「今年は絶対にプレイオフを逃したくない」
12月1日(日本時間2日)、ワシントン・ウィザーズの八村塁がオンライン会見を開き、2020-21シーズンに向けた現在の心境や抱負などについて語った。
2019年のNBAドラフトでウィザーズから全体9位指名を受けてNBA入りした八村は昨季、田臥勇太、渡邊雄太に続く史上3人目の日本人NBA選手となった。ルーキーシーズンは、故障や新型コロナウイルスによるシーズン中断など不運にも見舞われたものの、出場した48試合すべてで先発に名を連ね、1試合平均13.5得点(新人5位)、6.1リバウンド(新人1位)、1.8アシスト、0.8スティールを記録。シーズン終了後には、オールルーキー・セカンドチームに選出されるなど、日本人NBA選手の歴史を大きく塗り替える1年となった。
故障から復帰するジョン・ウォール、ブラッドリー・ビール、再契約を果たしたダービス・ベルターンスなど、昨季以上の戦力を有するウィザーズでの2年目に臨む八村は、トレーニングキャンプを前にどんな心持ちでいるのだろうか。ウィザーズ日本語コンテンツチームをはじめ、日本の新聞・テレビ各社、フリーランスのバスケットボールライター、そしてNBA Japanなど多くのメディアからの質問に八村が答えた。
以下、会見抜粋。
「すごく楽しみなチームになる」
――オフシーズンはリラックスできたか。
八村:バブル(※NBA 2019-20再開シーズンが開催されたフロリダ州オーランドの隔離施設)から出て、少し落ち着いてゴンザガ(大学)のほうにも戻りましたし、日本にも戻りました。少しずつトレーニングを始めていって、ここ2か月くらいずっとトレーニングしてシーズンに向けて準備していました。
――どんなトレーニングに取り組んだ?
八村:主にウェイトトレーニング。バスケットボールのほうはスリー(ポイントショット)を中心にやったり、ボールハンドリングを中心にやったりしていました。
――今回のキャンプは個人的にどんなテーマを持っている?
八村:チームがどんな感じになるかまだ全くわからない。チームメイト全員ともまだ全然会っていないので、そういう状態でいきなり練習が始まっていくと思う。どういうチームかというのも全然わからない状態で入っていくので、僕のプレイをどんどん出していければと思います。
――ダービス・ベルターンスの残留、デニ・アブディヤの加入などで3~4番の選手層が厚くなった。
八村:DB(ベルターンス)は去年一緒にプレイして、NBAでもトップに入るシューターのひとり。そういう選手とやっているということで、チームとしてもオフェンスではトップのほうにランクしていたと思うんですけど、そういう持ち味があるなかでどんどん層も厚くなっている。今年はジョン(ウォール)も帰ってくるということで、すごく楽しみなチームになるんじゃないかと思っています。
――2年目の抱負、ファンの皆さんにメッセージを。
八村:去年はプレイオフを逃してしまったんですけど、今年は絶対に、チームとしても絶対(プレイオフを)逃したくない。僕らもチャンスはあると思うので、まずはそこを目指して頑張りたい。その後は、プレイオフに行って、そこから僕らがどこまで行けるかというところを見てみたいと思います。
「まずNBAのシーズンに集中」
――今シーズンはどんなシーズンにしたい?
八村:不規則なシーズンになると思うのですが、僕らも、チームとしても、いい選手が集まって、プレイオフに向けて頑張っていけるようなチームなので、すごくチャンスがあると思う。最初はまずどういう風になるかわからないので、少し苦労するかもしれないんですけど、チームのケミストリーをまず上げていって、そのなかで自分の持ち味を出して、どれだけチームに貢献できるか。そこがすごく楽しみです。
――オリンピック、日本代表へのアジャストの時間が短い。オリンピックにどのように臨む?
八村:まずNBAのシーズンに集中してそこをしっかりやっていきたいと思う。オリンピックも前から出たかったひとつの大きな大会なので、シーズンの終わりになるにつれて少しずつ考えなければいけないなと思います。まずはこのNBAのシーズンの出足をしっかりと気を引き締めてやっていきたい。
――オリンピックの日程がNBAとかぶらなかった。オリンピックの日程が出たときの率直な感想、思いは?
八村:NBA選手にもたくさんオリンピックに出る選手がいるので、僕は、NBAはそこにアジャストするというのはわかっていたので、(日程のかぶりは)全然心配していなかったです。ただ、タイトなスケジュールにはなってくるので、そこは選手としても考えなきゃいけないところ。オリンピックがまだできるチャンスがあるのはすごく嬉しいです。
――先ほどコーチから、チーム内のケミストリーを再構築していく段階だという話があった。競争の激しさという点ではどう感じている?
