4度目となるNFL最優秀選手賞(MVP)を虎視眈々と狙っている。ビル・ベリチック(ニューイングランド・ペイトリオッツ)もやはり4回目となるNFL最優秀コーチ賞を今でも秘かに狙っている。

17試合制に拡大された2021年のレギュラーシーズンで予想もされなかったことだが、第12週目を終了した現在、長い間NFLでGOAT(史上最高)と見られてきた選手とコーチが、それぞれの立場で最高の個人賞を獲得する可能性が大きくなっている。

11月28日(日本時間29日)のテネシー・タイタンズ戦前まで、ベリチックのオッズ(DraftKings Sportsbookで⁺450)は、アリゾナ・カーディナルスのクリフ・キングスベリー(⁺500)に次いで2位だった。カーディナルスはここまで9勝2敗で、今週はバイ・ウィークで試合がなかった。ペイトリオッツはタイタンズから貴重な勝利を挙げ、戦績を8勝4敗に伸ばし、AFC東地区の首位に躍り出た。第13週目を前にして、ベリチックが最優秀コーチ賞の筆頭候補になったことはほぼ間違いないだろう。

ブレイディ(+250、ある場所では +225)はジョシュ・アレン(バッファロー・ビルズ)や他の若いクォーターバックたちを大きく引き離している。11月28日(同29日)のインディアナポリス・コルツ戦ではタッチダウンパスの数をリーグ最多の30個に伸ばしたが、インターセプションも9個になってしまった。だが、バッカニアーズは最終的にコルツを接戦で制した。それによって、バッカニアーズの戦績はペイトリオッツを僅かに上回る8勝3敗となった。

2020年シーズン前に、ブレイディはベリチックの元から離れた。そしてブレイディはバッカニアーズを11勝5敗のNFCワイルドカード枠から奇跡のようなスーパーボウル制覇へと導き、自身7個目の優勝リングを手にした。その昨シーズン、ブレイディを失ったペイトリオッツは7勝9敗でバッカニアーズに5ゲーム差をつけられ、2008年以来初めてプレーオフ進出を逃した。2021年のペイトリオッツはここまで既に昨シーズンより1試合多い勝利を挙げている。ブレイディを擁するバッカニアーズは初のNFC南地区優勝へと近づいている。

ベリチックはペイトリオッツの人事にも大きな役割を担っている。ブレイディを失った穴を埋めるために、チームの守備力を強化し、攻撃陣に多彩さを加えてきた。ブレイディに代わって、そのシステムを継承しているのが新人クォーターバックのマック・ジョーンズだ。シーズン開幕戦でマイアミ・ドルフィンズに敗れるなど、ペイトリオッツはシーズン前半を低調なスタートを切ったが、直近の試合では6連勝中だ。第13週目では同地区2位のビルズとの対戦が組まれている。

ペイトリオッツの躍進は大方の予想をはるかに上回るものだ。ベリチックはブレイディという司令塔がいなくても、強いチームを作りあげた。スーパーボウル優勝リングを6回獲得して、既に高い名声を確立している。キングスベリーやブランドン・ステイリー(ロサンゼルス・チャージャーズ)らの新しい世代のコーチたちを上回る注目を集めるには、そうした変化を起こすしかなかった。

一方、44歳のアスリートとしては驚異的な成績を挙げているブレイディだが、MVPの筆頭候補という見方は少し大げさかもしれない。バッカニアーズに移籍した1年目の昨シーズンは40個のタッチダウンパスを数えたものの、それでもMVP投票では受賞者のアーロン・ロジャース、2位のアレン、そしてパトリック・マホームズの後塵を拝し、1票も獲得できなかった。ブレイディはブルース・エリアンス(ヘッドコーチ)とバイロン・レフトウィッチ(攻撃コーディネーター)の指揮の下、今シーズンさらにパスの精度を上げてきている。

ブレイディは昨年、NFC優勝決定戦でロジャースを擁するグリーンベイ・パッカーズを破り、続くスーパーボウルではマホームズを擁するカンザスシティ・チーフスに勝ち、自身5度目となるスーパーボウルMVPを獲得した。その勢いのままで2021年シーズンに臨み、年齢による衰えや他の若いスターたちの台頭でレギュラーシーズンMVP獲得は阻まれるとの予想を覆しつつある。ブレイディはここまで完璧であるとは言えないが、それでも第14週目に本拠地で迎え撃つビルズのアレンに強い対抗心を感じていることは間違いないだろう。

ブレイディが最後にペイトリオッツでMVPを獲得した2017年シーズン、チームは13勝3敗で、この時の個人成績は今シーズンと似たようなものだった。そのシーズンはベリチックにとっても、最優秀コーチ賞を受賞した最後のシーズンでもある。この2人は2010年もペイトリオッツでダブル受賞し、ベリチックは2003年、ブレイディは2007年にもそれぞれ受賞している。2007年のブレイディは当時NFL最多だった50個のタッチダウンパスを成功させた。

ラウンド1となった昨シーズンのブレイディとベリチックの戦いは間違いなくブレイディに軍配が上がった。ラウンド2の今シーズンはいまのところ引き分けている。スーパーボウル優勝予想オッズは、ブレイディを擁するバッカニアーズ(+550)がジョーンズを擁するペイトリオッツ(+1100)をはるかに上回ってはいるが。

ペイトリオッツ王朝を築き上げた最重要人物がブレイディであったか、それともベリチックであったか、というのは永遠に解答が得られない疑問である。まるで惑星直列のように、史上最高のクォーターバックと史上最高のヘッドコーチが同じチームにいた、それほど特別な時代だったのだ。今は2人が別々の場所で、それぞれがNFLで最高の栄誉を得ようとしている。

(翻訳:角谷剛)

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