【八村塁 一問一答】絶好調の3Pショット、原点であるミッドレンジゲーム、WNBA挑戦の町田瑠唯などについて語る

NBA Japan

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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八村塁(ワシントン・ウィザーズ)

ワシントン・ウィザーズの八村塁が3月5日(日本時間6日)のチーム練習後にメディア対応を行なった。前日のアトランタ・ホークス戦では惜しくも試合には敗れたものの、八村自身は3ポイントショット4本中3本の成功などで19得点と活躍。今季成功率54%と絶好調の3Pや、現在の心境、WNBAワシントン・ミスティックスとの契約が決まったバスケットボール女子日本代表の町田瑠唯(富士通レッドウェーブ)のことなど様々なトピックについて語った。

以下、試合後の記者会見での一問一答。

※前半は英語、後半は日本語での質疑応答。英語でのやり取りは翻訳、質問は要約。


僕のゲームはミッドレンジが中心

――ブラッドリー・ビールやケンテイビアス・コールドウェル・ポープといったベテランからもっとシュートを打てと言われているが。

八村:それはもちろんいいことです。1~2年目と比べていいシュートが打てていますし。ただ、正直言って、3ポイントショットは僕の(メインの)ゲームではありません。皆さんご存知の通り、僕のゲームはミッドレンジが中心。もっと3Pを打つように自分自身に無理強いするつもりはありません。ただ、そういった言葉を聞くのはいいものです。

――3Pの練習過程で重要だったことは?

八村:ドラフト指名されて以降、ずっと練習を続けてきたことです。多くの時間をかけて練習してきました。僕にとって大きかったのは自信を持って、快適に3Pを打つこと。それがここまで来る助けになりました。

――練習での自信と実戦での自信は違うと思うが、そこはどう乗り越えた?

八村:確かにそこには違いがあります。僕は練習中もゲームで打つことを想像しています。ファンがいて、アリーナでのゲーム中だと感じられるように、しっかりと想像しています。そうやって練習しなければいけません。

――1年目からウィザーズのロスターは絶えず変わり続けてきたが、どう適応している?

八村:それに関しては理解できるようになってきています。カレッジではトレードなどなく、いつも同じ選手と一緒にプレイします。転校はありますが、(NBAのように)クレイジーではありません。NBAは常に変わりますね。ただ、チームには目標があり、チーム内には基盤があります。オフェンス面でも、ディフェンス面でも、やらねばならないことをわかっています。(大事なのは)一丸となってプレイすること。僕はブラッド(ビール)、イシュ(スミス)、TB(トーマス・ブライアント)、ハウル(ネト)とは長く一緒にやってきました。そういう選手がいるのは助けになるし、新しく加わった選手たちとも慣れていこうと試みています。このチームにはいいケミストリーがあると思っています。

――多くの選手と適応しようとすることが、自分の向上の助けにもなっていると思う?

八村:バスケットボールはチームスポーツ。コートにいる他の4人を感じ取れなければいけません。それぞれの選手のプレイの好き嫌いを知る必要があります。彼らにもまた、僕のプレイの好みや、長所や短所を学んでもらわなければいけません。それには少し時間がかかるものですが、それをすることで、確かに僕の助けにもなっているとは思います。

――今季2か月をプレイし、今の自分は良い状態になっていると思う?

八村:そう思います。僕も、彼ら(仲間たち)もルーティーンを確立してきました。チームはまだどうプレイしていくかを見極めている最中ですが、まだプレイオフ、プレイイン・トーナメントを目指せる位置にいます。これから追い上げていけるでしょう。

NBAという最高のレベルで仲間たちと一緒にプレイできることに感謝

――バスケットボールから一時的に離れ、バスケへの愛情は変わった?

八村:それは間違いありません。13歳でバスケットボールを始め、ノンストップでプレイし続けてきました。日本にはシーズンといった概念はなく、1年中プレイします。オフシーズンはなく、いつでもバスケットボールをしていました。カレッジ時代はシーズンはありましたが、夏の間も日本代表でプレイしてきました。ここでようやく少し休んだことで、自分がどれだけバスケットボールを愛しているかに気づき、プレイすることを恋しく思えました。NBAという最高のレベルで、仲間たちと一緒にプレイできることに感謝しています。

――過去数戦、チーム全体でフリースローが少ないが、その面でどう助けていきたい?

