クリスチャン・ウッドは今オフ最も興味深いFA選手のひとり

Scott Rafferty

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ひとつゲームをしよう。

あなたはNBAのGMだ。このオフシーズンで最優先されるのは、新シーズンのスターティングラインナップを完成させるビッグマンとの契約。サラリーキャップに膨大な空きはなく、以下の2名の選手のうち、ひとりと契約できるほどだ。

2019-20シーズンの36分平均の次の数字を基に、あなたなら選手Aと選手Bのどちらを選ぶだろうか。

選手 得点 リバウンド アシスト ブロック FG成功率 3P成功率 FT成功率
A 24.1 9.2 2.2 1.5 58.0% 0% 65.8%
B 22 10.6 1.6 1.5

56.7%

38.6% 74.4%

この2選手は誰だろうか?

選手Aは、今季のシックスマン賞を受賞したモントレズ・ハレルだ。

選手Bは、デトロイト・ピストンズで今季ブレイクしたクリスチャン・ウッドだ。

あなたがどちらを選んだかは、この記事の目的において重要ではない。大切なのは、即決でハレルとは限らないということだ。なぜか。ハレルもウッドもこのオフシーズンで完全フリーエージェントであり、どのチームとも自由に契約できるからだ。ハレルは獲得可能なFA選手の中で特にセンターとしては最高の選手として広く考えられている。一方、ウッドは熱心なNBAファンでなければあまり知られていない。

上記の数字は、ウッドがハレルより優れていると示すわけではない(選手比較は面白いが、7つだけ取り上げたスタッツに基づいてどちらの選手がより優れているかを決めるのは難しい)。だが、これらの数字が光を当ているのは、ウッドが今回のFA市場で最も興味深い選手となる可能性だ。

その理由を理解すべく、今季のウッドを振り返ってみよう。

得点傾向

NBA.com』によると、今季のウッドの得点の多くはスポットアップ(21.6%)、ピック&ロールのロールマンとして(19.7%)、そしてトランジション(16.7%)からという内訳だ。

トランジションにおける得点効率は50パーセンタイルとリーグ平均程度だが、スポットアップ(86)とピック&ロール(95)はリーグトップクラスとなっている。

ポストからの得点(6.6%)は非常に少なく、プットバック(10.2%)やカット(9.6%)からのほうが多い。

プレイ 頻度 ポゼッション
ごとの得点
パーセンタイル
スポットアップ 21.60% 1.19 85.9
ピック&ロール 19.70% 1.5 95.4
トランジション 16.70% 1.11 49.8
プットバック 10.20% 1.34 88.7
カット 9.60% 1.24 43.9
ポストアップ 6.60% 0.8 24.5

ショットチャート

Christian Wood

ストレッチビッグ

ウッドのプレイで最も魅力的なのは、3ポイントショットだ。

NBA.com』によると、今季の試投のうち22.8%がキャッチ&シュートの3Pで、その成功率は40.4%。ボリュームは異なるが、成功率はポール・ジョージやカワイ・レナード・ダニーロ・ガリナーリ、ジェイレン・ブラウンらと同等だ。

今季のウッドの3Pは、4本を除く全てがアシストされたもので、大半はデリック・ローズやブルース・ブラウン、ラングストン・ギャロウェイらのドライブ&キックから生まれている。6フィート10インチ(約208センチ)登録と大きいが、ウッドは3Pラインにスポットアップし、キックアウトを待つのに完璧に満足している。

高さに7フィート3インチ(約221センチ)というウイングスパンも加わり、そのサイズの選手としてクイックなリリースとあり、ウッドは大半のディフェンダーの上からシュートを打つことができる。

それだけでも、スペース作りが最も貴重とされる現代のNBAにおいて、ウッドは興味深い選手だ。理論上は、より伝統的なビッグマンとコートを共有できるシューターでありつつ、その3Pがさらに貴重となるセンターとしてプレイできるビッグマンだ。

外から打てるほかのビッグマンたちと違うのは、クローズアウトしてきた選手を攻撃できる能力だ。ディフェンダーが3Pラインのウッドに向かってきたら、彼はドリブルからバスケット付近で豊富な方法から得点をあげられる。

ペイント内で自分より小さいディフェンダーの上からフィニッシュするリーチの長さもある。

つま先でディフェンダーをかいくぐっていくフットワークも持つ。

制限区域の外から得点するタッチもあるのだ。

フローターレンジからの効率は、特別優れてはいなかった。『Cleaning The Glass』によると、彼のポジションではその距離からの効率が34パーセンタイルだ。だが、そこから得点できるポテンシャルは示した。成長を続けていくなかで改善すべき点だ。

