田臥勇太、今の夢は「1年でも長くプレイすること」――日本スポーツ学会大賞授賞式で語る

Tetsuya Ohashi

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現Bリーグ・栃木ブレックスで、元NBAフェニックス・サンズの田臥勇太が、日本スポーツ学会が選出する『日本スポーツ学会大賞』を受賞した。11月28日には、ハクジュホール(東京都渋谷区)で催された授賞式に田臥も参列。「これまで素晴らしい方々が受賞されてきた賞に選出していただき、大変うれしく思っています」と喜びを語った。

その後行なわれたトークセッション形式の記念講演では、自身のバスケットボールキャリアを振り返るとともに、さまざまなエピソードを明かした。

田臥勇太 Yuta Tabuse
日刊スポーツより、昨季Bリーグ優勝のシーンを収めた記念写真が贈られた Photo by Tetsuya Ohashi

1. 能代工業へ進学を決めた意外なワケ

神奈川県横浜市出身の田臥が秋田県の能代工業高校へ進学を決めたのは、「強い高校でバスケットがしたかった」という“バスケの名門”で挑戦するという動機に加えて、「田舎に憧れがあった」という意外な理由を告白した。

「高校見学の際に見た日本海の荒々しい波、電車が1時間に1本しか来ない環境など、能代は自分が理想としていた田舎だったんです」。

なお、在籍した3年間で、同校はインターハイ、国体、ウインターカップの3冠を史上初めて3年連続で達成している。

2. 身長について

もっと身長が高いほうがよかったと思うかと問われると、「手足が大きいので伸びるのかなと思っていたけど(身長173㎝で足は29㎝)、どうしても伸びてほしいとは思っていなかった」と言う。

「コートでは身長の差を気にしている暇もなく、写真で見たときに『こんなにサイズが違うんだ』と気づくくらい。背が高いに越したことはないけれど、サイズに関係なくプレイできるのがバスケットボールのいいところ」。

アメリカでNBAに挑戦していた際、現地のコーチから言われた「身体のサイズではなく、ハートの大きさで勝負しろ」という言葉を、今も大事にしているという。

3. ケガのリスクを避けるため…

練習前にシューズのひもを15分近くかけて縛るなど、身体のケアを大切にしている田臥は、「運転中は(腰への負担を避けるため)シートを倒さないようにしている」、「家でテレビを観るときは、首が曲がって負担がかからないよう、テレビに正対して観るようにしている」、「たとえ実家に帰るときでも、“マイ枕”を持参する」など、日常生活の中でもケガのリスクを軽減するよう気を付けていることを明かした。

「特に無理しているわけではないのですが、すべてのことがバスケットにつながっていると思うからです」。

田臥勇太 Yuta Tabuse
およそ50分にわたるトークショー式の記念講演のなかで、自らのキャリアやバスケットボール観を語った Photo by Takuma Oikawa

4. 今季のブレックスについて

昨季はBリーグ初代王者に輝いたものの、今季はヘッドコーチの交代や選手の入れ替えが多かったこともあり、序盤戦は7勝10敗(11月29日時点)と負け越している。しかし、「いいときに雰囲気がいいのは当たり前。負けが込んで雰囲気が悪いときに、全員が一つになって乗り越えていくことが大切。そうしたチャレンジを今季できていることが、自分は嬉しいしやりがいを感じています」と前向きに語った。

「チーム全員が、これから強くなっていくのを楽しみにしている」という言葉からは、確固たる自信が感じられた。

5. バスケットをプレイする子どもたちへ

「子どもたちが純粋にプレイを楽しんでいる姿に、今でも学ばされることは多い」と語った田臥。ひたむきな姿勢を忘れてはいけないと、再確認するという。

また、子どもたちには「ミスを恐れずプレイしてほしい」とアドバイスを送った。

6. 今後の夢

37歳と大ベテランの域に達している田臥だが、今後の夢について聞かれると「1年でも長くプレイすること」と話した。

「若い頃に先輩たちが言っていたこと、疲れが抜けにくくなったというのはあります。でも、今はそうしたことすらも楽しんでいる。もちろん勝つに越したことはないけれど、勝っても負けても“楽しい”と思える試合をしたい。それがベテランになったということだと思います」。

2020年の東京オリンピックについても、「毎日の積み重ねが大切。それが今後へつながっていく」と、出場への意欲をにじませた。また、Bリーグの若手には「NBAと日本代表、両方にチャレンジしてほしい」とエールを送っている。


10月に37歳になった田臥は、今も変わらずバスケットボールと真摯に向き合っている。その姿勢を十二分に感じられた50分間だった。田臥は最後に祝福の花束を受け取ると、翌日の練習に備えてチームのある栃木へとトンボ帰りしたのだった。

日本スポーツ学会は、選手や指導者、スポーツ関連団体、学校スポーツなど、スポーツに携わる関係者や有識者などによるスポーツ推進のための親睦団体。日本スポーツ学会大賞は2010年に創設され、田臥は8人目の受賞者となった。この賞は、長きにわたってスポーツ界に多大な貢献をしている個人や団体に贈られる。

文:大橋哲也


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