八村:ゴール周辺でもっとアグレッシブに、当たっていかなければいけません。ただ、今の僕は3Pが好調です。相手チームはまだ適応の最中で、僕には3Pを打つスペースが豊富にあります。だからドライブを無理強いするべきではないのでしょう。ただ、そうすべきときは来るはず。その際はもっとアグレッシブに攻めなければいけません。

――ゴンザガ大の後輩コーリー・キスパートのルーキーイヤーの活躍は?

八村:本当によくやっていると思います。自分のルーキーイヤーがすごくタフだったことを思い出します。(NBAでは)選手の入れ替わりが激しいし、変化も多い。そんななか、彼はスタメンを張って頑張っています。僕も1年目、シーズンの最初からスターターで、1試合に平均30分プレイしていました。それは簡単なことではありません。オフコート、オンコートで学ぶこともたくさんあります。とにかく彼はよくやっていまると思います。

――キスパートはカレッジで長い時間を過ごしたことが助けになっていると思う?

八村:そう思います。4年間通ったんですよね? 助けになっているはずです。すでに大きく向上し、もっと上達できることもわかっています。楽しみです。

――ゴンザガ大のチェット・ホルムグレンのプレイは見た?

八村:何回か見ました。

――来シーズン、NBA入りすると思う?

八村:すごくポテンシャルのある選手です。身長は確か7フィート1~2インチ(約216~218cm。同大公式サイトによると7フィート=約213cm)くらいあるし、シュートも上手です。動けるし、良いディフェンダーでもあります。ブロックを量産できる選手です。だから楽しみにしていますよ。

楽しむということはいつも頭に置いています

――オールスター前のブルックリン・ネッツ戦で、特に第4クォーターは本当に楽しそうにプレイしていた。そうやって喜びを持ってプレイすることの意味は?

八村:(喜びは)自然に湧いてきます。バスケットボールを楽しんでプレイする中で、自然に出てくるものです。そのゲームでは僕たちは勝っていて、特にオールスターブレイクの直前でした。だから勝って、気分良くブレイクを迎えたかったんです。楽しいゲームだったし、(そうやってプレイできることの)意味は大きいです。楽しむということはいつも頭に置いています。

――ここしばらくは3Pが好調なため、相手ディフェンダーが詰めてきて、ドライブするレーンが生まれていると感じる?

八村:少しそうなってきていると思います。昨日のゲームではそうで、おかげでミッドレンジが開け、得意なスポットに立つのが容易になりました。

――昨日のホークス戦ではラストショットを放ったクーズマに駆け寄っていたが、決まると思った?

八村:決まると思いました。僕はリムの近くにいて、いい感じに見えたんです。(決まらなかったが)良いショットでした。

――今季を通じ、自身の進歩をどう感じる?

八村:みんなが僕の3P(の上達)の話をしてくれていますね。また、ディフェンス面でもコンセプトを学び、チームのことを考えながら守れています。僕は1番から5番まで守り、良いプレイができているし、コーチからの信頼も得られていると思います。

――心身両面でどういう状態?

八村:いいですよ。だいたいあと20戦くらい残っていますが、プレイオフに向けて追い上げていけるはずです。

※以下、日本語での質疑応答。

別に3Pにこだわっているわけではない

――明日のペイサーズ戦に向けた今日の練習について。
 
八村:いい練習ができました。連戦で試合が続いているんですけど、チームもいい感じの雰囲気で明日の試合に向けてできるんじゃないかと思います。

――前日のホークス戦では19得点、6リバウンドとオールラウンドなプレイだった。

八村:負けてしまったんですけど、チームとしてもまあ良い試合ができたと思います。ディフェンスは直さなければいけないところがありましたが、これを次につなげたいなと思います。

――ホークス戦では第4クォーターにフル出場するなど、最近はクランチタイムのプレイ時間が増えている。

八村:チームから、コーチから、信用されてきているんじゃないかなと思うので、しっかり期待に応えたいなと思いますね。

――スモールラインナップの際にセンターを務めることに慣れてきた?