3Pとクローズアウトにきた選手を攻撃する能力を持つウッドは、86パーセンタイルと、今季のリーグで有数のスポットアップスコアラーだった。

ダンクマシン

前言修正だ。

ウッドのプレイで最も魅力的なのは、ストレッチフォーとリムに向かう5番を相互にこなせる点だ。

今季のウッドの得点は大半がスポットアップからだが、ピック&ロールのロールマンとしての得点もリーグ上位だった。前述のように、95パーセンタイルと非常に効率的だったのだ。

3Pラインに広がることができるが、ウッドはスクリーンをかけてから、ポップよりもロールする。

ここでも、ロールから素早く得点するタッチを持つのだ。

だが、目を引くのは、アリウープに高く跳んだプレイだ。

高さやウィングスパンだけではない。彼は優れたアスリートでもある。そのコンビネーションで良くないパスも良いかのように見せられる、バスケット付近での大きなターゲットとなるのだ。

ロブパスからの脅威に加え、ウッドはカッターとしても優れた本能を持ち、オフェンシブリバウンドを積極的に取りに行け、トランジションでも走ることができる。

サイズを生かしたプットバックとカッティングからの得点がまずまずというビッグマンは多い。だが、ウッドのように楽々とフロアを走る選手は多くない。相手のシュートが外れると全速力で駆け出し、スピードに乗った彼を止めるのは困難だ。

NBA.com』によると、今季のウッドはダンクを狙ったのが123回とリーグ13位。それで彼よりも3P試投が多いのは、ヤニス・アデトクンボとアンソニー・デイビスだけだ。しかし、彼らは合計で3P成功率31.5%と、ウッドの38.6%に及ばない。

今季のウッドほどダンクにいった選手で、これほど3Pをうまく決めるのは普通ではなかったのだ。

守備向上

今季のウッドは守備も良くなった。まだ改善の余地は大きいが、影響力のあるディフェンダーとなるだけの力を持っている。忘れてはいけないのは、彼がまだ25歳ということだ。そして、基本的にはNBAキャリアにおいて1シーズン半ほどの試合しかこなしていない。

ひとつには、ウッドにはバスケット付近で相手を抑止するサイズがある。今季はそのポテンシャルを垣間見せた。1試合平均21.4分で0.9ブロックを記録し、バスケット付近での相手選手のフィールドゴール成功率は54.6%。これはバム・アデバヨ、スティーブン・アダムズ、ナーレンズ・ノエルらと同等の数字だ。

7フィート3インチ(約221センチ)というウイングスパンは非常に貴重で、相手のショットにコンテストする時に素早く対応するのだ。

次に、ウッドはある程度スイッチができる。今季は主にパワーフォワードとセンターを守ったが、ポイントガード、シューティングガード、スモールフォワードを守る時間も多く、複数ポジションを守る能力を数値化したバーサティリティレーティングは68.9だ。

すべてスイッチするようなジェレミー・グラント(78.0)と、ディフェンシブアンカーのマルク・ガソル(57.4%)の間となる。

もちろん、複数のポジションでスイッチできるのと、それをうまくやるのとは別物だ。だが、ウッドにはガードと対峙できるフットワークのスピードと、ペリメーターで相手のショットにコンテストするリーチの長さがある。

展望

ウッドの懸念は、まだ長期にわたってハイレベルなプレイを見せていない点だ。

2015年のドラフトで指名外だったウッドは、プロキャリアの最初の数シーズンをDリーグ(現Gリーグ)で過ごした。キャリア最初の4シーズンは合計51出場と、今季の62試合出場を下回る。

おまけに、NBA入りする前はウッドのモチベーションに対する懸念もあった。『The Athletic』のジョン・ホリンガー記者は最近、「ウッドはピストンズが一定の監視をしなければいけないような選手のひとりだ。彼には努力家でないという背景があった。2015年にドラフトで指名されなかった大きな理由だ」と記している。

それらをすべて考慮しても、今季のウッドに夢中にならずにはいられないだろう。彼は現代のNBAで理想的なビッグマンであることを証明した。インサイドとアウトサイドのどちらでもハイレベルなプレイができ、守備もまったくのマイナスではないことを示した。シーズン最後の13試合では、アンドレ・ドラモンドの代わりとしてスターティングラインナップに入り、1試合平均22.8得点、9.9リバウンド、2.0アシスト、1.0ブロック、FG成功率56.2%、3P成功率40%、フリースロー成功率75.7%を記録している。

その13試合でピストンズが勝ったのは1試合だけだった。だが、ウッドがコートにいると、彼らはまったく異なるチームとなっていたのだ。ウッド出場時は100ポゼッション平均での得失点差がプラス1.6得点だが、彼がベンチに座ると100ポゼッション平均でマイナス28.9得点だった。

十分なサンプルではない? もちろんだ。だが、このオフシーズンにセンターを探すチームたちにとって魅力的な選択肢となるだけのサンプル数としては十分だろう。。

原文:Why Christian Wood is this offseason's most interesting free agent by Scott Rafferty/NBA Canada(抄訳)


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Scott Rafferty

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.