6月19日(日本時間20日)、ワシントン・ウィザーズのブラッドリー・ビールとワシントン・ミスティクスのナターシャ・クラウドは、大勢のチームメイトやコーチ、スタッフに支えられ、キャピタル・ワン・アリーナの外に立った。人種的不当と警察の残虐行為に抗議し、「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」活動を支える平和的デモ行進を先導し、155年前のアメリカ最後の奴隷解放を記念する「Juneteenth」を祝うためだ。
クラウドは「『Juneteenth』は記念の日です」と話した。
「解放の日であり、私たちがようやく束縛から自由になった日です。私たちは、大義のためにここに来て集まり、団結してお互い連帯するのに、この日しかないと考えました」。
クラウドからマイクを渡されたビールは、2020年という年における「Juneteenth」の意義、アメリカが過去および現在の黒人コミュニティの扱いについて考えるなかでの新たな意味に言及した。
ビールは人々に「『Juneteenth』は自由の記念日、耐えてきた苦闘について考える日と言われます」と話した。
「昨晩、僕は少し考えました。思ったのは、『自由とは何か?』ということです。定義としては、好きなときに、制限なく好きなことを話し、それについて動くことができることでしょう。でも、僕は分からないのです。『人種差別、差別、偏見が普通で容認されている世界、これらのことが世代ごとに引き継がれて教えられ、励まされ、祝われている世界で、黒人コミュニティがどうやって自由を感じるというのか? 正義なく命が奪われ、それでも何もないというときに、黒人コミュニティがどうやって成長できるのか?』が」。
そしてビールは集まった選手、コーチ、スタッフがそれぞれ着ていたTシャツの前面中央に描かれた、握った拳について説明した。
ビールは「僕たちには5本の指があります」と話した。
「拳は常にチームの連帯を示します」。
手を開いて、ビールは「僕たちが自分勝手になったり、道を外れたら、コーチはいつも5本の指を見せます。個々では力がないことを示すためです」と述べた。
「僕たちの日々の世界でも同じなんです」。
拳を握って、ビールは「団結には力があります」と話した。
「強さには、力があります」。
イシュ・スミスは今週、『The Athletic』のポッドキャスト「Wizards After Dark」で「この期間、ビールはすごく特別だった」と話している。
スミスやイアン・マヒンミは、3週間前のジョージ・フロイドさんの死を受け、選手たちがソーシャルメディアで共同声明を発した功績がビールにあると話した。
スミスは「彼があの声明を用意したんだ」と続けている。
「彼が僕らに送ってきて、どう思うか尋ねた。僕は言葉がなかったよ。すごくパワフルで、的を射たものだった。この期間ずっと、ブラッド(ビール)は特別な存在だった」。
だが、ビールは「彼女のアイディアだったんだ」と、19日(同20日)の集会と行進を企画したクラウドを称賛した。
「2週間前に彼女が行進をしたいと僕に連絡してきて、僕も乗ったんだ。チームのみんなに伝えて、パワフルで意味あることになるとみんなで賛成した。僕たちには声がある。プラットフォームがある。僕らはそれらを使っていく。この行進もそのひとつだ。コーチの(ジョン)トンプソン三世が言ったように、これは僕たちの最後の仕事じゃない。この後も、僕たちには続けていく仕事がたくさんある」。
クラウドは自分が信じる問題について声を上げてきた人だ。何年も前から、特にワシントンDC地区における銃暴力の危険や、今の世界だけでなく若い世代にいかに影響するかについて訴えてきた。
フロイドさんが亡くなってから、クラウドはバスケットボールコミュニティで真っ先に国を悩ます人種的圧制を終えようと訴え、声を上げ、フィラデルフィアの地元でデモ行進もしてきた。
だが、彼女の行動への呼びかけは、人種的圧制に積極的に参加する人を取り除いていくためだけにとどまらない。『The Players’ Tribune』に寄稿した「あなたの沈黙はわたしの首に乗せられたひざ」という記事で詳しく述べたように、クラウドはもう沈黙や受け身的中立はいけないとはっきりさせている。
19日(同20日)、クラウドは集まった人たちに「私たちはもうこれを無視できません」と話した。
「それが、アメリカのすべての人に対する私たちのメッセージです。もう、これを無視することはできません。あなたの沈黙は、わたしの首に乗せられたひざなのです。あなたの中立は、圧制側を味方することなのです。私たちの命はずっと大切でした。黒人の命が大切にされない限り、すべての人の命が大切にはなっていないのです」。
アリーナの外での集会後、選手たちは「ともに団結しよう」と書かれた横断幕を持ち、平和的デモ行進で人々を先導した。
また、選手たちは行進をしながらメガホンを使い、人々が「正義なくして平和なし」「これが民主主義」「Black lives matter」などといったチャントを歌うのを先導している。
マーティン・ルーサー・キング・ジュニア記念碑に到着すると、ミスティクスとウィザーズの選手とコーチたちは、人種的不当や警察の残虐行為の結果亡くなった人々の名前を読み上げた。
ビールは「このリストの人たちには、正義を得た人も、得なかった人もいます」と話している。
「これらの人々が、彼らのご家族が、正義を見られるようにすることが僕たちの義務です。僕たちはそれを、団結し、まとまってやらなければいけません」。
2人の子どもを持つビールは、さらなる責任も考えた。自分が育った世界と子どもたちが育つ世界で、何が似て、何が異なるのか、そして子どもたちのためにより良い生活を築くべく、全力を尽くさなければいけないという義務について理解しようとした。
ビールは「自分には機会があります」と話している。
「ダメだったら、ダメでしょう。でも、ここに座って、トライすることもなく、努力しなかったと言うわけにはいかないのです。自分には幸いにもプラットフォームと機会があるからです。だから、車輪が外れるまでこの列車に乗っていきます」。
ビールは「見境なく不快な現実が隠されたり、傷にバンドエイドを貼るだけで、あとでそれをはがすだけということは、もうありません」と述べた。
「我々全員が説明する責任を負うときなのです。立法者や司法当局、州、市の議員、検事、判事、政治家、警察組合と、説明責任を負わなければならない法の執行者の全員に、呼び掛けなければなりません。持続的な変化が必要なのです。しかし、我々は、コミュニティにおいて自分たち全員がそれぞれの役割を果たし続けなければいけないことも知っています。ここで我々はチームとして、ひとつのユニットとして取り組んでいます。我々はこのコミュニティを守り続けます。このコミュニティに努力をし続けます。でも、皆さんのことも必要なんです。ここは私たちの家なのです」。
「この行進は、ただの踏み石ではありません。今こそ我々の真の行動、真の試練が始まるのです。ともに団結しましょう」。
原文:Wizards, Mystics lead "Together We Stand" peaceful protest to commemorate Juneteenth by Jackson Filyo/Wizards.com(抄訳)