なぜデュラント、ブッカー、ビールのサンズは1回戦敗退になったのか?|NBAプレイオフ2024

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坂東実藍 Miran Bando

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ケビン・デュラント、デビン・ブッカー、ブラッドリー・ビールのスター選手たちを擁するフェニックス・サンズは、早々とバカンスを計画できることになった。

NBAプレイオフ2024のファーストラウンドで、ミネソタ・ティンバーウルブズにスウィープ(4勝0敗)を許したのだ。第6シードのサンズは第3シードのウルブズに完全に上回られた。平均15.5点差で4試合を落としている。

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サンズとウルブズの対戦が決まった時、ファーストラウンドのアップセット候補のマッチアップと見た人も多い。下位シードにもかかわらず、ラウンド突破はサンズ有利とも見られていた。レギュラーシーズンの対戦でも、サンズはウルブズとの3試合をすべて制していたのだ。だが、プレイオフは違った。

サンズのスタートリオは、強度を高めたウルブズの守備を乗り越えられなかった。そして彼らには、アンソニー・エドワーズというスーパースターガードを抑える守備力がなかったのだ。さらにシリーズを通じて層の薄さは明らかだった。

サンズのフロントオフィスは今後、このロスターをいかに機能させていくのかをじっくりと自問しなければならない。4月28日(日本時間29日)の最終戦を前に『ESPN』のエイドリアン・ウォジナロウスキー記者が報じたように、フランク・ボーゲル・ヘッドコーチはすでに立場が危ういと伝えられている。

サンズはプレイオフで何がうまくいかなかったのだろうか。『スポーティングニュース』がまとめる。

サンズの攻撃はリーグトップのウルブズ守備を前に沈黙

レギュラーシーズンの対戦でウルブズに全勝したサンズは、3試合のうち2試合で125得点超をあげている。だが、プレイオフ・ファーストラウンドの4試合のうち2試合では100得点未満にとどまった。

これはシーズンを通じてリーグトップのウルブズの守備によるところが大きい。中心は最優秀守備選手賞の有力候補ルディ・ゴベアだが、ペリメーターでの助けも多かった。

エドワーズは、守備ではまれば攻守両面でリーグ有数の選手であることを証明した。ジェイデン・マクダニエルズとニキール・アレクサンダー・ウォーカーは、シリーズの大半でサンズのスター選手たちを封じている。

第4戦で49得点とついに爆発したブッカーだが、第3戦までは平均20.3得点という数字だった。シリーズ序盤はマクダニエルズとアレクサンダー・ウォーカーによってリズムに乗らせてもらえなかったのだ。第3戦まではシリーズを通じていら立っているようだった。そして彼らを抜けたとしても、ペイントで待ち受けるゴベアにはじき返された。

ビールも同様だ。平均16.5得点にとどまり、敗退が決まった第4戦ではフィールドゴール(4)よりターンオーバー(6)とパーソナルファウル(6)のほうが多かった。

デュラントは平均26.8得点をあげている。だがそれでも、彼のプレイオフキャリアで3番目に低い平均得点だった。

シリーズ開幕時、エドワーズは「彼らにはKD(デュラント)がいるけど、僕らにはジェイデン・マクダニエルズがいる」と話した。当初はチームメイトに対する分別のない自信とも思われたが、マクダニエルズはそれが予言だったと証明している。

サンズの守備はアンソニー・エドワーズに対抗できず

一方で、サンズにはエドワーズを止める選手がいなかった。

ボーゲルHCはビールにエドワーズをあてたが、それがうまくいかないことはすぐに明らかになった。ブッカー、デュラント、ロイス・オニールもエドワーズを守ったが、誰も大きく成功できなかった。

そしてこの4人以外、サンズには可能な選択肢がなかったのだ。

第1戦では第3Qでエドワーズに活躍され、接戦から大敗とされた。デュラントが止めようとしたが、かつて自分をアイドル視していた相手に次々とショットを決められた。

第3戦では、エドワーズにFG23本で36得点をあげられた。後半に20得点を記録され、再び接戦からの勝利を許している。

そして第4戦では、第4Qに攻守両面で見事なパフォーマンスを許して40得点と活躍された。ブッカーがダンクを試みるもエドワーズにブロックされた場面や、デュラントがポスターダンクを決められたシーンは、ポストシーズン序盤戦のハイライトだ。

サンズは決して守備が持ち味のチームではなかった。ディフェンシブレーティング(120.6)はプレイオフ進出チームの最下位だ。そこに加えて攻撃も不振とあり、サンズはひどいタイミングでシーズン最悪のバスケットボールをすることになってしまったのである。

サンズのロスター編成と層の薄さ

さらに、最大の欠点となったのが、サンズのロスター編成と層の薄さだ。

ボーゲルHCがこのシリーズで本当に信頼して起用したのは7選手だった。1試合平均の出場時間が20分超だったのは、デュラント、ブッカー、ビール、オニール、ユスフ・ヌルキッチ、グレイソン・アレン、そしてエリック・ゴードンだけだったのだ。

第2戦でアレンが足首を負傷し、シリーズの残り試合を欠場すると、ボーゲルHCはドリュー・ユーバンクスとジョシュ・オコーギーをローテーションに加えた。

サンズのスタートリオは、攻撃で周囲からあまり助けを得られなかったのだ。そして守備で本当にストッパーとなるのは、ヌルキッチとオニールのみ。これでは、ウルブズのように層の厚いチームには通用しない。

オフシーズンにトレードでビールを獲得した時、サンズは「ビッグスリー」を中心とするチームをつくることで厳しい時期を迎えると分かっていた。今季、デュラントが4770万ドル(約74億8890万円/1ドル=157円換算)、ビールが4670万ドル(約73億3190万円)、ブッカーが3600万ドル(約56億5200万円)で、約1億3100万ドル(約205億6700万円)だ。さらにヌルキッチとアレンのトレードで、フリーエージェントと契約する余地は実質的になくなった。

その結果、サンズはミニマム契約レベルの選手たちが多くなった。プレイオフで毎試合ローテーション入りしたのはゴードンだけだ。

さらに、この問題はすぐには解決しない。デュラント(2026年)、ビール(2027年)、ブッカー(2029年)、ヌルキッチ(2026年)は、いずれも当面の契約が残っている

サンズが再び優勝を競うレベルのチームに戻るためには、オフシーズンにトレードやサラリーキャップの調整に取り組まなければならないだろう。

原文:What went wrong for the Suns? Kevin Durant, Devin Booker and Phoenix swept out of 2024 NBA Playoffs by Timberwolves(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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You read that wrong – not Kyrie Irving. From Boston, graduated from the University of New Hampshire. Sixth season as a content producer for NBA.com's Global editions. Covering the NBA Draft has become his annual "dream come true" moment on the job. Irving has a soft spot for pass-first point guards, with Rajon Rondo and Steve Nash being two of his favorite players of all time.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。