【宮地陽子の一戦一言】第30話:カイリー・アービング「こういう試合は、間違いなく、より良い信頼関係を築くための一歩になる」

宮地陽子 Yoko Miyaji

【宮地陽子の一戦一言】第30話:カイリー・アービング「こういう試合は、間違いなく、より良い信頼関係を築くための一歩になる」 image

選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。

第30話となる今回は、ダラス・マーベリックスのカイリー・アービングがロサンゼルス・レイカーズ戦後に語った言葉の裏側に迫る。

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今日の一戦一言(いっせんいちげん)

カイリー・アービングダラス・マーベリックス

「こういう試合は、間違いなく、より良い信頼関係を築くための一歩になる」

3月17日(日本時間18日)のロサンゼルス・レイカーズ戦で、故障から復帰したばかりのカイリー・アービングは、第4クォーターだけで13得点をあげてチームを牽引した。そのアービングが第4Qに記録したアシストはわずか1本だったのだが、これがマキシー・クリーバーのブザービーター逆転3ポイントショットとなった。

残り6.7秒、2点ビハインドの場面。第4Qに入ってから、マブズのすべてのフィールドゴールはアービングが決めていた。それだけにレイカーズのディフェンスはアービングを徹底マーク。ダブルチームされたアービングがドリブルをつき、そのまま自分でショットを放つかと思ったその時に、逆ウィングにいたクリーバーにパスを出した。

クリーバーをマークしていたアンソニー・デイビスが、アービングがシュートすると判断してリバウンドに入ろうと下がっていたのだ。デイビスはあわててマークに戻ったが、クリーバーはキャッチと同時に迷うことなく3Pショットを放ち、ボールはまっすぐネットに吸い込まれていった。

マブズのヘッドコーチ、ジェイソン・キッドは試合後、「カイ(アービング)のことだから、ダブルチームされても自分で決勝ショットを打ちたかったと思う。でもチームメイトにパスをした。それがチームメイトに対する信頼だ」と言い、パスを出したアービングと、パスを受けてショットを決め切ったクリーバーだけでなく、アービングへのパスを出し、ペイント内に切れ込むことでデイビスを引き寄せたセオ・ピンソンをも称賛した。

「物事がうまくいっている時に信頼するのは簡単なことだ。でも何試合か負け、壁にぶつかった時には、信頼関係も試される。それでも、みんながまとまり続けることができれば良いことが起きる。カイとルカ(ドンチッチ)がロッカールームで、チーム一丸となってプレイし続けなくてはいけないと話していた。今回の遠征では、ここ(LA)だけでなく、サンアントニオでも良いことが起きた」

実は、2日前のサンアントニオでのスパーズとの試合が、この試合の伏線にもなっていた。第4Q残り1.8秒で2点リードを取り、勝利をほぼ手中にしていたにもかかわらず、クリーバーがインバウンズパスでターンオーバーしたことで、試合はオーバータイムにもつれてしまったのだ。

結局、オーバータイムでマブズが勝利したから良かったのだが、クリーバーにしてみたら危うく自分の失敗で勝ち試合を落とすところだった。レイカーズ戦の終盤は、ブザービーターの前にもフリースローを3本決めており、まるでスパーズ戦での汚名返上のような活躍だったのだ。

「あの試合ではチームメイトがマキシーを助け、今夜は彼がチームメイトを助けた」とキッドも喜んだ。

クリーバーは、まだチームメイトになって間もないアービングについて、「経験豊かで、とても落ち着いている。人に対してどう話せば良いのか、どうセットアップすれば良いのかわかっている。人の長所を理解して、何を期待できるかもわかってくれている。素晴らしいチームメイトだ」と称賛した。

アービングがマブズに入って、まだ1か月半。故障欠場した期間もあり、試合に出たのもこの試合で12試合目だった。この日、まだ欠場していたルカ・ドンチッチとは、まだ9試合しかいっしょにプレイしていない。

マブズに限らず、シーズン中の大きなトレードで戦力を入れ替えたチームにとって、短期間でプレイオフを勝ちあがるだけのチーム力を築くのは簡単なことではない。それでもマブズはドラマチックな展開の試合が続くなかで、逆境に直面しながら、そこを共に抜け出して勝ちをつかむ経験を繰り返すことで、チーム作りを加速させようとしている。

アービングも言う。

「こういう試合は、間違いなく、より良い信頼関係を築くための一歩になる。僕らの最近の10~12試合ぐらいを見ると、1~2試合は大差がついた試合があったかもしれないけれど、それ以外は終盤まで競った試合だった。そういった試合終盤の競り合いによって信頼を築くことができる。僕はシーズン通して第4Qに良いプレーができていると自負しているけれど、だからといって、それだけに頼る戦いはしたくない。僕もやるべきプレイをするけれど、それと同時に、チームメイトたちにもアグレッシブでいてほしい。そうすることで、僕の仕事もずっと簡単になるしね」
 


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宮地陽子 Yoko Miyaji

宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

東京都出身。ロサンゼルスを拠点とするスポーツライター。バスケットボールを専門とし、NBAやアメリカで活動する日本人選手、国際大会等を取材し、複数の媒体に寄稿。著書に「The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編」(日本文化出版)、「スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ」(集英社)、編書に田臥勇太著「Never Too Late 今からでも遅くない」(日本文化出版)