【宮地陽子の一戦一言】第24話:ダービン・ハムHC「コート上にできるだけスピードとタフネス、アスレティシズムを揃えるようにした」

宮地陽子 Yoko Miyaji

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選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。

第24話となる今回は、アンソニー・デイビス不在のなかでラインナップ構成に模索するロサンゼルス・レイカーズのダービン・ハムHCが僅差で敗れたシャーロット・ホーネッツ戦後に語った言葉の裏側に迫る。

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今日の一戦一言(いっせんいちげん)

ダービン・ハムロサンゼルス・レイカーズHC

「(サイズがない分)コート上にできるだけスピードとタフネス、アスレティシズムを揃えるようにした」

アンソニー・デイビスのMVP級の活躍で、一時、成績常勝の兆しが見えていたロサンゼルス・レイカーズだが、そのデイビスが12月16日(日本時間17日)のデンバー・ナゲッツ戦で足を痛め、またしばらく欠場することになった。

残されたビッグマンのうち、最もサイズがあるデイミアン・ジョーンズはコーチの信頼を勝ち取るに至らず、ほとんど出番がない。結局、センターとしては小さいトーマス・ブライアントとウェニェン・ゲイブリエルが交代で出ているのだが、12月23日(同24日)のシャーロット・ホーネッツ戦では、スターティング・センターを務めていたブライアントが試合終盤に肩を痛めて離脱してしまい、接戦の最後3分余をレブロン・ジェームズとガード4人(パトリック・ベバリー、デニス・シュルーダー、ラッセル・ウェストブルック、オースティン・リーブス)という超小型ラインナップで戦うことになった。機動力を生かして8点ビハインドだった試合を同点にまで追い上げたところまではよかったのだが、最後でリバウンドを取り切れず、競り負けた。

試合後にこの4ガードラインナップについて聞かれたダービン・ハムHCが言ったのが、このコメントだった。サイズが足りない分をスピードやアスレティシズム(運動能力)で補って平面の戦いで負けないようなラインナップにするということに加えて、気持ちで負けないようなタフネスも重視したというのだ。確かに4人のガードはベバリーやウェストブルックはもちろん、シュルーダーやリーブスも負けん気が強く、サイズで負けていても、気持ちの上で怖気たりすることがない選手ばかりだ。

さらに、25日(同26日)のダラス・マーベリックス戦では、短時間だったが、23日の4ガード・ラインナップのジェームズの代わりにロニー・ウォーカー四世が入った5ガードのラインナップを起用した時間帯もあった。なんと、最長身は6フィート5インチ(196cm)のリーブスという超小型ラインナップだ。

このラインナップについて、ハムHCは攻撃時のスピードを上げることが一番の目的だと言う。誰がディフェンシブリバウンドを取ってもそのままドリブルでトランジション攻撃に持ち込めることや、ハーフコートの攻撃でもドライブインでペイントを攻めることで得点のチャンスを作り出そうとしていると、その意図を語っている。

とはいえ、3Pショットを高確率で決められるシューターが少ないレイカーズにおいて、小型ラインナップはあくまで流れを変えるための戦術で、長く続けることはメリットよりデメリットのほうが大きいようにも見える。実際、ハムHCは「今はとにかく色々と試行錯誤をして、何がうまくいくか試しているところだ」とも言い、デイビスがいないなかで、どうやって戦うべきなのか、その方法を模索しているのだと正直に明かす。

「AD(デイビス)がいないことは、私たちにとって大きな穴だ。でも、それを言い訳にするつもりはない。私たちはプロだ。コーチとして水準をあげ、この状況にアジャストして成功できるような方法を見つけなくてはいけない」

25日のマブズ戦に敗れたレイカーズは、4連敗で13勝20敗と低迷。この先、ハムHCがどんな戦術で戦いを挑むのか、また補強面ではいつ戻ってくるかわからないデイビスを待つのか、その前にトレードでサイズを補うのか。コート内外での試行錯誤の日々が続く。


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宮地陽子 Yoko Miyaji

宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

東京都出身。ロサンゼルスを拠点とするスポーツライター。バスケットボールを専門とし、NBAやアメリカで活動する日本人選手、国際大会等を取材し、複数の媒体に寄稿。著書に「The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編」(日本文化出版)、「スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ」(集英社)、編書に田臥勇太著「Never Too Late 今からでも遅くない」(日本文化出版)