ニューヨークにて――現地5月8日夜、全米テレビ芸術科学アカデミーはスポーツ・エミー賞の授賞式を開催した。今回で39回目を迎えるこの式には多くの受賞候補者が出席したが、私には、アカデミーが主要賞2つにおいて判断を誤ったように思える。それは、試合解説者部門と実況者部門だ。
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私なら、試合解説者部門にはトニー・ロモを、実況者部門にはジム・ナンツを選んでいただろう。彼らは昨シーズン、2人で新たな試みとなるNFLの実況解説をCBSで担当した。しかし、アカデミーが賞を授けたのは、ESPN兼ABCのカーク・ハーブストレイットと、NBCスポーツのマイク・“ドク”・エムリックだった。彼らはそれぞれ、土曜夜のカレッジフットボールとNHLの試合のテレビ実況を務めている。
この記事はエムリックとハーブストレイットの受賞をけなすためのものではない。エムリックは実況アナウンサー界の金字塔的な存在の1人である。これで5年連続のエミー賞受賞となる彼は、ジョー・バックとともにFoxスポーツの実況にも参加している。さらに、これは過去8年間で通算6度目の受賞でもある。ハーブストレイットは今回で3度目の受賞だ(過去2回は「カレッジゲームデイ」のスタジオ解説者として受賞)。ドラフトのテレビ中継において、ESPNとNFLネットワーク両局を合わせてもハーブストレイットが最も優れた解説をしていた、と私は数週間前にも記事にしていた。これは、彼が初めてのドラフト担当だったことを受けて記したものだ。
しかし、この1年はロモとナンツの1年だった。彼らは昨シーズンから共に実況席に座ることとなったが、初年度ながらも試合に大きな変化を与えた。ダラス・カウボーイズのQBだったロモは、引退してからすぐに解説者となった。彼は、パスが好まれる今日のNFLにおいてどこに注目して試合を見るべきなのかを視聴者に伝え、パスやランが行われる前にそれを予言し、複雑な守備や攻撃の陣形を瞬時に理解し、調子の良い時はジョン・マッデンを彷彿とさせるイタズラ好きな姿も垣間見せた。アメフトはスポーツであり、常に楽しくあるべきだ。ロモは、つまらない試合も楽しめるものに変えてみせる。昨年ジャクソンビル・ジャガーズが10対3でバッファロー・ビルズを下した、あの退屈なプレーオフの試合が良い例だ。試合が大規模で面白いものであればあるほど、ロモとナンツの実況解説のパフォーマンスも良いものとなっていた。ニューイングランド・ペイトリオッツ対ジャクソンビル・ジャガーズのAFCチャンピオンシップゲームでの2人の働きは、今回のエミー賞でCBSがプレーオフ中継部門を受賞するための大きな手助けとなった。
ロモを新人王だとすれば、ナンツはCBSの秘密兵器だ。ナンツはオフシーズン中にロモを指導し、「サーズデーナイトフットボール」と日曜午後の試合の解説のための準備を整えさせた。最初はナンツの指示に対してもたついたり、マイクに向かってモゴモゴと話したりと素人同然のロモであったが、彼らはすぐにチームとして馴染むようになった。ファンもそれに気付いていた。シーズン中盤の頃にはすでに多くのファンがロモをNFL随一の解説者であると称していた。それはロモのみならず、ナンツに対しての称賛でもあった。ナンツは、彼と20年連れ添い、ナンバー1解説者の座をしぶしぶ退いたフィル・シムズからロモへと仕事を引継ぐ、難しい役割を成し遂げなければならなかった。シムズは現在、新たに「ザ・NFLトゥデイ」の試合前コーナー担当として愉快な役回りを担当している。ジェームス・ブラウンや、ブーマー・アサイアソン、ビル・コワー、ネイト・バーレソンといった共演者との相性も抜群だ。
CBSが長年に渡り、“シムズ疲労”に陥っていた人々から批判を受けていたことを思い出してほしい。CBSは打開策として元審判のマイク・キャリーを起用するも失敗に終わっていた。今となっては、彼の名前を聞いてもFoxのルール解説者マイク・ペレイラを思い起こす人はどこにもいないだろう(編注:マイク・キャリーは解説者時代に「マイク・ペレイラのマネをしている」と批判を受けていた)。そこで、CBSスポーツのシーン・マクメイナス会長はロモとともに大博打に出ることにした。結果は大成功だ。ロモとナンツのタッグの成功によって、すでにスポーツテレビ局界は変化を見せている。
(後編へ続く)