「ケビン・デュラントは人間なのか?」 白星発進アメリカの初戦注目ポイント|パリ五輪2024

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坂東実藍 Miran Bando

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パリオリンピック2024を前にアメリカ代表は強化試合で全勝した。そのうち、最も快適な勝利だったのが、アブダビで行われたセルビア代表戦だ。NBA最高の選手という呼び声高いデンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチを擁するセルビアが相手ながら、アメリカは快勝している。

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それだけに、そのセルビアとの初戦で110-84と勝利したことは、5大会連続の金メダルを目指す上での初戦として、さほど祝う理由にならないかもしれない。しかし、祝えないよりは良い。

そして、アメリカのメンバーが完全にそろった中で、今後の可能性を示唆しているかもしれない。

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1. ケビン・デュラントは人間なのか?

オリンピックを前に行われた5試合の強化試合を通じて疑問だったのが、デュラントがプレイできるようになった時にチームはどうなるのかというものだった。ふくらはぎの問題で、デュラントは強化試合で1分もプレイできていなかったのだ。

いずれにしても、アメリカは強化試合で5戦全勝だった。だが、ある程度の困難がなかったわけではない。5試合のうち3試合は接戦だった。2試合は終盤のレブロン・ジェームズの英雄的な活躍が必要だった。

そして迎えたセルビアとのオリンピック初戦の第1クォーター残り2分33秒、デュラントはコートに立つと、おおよそ散々だった前半のパフォーマンスを救っている。

デュラントが3ポイントショット5本や前半終了間際のブザービーターを含む8本のフィールドゴールをすべて沈め、アメリカに9点のリードをもたらしていなければ、スコアはどうなっていただろうか?

後半のデュラントはFG試投1本で決めることができなかった。完璧な夜だったわけではない。だが、アメリカにとってまったく有望な出来だった。

デュラントは23得点をあげ、プラス20点をもたらした。17分の出場でターンオーバーは1つのみ。開始からボールの扱いがずさんだったチームにおいては重要なことだ。

ジェームズは『NBC Sports』で「ターンオーバーについて改善していく」と話した。

「やろうとしているけど、できていない。だが、いくつか不注意なターンオーバーがあった。攻撃でさらにポゼッションを増やせたはずだ。水曜はもっとうまくやる」

2. スターティングラインナップは大切なのか?

スティーブ・カー・ヘッドコーチは6試合でほぼ同じグループを先発出場させている。ジェームズ、ステフィン・カリー、ドリュー・ホリデー、ジョエル・エンビードと、ウィングは異なる選手を起用してきた。だが、これからはデュラントになりそうだ。

6試合のいずれでも開始5分でのアドバンテージは合計で2点のみ。うまくいっていない。

そして、その理由はかなり明白だ。エンビードが攻守両面で安定して効果的になっていない。セルビア戦の前半は、出場6分で-11点だった。セルビアのヨキッチはFG15本中8本成功で20得点。エンビードのフィジカルで少し消耗させられたのかもしれない。だが、ピック&ロールディフェンスでのエンビードのプレイは問題だ。試合を通じてのプラスマイナスは-8、アメリカの出場10選手で唯一のマイナスだった。

そして、アンソニ-・デイビスがファウルトラブルに陥らないようにしてのことでもない。デイビスは2つ目のファウルの笛を吹かれてから、前半の大半をベンチで過ごすことになった。

デイビスを守ってセカンドユニットを爆発させる考えなら、アメリカはジェームズ、そしてできればデュラントとともに、センターの位置でバム・アデバヨを先発に起用するほうが良い。カーHCとスタッフは、エンビードがNBAでどんな選手か思い出させられるように6試合を待ってきた。どれだけ待つ余裕があるだろうか?

3. ジェイソン・テイタムが消えたことをどう考える?

2021年に金メダルを獲得した際のヒーローだった。2024年のNBAで優勝したボストン・セルティックスのスター選手だ。オリンピック前の強化試合のいくつかで先発出場している。それでも、デュラントがローテーションに戻ると、テイタムはベンチに座ることになった。

テイタムはタイリース・ハリバートンとともに、オリンピック初戦をすべてベンチから見守ることになった。そこにはいくつか正当な理由がある。

テイタムは自分が注目されるひとりである時により機能する。チームの成功のために彼が得点をあげなければならず、だからこそそのために周囲が協力して努力するという時だ。

2021年夏に開催された東京オリンピック2020では、デイミアン・リラードがシューティングタッチを見いだせず、デュラントが周囲の助けを求めていた。そこでアメリカが必要としていたことをもたらしたのがテイタムだ。彼がいなければ、アメリカは金メダルを獲得していなかっただろう。

だが、ブッカー、カリー、デュラントとショットがエリートクラスの選手たち、そして時にそういう選手になるアンソニ-・エドワーズ、ホリデー、ジェームズがいる今回のチームは、テイタムのような選手を中心につくる必要がない。テイタムは長距離ショットに関して信頼度が下がる。強化試合でも3Pを決めていない。スクリーン&ロールの試合とアイソレーションオフェンスを重視するNBAの恩恵で様々な方法で得点できる選手だ。

それでも、テイタムがこのチームに重要な存在になることはまだ考えられる。

ただ、金メダルという目標を目指す上では、そうならないのが最善だろう。

原文:USA Basketball dominates Serbia: Three takeaways as Kevin Durant, LeBron James get Americans off to fast start(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。