プレイオフで若手が躍動 迫る世代交代の波

大西玲央 Reo Onishi

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若手の勢いが止まらない。4月21日(日本時間22日)現在、今季のプレイオフに出場している23歳以下の選手は48人もいる。試合終わりに少しだけ出場した選手なども当然含まれるが、多くがすでにチームの主力として活躍している選手たちだ。

メンフィス・グリズリーズのジャ・モラント(22歳)、アトランタ・ホークスのトレイ・ヤング(23歳)、そしてケガでまだ出場していないダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチ(23歳)など、すでにオールスターに出場するなどスターの仲間入りを果たしている選手もいる。

しかし活躍する選手のリストはそこで止まらず、どんどん伸び続けているのだ。

4月16日(同17日)のプレイオフ初日に行われた4試合中3試合で、トップスコアラーに若手の名前が並んだ。

21歳のタイリース・マクシー(フィラデルフィア・76ers)が38得点、20歳のアンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)が36得点、22歳のジョーダン・プール(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)が30得点の活躍を見せ、それぞれのチームを勝利へと導いた。

では彼らのここまでの活躍をチェックしてみよう。

タイリース・マクシー(フィラデルフィア・76ers)

スタッツ:3試合出場、平均26.7得点、5.7リバウンド、3.7アシスト、フィールドゴール成功率60.0%

3連勝で早速トロント・ラプターズとのシリーズに王手をかけた76ersの勢いに、大きく貢献しているのがマクシーの活躍だ。ジョエル・エンビードとジェームズ・ハーデンという2大スターが話の中心になることの多い76ersだが、マクシーが急成長を見せ3人目のオプションとなったことは、決して見過ごしてはいけないことだろう。

リーグ入り2年目にして、レギュラーシーズン平均17.5得点、3.2リバウンド、4.3アシストと大きく数字を伸ばしたマクシーだが、プレイオフではそれをも上回る活躍を続けている。平均出場時間も35.3分からプレイオフでは42.3分まで伸びていることからわかる通り、ドック・リバース・ヘッドコーチからの信頼も厚い。

ラプターズとの第1戦では5本の3ポイントショット成功を含む38得点の活躍、第2戦では23得点に加えて9リバウンド、8アシストとトリプルダブルに迫る活躍を見せ、チームを支え続けている。

アンソニー・エドワーズ(ミネソタ・ティンバーウルブズ)

スタッツ:3試合出場、平均25.0得点、5.0リバウンド、3.0アシスト、3P成功率40.0%

メンフィス・グリズリーズとの第1戦はエドワーズにとってのプレイオフデビューとなり、そんなプレッシャーのかかる試合で彼は36得点、6アシスト、2ブロックという活躍を見せた。第7シードでありながらも、第2シードのグリズリーズのホームで初戦を勝利するというアプセット(番狂わせ)を引き起こす原動力となったのだ。

これまでカール・アンソニー・タウンズの活躍に左右される印象の強かったティンバーウルブズだが、まだ20歳のエドワーズが自らクリエイトできる頼もしい存在になったこと、そしてプレイオフという照明の眩しい大舞台でもその力をいかんなく発揮できることは、チームにとって今後の明るい材料だ。

シリーズは現在ウルブズが1勝2敗と負け越しているものの、多くの予想を覆す好シリーズとなっているのは、エドワーズの目覚ましいプレイオフデビューが影響している。

ジョーダン・プール(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

スタッツ:3試合出場、平均28.7得点、3.0リバウンド、4.7アシスト、3P成功率60.5%

プールもまた、今年プレイオフデビューを果たした若手のひとりだ。ケガで離脱していたステフィン・カリーがプレイオフ初戦で復帰したウォリアーズだが、スティーブ・カーHCは絶対的エースのカリーではなく、プールを先発ラインナップに投入することを選んだ。そしてこの判断が大当たりしている。

プールは第1戦で30得点、第2戦で29得点、第3戦でも27得点とその期待に応える活躍を見せた。そのおかげで、カリーがケガから急いで復帰するのではなく、ゆっくりと試合勘を戻しつつ、最強のシックスマンとして活躍することができているのだ。

カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンというウォリアーズの中心核3人に加えて、常に注目されてきたのが4人目の選手だ。過去にはハリソン・バーンズ、アンドレ・イグダーラなどがその役割を担い、ケビン・デュラントを加えた時代には2連覇を達成している。

近年は不運が重なり、なかなか3人が揃うことが叶わなかったのだが、今季はプレイオフでようやく継続して3人が一緒にプレイしているのを見ることができている。そして4人目の座を見事勝ち取ったのが、リーグ入り3年目のプールなのだ。


かつてのルーキーは、リーグ入りしてから何年か経験を積んで、ようやくチームの主軸になるという流れが一般的だった。ポテンシャルを重視した指名が主流となったことで、その流れは強まっていた。

しかし近年は、若い選手たちの実力の底上げ、NBA Gリーグや海外リーグを利用した競争力の向上、スカウティングの質の向上などが影響して、若手が1、2年目からすぐに活躍するケースが増えていっている印象が強い。そして6月にはNBAドラフトでまた60人のルーキー達がリーグ入りを果たす。

若手スターが次から次へと台頭し続けており、世代交代の波を一気に引き寄せている感覚すらある。長年リーグの顔として活躍するお馴染みのスター選手たちの活躍で盛り上がるのはもちろんのこと、若手スターの急成長と活躍を見られるのも、今のNBAの醍醐味のひとつだ。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。