オーストラリアのメルボルン・ユナイテッドとの契約を発表した馬場雄大「今の僕に立ち止まるという選択肢は無かった」

大西玲央 Reo Onishi

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7月19日、NBA Gリーグのテキサス・レジェンズで2019-20シーズンをプレイした馬場雄大が、オーストラリアのバスケットボールリーグであるNBL(ナショナル・バスケットボール・リーグ)のメルボルン・ユナイテッドに移籍することが発表された。

チームは馬場が特別制限選手(Special Restricted Player)での契約であることを発表している。この契約では、中国、フィリピン、台湾、インド、韓国、シンガポール、日本の選手をサラリーキャップ対象外で契約することができ、外国籍選手ではなく地元選手と同様の扱いを受けることとなる。

この発表を受けて、7月20日に馬場雄大、メルボルン・ユナイテッドのジェレミー・ボグラー相談役、日本バスケットボール協会の三屋裕子会長が記者会見を行なった。

NBA入りを夢と公言している馬場が、アメリカではなくオーストラリアでプレイすることになった経緯について、本人は「こういった状況(新型コロナウイルスの影響)でGリーグのシーズンが中止になったということで、さらに再開の目処も経っていないということで、再開するまでのあいだ、ゲーム感覚を失わないためにも、どこかでチームに所属してやりたいという思いがありました」と語っている。

「そのなかでひとつの問題として僕には英語も挙げられていたので、英語圏のところでやりたいという思いがありました。自分のエージェントのアニータ(LivOn Global Sports Management)がオーストラリアとの繋がりが強いということもあったので、(NBLに)興味あるかとアクションしてくれたおかげで、メルボルン・ユナイテッドさんが興味を示してくれました」。

メルボルン・ユナイテッドのチーム練習は8月頃から開始されるが、新型コロナウイルスの影響もあってなかなかビザが下りないため、馬場はビザが下り次第、合流する予定とのことだ。

そういった海外でプレイする厳しい状況が続くなか、日本のBリーグでプレイするという選択肢があったのかと問われると、馬場は「僕にとって日本に残ることは立ち止まるのと同じこと」と答えている。

「今の僕には立ち止まるという選択肢は最終的に無かったです。挑戦し続けることが僕の刺激となって、さらなる高みへと進ませてくれると思っているので、最終的に一切の迷いはなく、海外に挑戦しようということになりました」。

2020年のNBAドラフト候補選手であるラメロ・ボールやRJ・ハンプトンが、高校卒業後にNCAAではなくNBLでプレイすることを選ぶなど、近年のNBLはNBAとの繋がりが強まっている。馬場はNBLについて「チームとしての組織力、フィジカルなところはGリーグより上に位置すると思っています」と評価している。

さらにNBLはNBAとの繋がりだけでなく、特別制限選手枠を設けるなどアジア市場を意識した戦略も目立つ。ボルガー相談役は、「2週間ほど前に馬場選手がオーストラリアに来るかもしれないという情報を聞き、我々は飛びつきました」と話した。

「チームとしてダラス・マーベリックスとも交流があり、今年の頭に彼らから『(馬場は)トッププレイヤーなので注目したほうが良い』と言われていました。リーグ全体が日本人選手にどれだけ注目しているのか、それが物語っていると思います」。

「マーベリックスから彼は2、3番をプレイできる選手で、とてもハートが大きく、プレイする意欲がとても、とても、とても高いと聞いています。ディフェンス、シューティング、ポジティブな姿勢といった、どんなコーチでも求めているスキルを持ち合わせています」。

移籍が決まったことについて、ワシントン・ウィザーズの八村塁から今朝連絡を受け、「アメリカがどうなるか状況がわからないので、すごくスマートですね」と伝えられたことを馬場は明かした。

「NBAは(シーズンを)やる、Gリーグはわからないという状況なので、早くNBA選手にならないとな、という話をしました」。

2019-20シーズン、馬場はレジェンズで41試合に出場し、平均19.6分、6.3得点、2.5リバウンド、1.3アシスト、1.0スティール、フィールドゴール成功率50.3%、3ポイント成功率41.1%、19.6分を記録している。

オーストラリア代表で活躍するクリス・ゴールディングが所属しているメルボルン・ユナイテッドは、1984年にメルボルン・タイガースとしてNBL入りし、2014年にメルボルン・ユナイテッドに改名。5度の優勝(1993、1997、2006、2008、2018)を誇る名門で、2019-20シーズンはレギュラーシーズン4位、プレイオフではセミファイナルで敗退している。

馬場は会見中に最終的な夢はNBAであるということを何度も主張していた。NBAは7月末に今季を再開させ、長くて10月中旬までプレイオフが続く。来季の開幕は12月頃になることが予想され、Gリーグを含む世界中の多くのリーグが見通しのつかない状況が続いているなか、レベルの高い英語圏のリーグであるオーストラリアでプレイすることが馬場にとって最善の選択となった。

Gリーグ、NBLと確実なステップを踏み続け、馬場の海外挑戦は続く。


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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。