八村:スモールのときはだいたい僕とクーズマとデニ(アブディヤ)が出ています。僕らはみんなサイズが同じなため、相手を混乱させることができるので、そこはいいんじゃないかなと思います。

――昨日もまた3Pを3本決め、ここ5試合の成功率は85%を記録している。

八村:3Pはずっと練習してきたところなので、良い結果が出てきて今はいいと思うので、続けていきたいなと思います。まあでも僕は別に3Pにこだわっているわけではないです。いいとは思うんですけど、そんなにこだわってないですね。

――9試合連続で3P成功と好調を維持できている理由は?

八村:ルーティーンというか、自分の練習でやっていることとか、そういうことがしっかりと試合につながっていると思うので、それは続けていきたいなと思います。

――練習でも試合をイメージして打っている?

八村:その試合の僕がよく打つシュート、ゲームライク(試合の形式)みたいなのをいつも意識してやっています。

――コーナーからの3Pの成功率が上がっているのが大きい?

八村:コーナーはNBAのゲームの中でも3Pが一番入るところ。一番効率がいいスポットなので、そういうところでシュートを決められているというのはいいんじゃないかなと思います。

――3Pが好調だとオフェンスの他の部分にどういう効果がある?

八村:昨日の試合もそうですけど、僕のミッドレンジのスポットとかに、いい感じにいけたりするので、そういうところがいいんじゃないかなと思います。

ミスティックスの町田瑠唯獲得を勧めた

――Wリーグの町田瑠唯選手がWNBAのワシントン・ミスティックスと契約した。

八村:1か月前くらいですかね、WNBAのコーチから話をされて、そのときに彼女が来るっていうこと、契約するっていうことを言われたので、いいんじゃないかって言いました。

――獲得を勧めたということ?

八村:はい、勧めました(笑)。いいプレイヤーだってことで。

――日本人史上4人目のWNBA選手になるのはすごいこと。

八村:彼女は(東京)オリンピックですごく活躍しました。ミスティックスもすごくいいチームなので、彼女も本当にいいチームを選んだんじゃないかなと思います。

――ワシントンDCに『ダブル・ルイ』が揃う。

八村:そうですね(笑)

ミッドレンジは原点

――ミッドレンジへのこだわりは自分の原点やプライド?

八村:バスケを始めたときからの僕のゲームのスタイル。それがあって僕はここまで来れたと思うので、そうですね、原点ですね。

――ミッドレンジは非効率と言われがちだが、デマー・デローザン(シカゴ・ブルズ)、クリス・ポール(フェニックス・サンズ)などのプレイも見たりする?

八村:彼らだけじゃなく、デビン・ブッカー(サンズ)とかもそうですし、カワイ・レナード(ロサンゼルス・クリッパーズ)も今はプレイしていないですけど、ミッドレンジをけっこう打ちますし、クリス・ミドルトン(ミルウォーキー・バックス)とか、ジミー・バトラー(マイアミ・ヒート)とか、オールスターの人たちはだいたいミッドレンジの上手い選手が多い。(効率は悪いと)言われているかもしれないですけど、ミッドレンジには何かそういう力があるんじゃないかなと思います。

――今、目指しているプレイスタイルはミッドレンジを中心としたオールラウンダー?

八村:そうじゃないですかね。どういう感じかって言葉で表しにくいんですけど、そういう考え方じゃないかと思います。

――自身以外に映像で見ているのは?

八村:最近は試合に出ていないんですけど、カワイ・レナードのプレイはよく見ていました。今だとデビン・ブッカー、ジミー・バトラーとかもミッドレンジが上手い選手として見てますね。

――前回、コンディションがいいという話をしていたが、個人練習、チーム練習でしっかり身体を作ってきたことが大きい?

八村:絶対そうですね。今までにないくらいに自分でも(ウェイト)リフティングとか、体の作り方とか、ごはんもそうですし、すごく意識してきました。そういうところが生きているんじゃないかなと思います。

――東京五輪を終えてからは一度、完全にバスケットボールを絶ったのか。それとも個人練習はしていたのか。

八村:少しはしてましたね。自分でちょこちょこしていたときはありました。

取材、一問一答構成:杉浦大介 @daisukesugiura

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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ

杉浦大介 Daisuke Sugiura

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東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。