ルーキーで平均ダブルダブルを達成した選手は? ビクター・ウェンバンヤマの歴史的シーズンを探る

大西玲央 Reo Onishi

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NBAドラフト2023の全体1位指名で、バスケットボールという競技を変えてしまうかもしれない選手としてリーグ入りしたサンアントニオ・スパーズのビクター・ウェンバンヤマは、まさにその前評判通り、いやそれ以上の活躍を見せている。

当初はオクラホマシティ・サンダーのチェット・ホルムグレンとの新人王争いが注目されていたが、最近ではウェンバンヤマが確実に受賞するだろうという声がほとんどとなっている。

ホルムグレンの活躍ももちろん素晴らしいものだ。しかし、それすらをも凌駕してしまうような活躍をウェンバンヤマは見せ続けている。

今季のウェンバンヤマはここまで61試合に出場し、平均20.7得点、10.4リバウンド、3.5アシスト、1.3スティール、3.5ブロックをマークしている。まず、ルーキーで平均ダブルダブルを記録していることがどれだけの偉業であるか理解する必要がある。

NBAが創設された1946-1947シーズン(当時はBAA名義)から、平均ダブルダブルを記録したルーキーは47人しかいない。得点とアシストで記録した1988年のマーク・ジャクソンを除けば、全員が得点とリバウンドでの達成だ。

20得点以上の平均ダブルダブルに絞り込むと、その数はわずか21人にまで絞り込まれる。直近では2010-2011シーズンのブレイク・グリフィンが記録した平均22.5得点、12.1リバウンドで、実に13年ぶりの記録となる。

1980年以降で20得点以上の平均ダブルダブルを達成したルーキー

選手 Pt. Rb. As. Bl.
2024* ビクター・ウェンバンヤマ 20.7 10.4 3.5 3.5
2011 ブレイク・グリフィン 22.5 12.1 3.8 0.5
2000 エルトン・ブランド 20.1 10.0 1.9 1.6
1998 ティム・ダンカン 21.1 11.9 2.7 2.5
1993 アロンゾ・モーニング 21.0 10.3 1.0 3.5
1993 シャキール・オニール 23.4 13.9 1.9 3.5
1990 デイビッド・ロビンソン 24.3 12.0 2.0 3.9
1985 アキーム・オラジュワン 20.6 11.9 1.4 2.7
1984 ラルフ・サンプソン 21.0 11.1 2.0 2.4
1983 テリー・カミングス 23.7 10.6 2.5 0.9
1983 クラーク・ケロッグ 20.1 10.6 2.8 0.5
1980 ラリー・バード 21.3 10.4 4.5 0.6

*シーズン継続中

もっと絞り込んでいこう。これに加えて平均3アシスト以上を記録している選手は、リーグ史上8人しかいない。さらにブロックも入れると、ウェンバンヤマ単独となる(ブロックが正式なスタッツとして数えられるようになったのは1973-74シーズン以降)。

どれだけ彼がオールラウンドな活躍をしているのかがわかるだろう。

さらにウェンバンヤマのすごいところは、224cmという圧倒的なサイズを持ちながらも、3ポイント試投数も平均5.1本と多いことだ。20得点以上の平均ダブルダブルを達成したルーキーで、次に近いのは平均1.7本のラリー・バードだ。

しかもウェンバンヤマの3Pショットは、ただのキャッチ&シュートではない。ドリブルの動きの中で放たれるプルアップ3Pの成功率で、ウェンバンヤマは38.8%という高確率を残している。これは今季2本以上のプルアップ3Pを試合中に放っている全選手の中でもリーグ8位という驚きの正確さだ。

そしてもしかしたらこれが一番驚きの数字なのかもしれない。彼は平均29.1分しか出場していないのだ。他の達成者を見るとほとんどが平均30分後半、60年台の選手に至っては平均40分以上がほとんどだ。

ウェンバンヤマはこれだけの好記録を平均30分にも満たない出場時間で成し遂げているということになる。

NBAは82試合と、世界中のリーグと比べて圧倒的に試合数が多く、過酷なレギュラーシーズンを送るリーグだ。1年目ということもあり、慣れながらやっていくという方針を当初から打ち出していたウェンバンヤマだが、ここからも成長していくのだと考えると、どれだけ異次元な数字を今後残していくのかが楽しみだ。

大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。