【宮地陽子の一戦一言】第26話:カワイ・レナード「バスケットボールを楽しんでいるのか、本物のチームなのかが試される」

宮地陽子 Yoko Miyaji

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選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。

第26話となる今回は、ロサンゼルス・クリッパーズのカワイ・レナードがアトランタ・ホークス戦で敗戦後に語った言葉の裏側に迫る。

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今日の一戦一言(いっせんいちげん)

カワイ・レナードロサンゼルス・クリッパーズ

「こういうときこそ、バスケットボールを楽しんでいるのか、本物のチームなのか、この穴から這い上がることができるのかが試される。楽しいし、僕らにとって良いチャレンジだ」

ロサンゼルス・クリッパーズが連敗の沼にはまっている。クリスマス直後には21勝15敗の成績でウェスタン・カンファレンス4位につけていたのが、12月29日(日本時間30日)にボストン・セルティックスに敗れてから、1月8日(日本時間9日)のアトランタ・ホークスまで勝ち星を拾うことができずに6連敗。21勝21敗の勝率5割、西7位まで順位を落としてしまった。

そんななか、ホークス戦の試合後にロッカールームで取材に答えたカワイ・レナードは、相変わらずの無表情だったが、チームのこの試練を「楽しい」と表現した。

「こういうときこそ、バスケットボールを楽しんでいるのか、本物のチームなのか、この穴から這い上がることができるのかが試される。楽しいし、僕らにとって良いチャレンジだ」

意外なほど前向きな言葉だったが、その理由のひとつとして、ホークス戦では連敗中の課題のいくつかに改善が見られたことがある。たとえば3日前のナゲッツ戦後にレナードは、「もっと全力で、速く、賢くプレイしなくてはいけない。ヒーロー・バスケットボールが多すぎる」と苦言を呈していたのだが、この試合では「ペースは良くなった。相手がショットを決めても外しても、ボールを前に出すことができていた」と、向上しているところをあげた。

また、この試合でテコ入れされた新スターティングラインナップの成功も明るい材料だった。クリッパーズのタロン・ルー・ヘッドコーチは、開幕からスターティングポイントガードを務めてきたレジー・ジャクソンを控えに回して、代わりに196cmのテレンス・マンをスターターにした。さらに故障で欠場のポール・ジョージに代わっていつもは控えセンターを務めるニック・バトゥームを起用。マン、レナード、バトゥーム、マーカス・モリス、イビツァ・ズバッツという大型ラインナップをスターターとして起用したのだ。

サイズアップしただけでなく、課題だった試合序盤のディフェンスに大きな改善が見られた。レナードは、ローテーションを考えるのはルーHCの役割だと言い、判断をコーチに任せる一方で、「プレイするのが楽しいラインナップだった」と歓迎の意向を表明した。

もうひとつ、レナードは口にしなかったが、彼が連敗をも楽しめる心境なのは昨季の経験があるのかもしれない。昨季は膝前十字靭帯のリハビリのために、シーズン通して欠場し、勝っても負けても、ただ見ているしかなかった。それに比べれば、今はチームメイトたちやコーチと共にどうやって課題を解決し、シーズン後半戦に向けてケミストリーを上げていくかを取り組むことができる。コート上で苦労すること自体が、レナードにとっては「楽しい」時間なのだ。


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宮地陽子 Yoko Miyaji

宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

東京都出身。ロサンゼルスを拠点とするスポーツライター。バスケットボールを専門とし、NBAやアメリカで活動する日本人選手、国際大会等を取材し、複数の媒体に寄稿。著書に「The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編」(日本文化出版)、「スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ」(集英社)、編書に田臥勇太著「Never Too Late 今からでも遅くない」(日本文化出版)