ウィザーズ幹部が語る日本市場での成功と今後の展望

大西玲央 Reo Onishi

ウィザーズ幹部が語る日本市場での成功と今後の展望 image

5月17日、ワシントン・ウィザーズの運営会社であるモニュメンタルスポーツ&エンタテイメント(以下MSE)の幹部スタッフが、東京都内某所で日本のバスケットボールメディアとの質疑応答を行なった。ウィザーズが八村塁をドラフト指名してから3年が経ち、さらに今春には、同じMSE傘下であるWNBAワシントン・ミスティックスに町田瑠唯が加入したことで、彼らにとって日本市場の重要性は増している。

合同インタビューに出席したのは、ビジネス部門代表兼最高商務責任者(CCO)のジム・バンストーン氏、グローバルパートナーシップ部門シニアバイスプレジデント(SVP)のパトリック・ダフィー氏、最高マーケティング責任者(CMO)のハンター・ロックマン氏、そしてマーケティング部門SVPのレベッカ・ウィン氏、通訳を担当した日本マーケティングマネジャーの新川諒氏の5名。それぞれが、日本市場向けの施策や今後の見通しについて語ってくれた。

日本語独自コンテンツの成功

全員が口を揃えるように喜びを語っていたのが、日本市場の拡大だ。ウィザーズは八村を指名してから、ツイッターなどのソーシャルメディアにNBAチームとしては初となる日本語公式アカウントを開設し、積極的に日本語オリジナルコンテンツを投稿し続けている。その結果、同アカウントは「リーグで最もエンゲージメントの高いアカウントのひとつ」になっているという。

ウィザーズは、コート内だけでなくコート外でもどういった活動をしているのかを発信するよう心掛けており、ロックマンCMOは「八村選手も町田選手も、自分たちが経験していることを共有してくれることにとても協力的であり、それによってファンに厚みのあるストーリーを提供することができています」と両選手について話した。

Washington Wizards Cherry Blossom Jersey

桜モチーフのユニフォーム

ウィザーズにとって、日本との関係は決して八村と町田だけではない。本拠地ワシントンDCと日本には長い歴史があるのだ。2022年は、日本が米国に桜を寄贈した日米桜寄贈110周年となる年。その桜はウィザーズの本拠地であるワシントンDCに植えられており、毎年春には桜祭りが開催されるなど、住民に広く愛されている。

来季のウィザーズは、その桜をモチーフとしたシティ・エディション・ジャージーを着用することをすでに発表している。「毎年新たなジャージーを作るたびに、いつか桜のジャージーを作りたいと考えていました。ナイキと共に2年以上かけて企画していたものです」とロックマンCMOは話す。

バンストーンCCOによれば、今回のジャージーをベースとして様々なファッショングッズも展開する予定で、「NBAで最も売れるジャージーのひとつになるのではないか」と期待を込めた。

NBA Japan Games 2022

9月にさいたまスーパーアリーナで行われるNBAジャパンゲームズ2022で、ゴールデンステイト・ウォリアーズとのプレシーズン戦を行うウィザーズは、すでに多くの日本企業やBリーグチームと接触しており、様々な形で今後も日本市場を広げていくこととなりそうだ。

ジャパンゲームズはNBA主導のイベントではあるものの、ウィザーズ単独での活動も多く計画されていることが明かされた。ウィザーズだけでなくミスティックスのメンバーやコーチングスタッフも帯同し、コーチングクリニックなどが予定されているという。

さらに、NBA 2Kリーグのウィザーズ傘下チームであるウィザーズ・ディストリクト・ゲーミングによるエキシビションも予定されており、日本のeスポーツ市場を活性化させることにもなりそうだ。

2019年に八村がドラフトされて以来、一気に日本との距離感が縮まったウィザーズ。新型コロナウイルスがパンデミック化する以前は、「多くのファンが日本から試合会場まで足を運んでくれました」とバンストーンCCOは語る。コロナ以降のこの2年は気軽に海外旅行へ行ける状況ではなかったが、今後、移動規制が世界的に緩和されるにつれ、それも変わっていくだろう。そうなった暁には、日本のファンにとってウィザーズとNBAがもっと身近な存在となっていくに違いない。

NBA全試合ライブ&見逃し配信 最高の瞬間を『NBA Rakuten』で

大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。