【宮地陽子の一戦一言】第31話:ロニー・ウォーカー四世「一番大事なことは自信を持ち続けることだった」

宮地陽子 Yoko Miyaji

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選手やコーチたちの興味深いコメントの背景にあるものはいったい何なのか――? 米国ロサンゼルスを拠点に長年NBAを追い続けるライターの宮地陽子氏が、ある『一戦』で発せられた『一言』の真意を読み解く。

第31話となる今回は、ロサンゼルス・レイカーズのロニー・ウォーカー四世がオクラホマシティ・サンダー戦後に語った言葉の裏側に迫る。

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今日の一戦一言(いっせんいちげん)

ロニー・ウォーカー四世ロサンゼルス・レイカーズ

「一番大事なことは自信を持ち続けることだった」

3月24日(日本時間25日)、ロサンゼルス・レイカーズは、若くて勢いがあるオクラホマシティ・サンダーを制して3連勝をあげ、今季初めて勝率5割に到達した。

プレイインやプレイオフに向けて激しい順位争いのまっただ中にいるレイカーズにとって、サンダー相手にタイブレイカーを取れるかどうかがかかった重要な試合だった。

この試合で大黒柱としての活躍を見せたのは37得点、15リバウンドのアンソニー・デイビス。レブロン・ジェームズが欠場している間、チームの中心選手として、そしてリーダーとして、レイカーズを牽引していた。そのデイビスは、試合後にロニー・ウォーカー四世のところに行くと、「今日の試合は君がいなければ勝てなかった」と感謝した。

確かに、この試合で24分41秒出場し、20得点、4リバウンド、3スティールの活躍をしたウォーカーの貢献は大きかった。デイビスの言葉は、単に活躍に対してというだけでなく、活躍できるだけの準備をしていたことに対しての称賛でもあった。

実はウォーカーは、2月のトレードによる選手入れ替えの影響を受け、3月に入ってからローテーションを外れてしまっていた。サンダー戦直前の7試合中5試合でDNP-CD(Did Not Play - Coach's Decision/コーチ判断で不出場)だったのだ。

シーズン前半には32試合でスターターとして出場していたのだが、1月の大半を故障で離脱し、その後、控えとして戦列に戻ったと思ったら、トレードで獲得した選手たちに出場時間を奪われてしまった。サンダー戦では、ディアンジェロ・ラッセルが故障欠場したことで、4試合ぶりにコートに立つ機会がまわってきていた。

試合に出られないなかでも腐ることなく準備し、いざ出番が来たときにしっかり求められたことをやる。デイビスの言葉はそのことに対しての称賛だった。チームは、そうやってユニフォームを着ている全選手に支えられていることを理解しての言葉だ。

試合後、ロッカールームに戻ると、ウォーカーはヘッドコーチのダービン・ハムや、他のチームメイトたちからも同じように称賛の言葉をかけられた。

ハムHCは言った。

「この世界では、出場時間が短くなったり、試合にまったく出なくなることがある。多くの場合は状況的な事情で、自分が悪いわけでもない。そういった状況のなかで、彼はプロ中のプロであることを見せてくれた」

NBAの長いシーズンのなかではチームが必要とすることが変わり、それにともなって選手の役割が変わる。キャリアを通して、常にスターターとして多くの出場時間が約束されているのは、ごく限られた一部の選手だけ。残りの選手は、役割が変わり、出場時間が上下し、時にコートに立つことないまま試合が終わることを経験する。そのなかで常に準備を整え、突然名前が呼ばれ、出番が回ってきたときに準備ができていることを求められる。それが、どれだけ大変なことなのかをみんなわかっているからこそ、ウォーカーを称賛した。

ウォーカーは、試合に出る期間が激減した時期について、「この何週間かは落ち込んで、自分らしくいられないこともあった」と認めている。そのうえで、なるべく平常心を保ち、チームとして成し遂げようとしていることを第一に考え、ポジティブな姿勢で準備を整えていたという。

アシスタントコーチたちと話し、フィルムを見て研究し、試合に出ている同じポジションのラッセル、オースティン・リーブス、マリーク・ビーズリーがやっていることを見て、自分に何ができるかを考えていたという。

そういった準備も大事なことだったが、それ以上に重要だったのが自信を失わないことだったと明かした。試合に使ってもらえず、何試合も出番がないままだと自信を失ってもしかたないところだが、自信を無くした状態だと、試合に出たときに思ったようなプレイもできないからだ。

ウォーカーは言う。

「一番大事なことは自信を持ち続けることだった。自信を持ち続け、自分の内側に閉じ込め、研ぎ澄ませていた。自分の価値、自分がどんな選手なのかを忘れないようにした。24歳、まだこれからさらに成長していき、全盛期はまだ先にあるのだ、とね」

“自信”はやっかいな代物だ。ないとやっていけないが、出し方を間違えるとチームの不協和音につながる。だからウォーカーは、試合に出られないことに対するフラストレーションは前向きなエナジーに変え、自信は内側で研ぎ澄ませていた。

その大変さ、価値をわかってくれたコーチやチームメイトたちがいることは、ウォーカーにとって心強いことだった。と同時に、これはレイカーズの結束をさらに強くした出来事でもあった。


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宮地陽子 Yoko Miyaji

宮地陽子 Yoko Miyaji Photo

東京都出身。ロサンゼルスを拠点とするスポーツライター。バスケットボールを専門とし、NBAやアメリカで活動する日本人選手、国際大会等を取材し、複数の媒体に寄稿。著書に「The Man ~ マイケル・ジョーダン・ストーリー完結編」(日本文化出版)、「スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ」(集英社)、編書に田臥勇太著「Never Too Late 今からでも遅くない」(日本文化出版)