八村:世界のトップでやっているリーグなので、もちろんそういう競争はあると思っている。負けないように自分のプレイをどんどん出していって、やっていきたいなと思っています。
「去年学んだことを今年は最初から生かしていけたら」
――1年目と2年目のシーズンインのタイミングでの心境の違い。
八村:去年は僕の初めてのシーズンというか、最初の、プロとしての初めてのキャリアのシーズンだったので、いろいろとわからないことがあった。今年もまだ学んでいる途中なんですけど、去年学んだことを今年は最初から生かしていけたらいいなと思っています。
――2年目の今シーズンに対する、自分への期待。自分のどんなところに期待している?
八村:自分としても、このチームがどういうチームかというのが少しずつわかってきたんですけど、ジョン・ウォール選手も帰ってきますし、新しい選手が何人か入ってきたりしていて、まだわからないところもあるんですけど、自分の持ち味をどんどん出していって、今シーズンはスリーもどんどん打っていくので、そこは期待しています。
――今シーズン、ここは去年よりも良くしていきたいということがあれば。数字的な目標ももしあれば。
八村:2年目のシーズンなんですけど、まだいろいろ学んでいる途中。スケジュールがタイトになっていくと思うので、体調管理とか気持ちの部分で切り替えとかそういうところはしっかりやっていかなきゃいけないなと思います。プレイメイキングできる選手がいっぱいいて、僕もオープンになっていくと思うので、スリーをどんどん決めていけたらいいなと思っています。
――ウェイトトレーニングでどういうところに必要性を感じて、どういうところを鍛えたか。
八村:トレーナーをひとり雇ってオフシーズンずっとやっていたんですけど、コアを中心にやっていました。大きくするとか重くするとかはやっていなかったです。どっちかというと、もっと動きを良くするために、そういう系のトレーニングをいっぱいしてきました。何回かピックアップゲームもやっていますし、バスケをしているなかでそこは強くなったなと感じているので……いい感じですね。
――バブルから身体の変化は?
八村:体重はたぶん5kgくらい増えて、僕としては動きやすくなっている。なんかこう、バランスが取れているな、という感じがしています。
坂本穣治コーチからの教え「一生懸命を楽しむ」
――去年と今年のチームの最大の違いといえばジョン・ウォールが帰ってくることだと思う。彼と一緒にプレイするなかでどの辺がポイントになりそうか。
八村:このオフシーズン、チームとしてもジョンのプレイとか、プレイしているときのビデオをいっぱい見たりしました。ジョンがどういうポイントガードかということは少しずつわかってきています。でも、ビデオで見ているのとプレイするのは全然違うと思うので、トレーニングキャンプが始まってからどうなるかというのが楽しみ。彼はスピードを持ち味としたポイントガードで、僕も走れる、一緒にファストブレイクで行ける選手のひとりなので、そういうところが持ち味になるんじゃないかなと思います。
――ディフェンス面に関して、どういう意識で過ごしてきたか。
八村:コーリー(ゲインズ・アシスタントコーチ)と始めたのが、相手のパーソナルというか、NBAでロスターに入っている選手たちの名前を覚えていったり、癖を覚えていくということ。それがすごく大事なんじゃないかということで、彼がシートみたいなのを作ってくれて、この選手はどういう風にするのが好きとか、こういうのが嫌いとか、そういうところを少しずつやってきました。自分の個人的なディフェンスのところではそういうところが大事になってくるんじゃないかと思う。チームとしては、もっとコミュニケーションを取らなければいけないなと思うので、そこはキャンプが始まってからとか試合が始まってから、どんどん生かしていけたらと思います。
――2年目に向けて改めて大切にしている(母校・奥田中の)坂本(穣治)コーチからの教えなどがあれば。
八村:中学校のときに(バスケを)始めて、コーチからもいろいろな名言みたいなものを教えられてきたんですけど、そのなかでも「一生懸命を楽しむ」っていうのが僕にとってすごく大きいなと思います。今こういう大変な状況のなか、僕だけではなく、いろんな人が苦労していると思うんですけど、どれだけそれを楽しめるかというのが、こういう大変な時期を乗り越えるために大事になってくるんじゃないかなと思う。そこは意識していけたらと思います。
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NBAは12月1日(同2日)から個人練習及びメディアウィーク(会見などの集中開催)がスタートし、6日(同7日)からグループ練習が開始。11日(同12日)からプレシーズンが始まる。ウィザーズは13日(同14日)にブルックリン・ネッツ、17日(同18日)と19日(同20日)にデトロイト・ピストンズと、合計3試合のプレシーズンマッチを行ない、シーズン開幕に臨む。
NBA 2020-21シーズンは22日(同23日)に開幕する(NBA 2020-21シーズンの主な日程)。