サンダーがNBA優勝候補のダークホースになれたのはなぜか?シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのMVP級の活躍以外の要因は?

Stephen Noh

YOKO B

サンダーがNBA優勝候補のダークホースになれたのはなぜか?シェイ・ギルジャス・アレクサンダーのMVP級の活躍以外の要因は? image

オクラホマシティ・サンダーが優勝候補の一角に挙げられることに少しでも疑問があったとしたら、1月2日(日本時間3日)にボストン・セルティックスを127-123で下したことで、その疑問は吹き飛んだはずだ。

確かにたった1試合に過ぎないが、サンダーはシーズンを通してこの調子だ。サンダーはこれまでにミネソタ・ティンバーウルブズとデンバー・ナゲッツとウェスタン・カンファレンスのトップ3の座を争っており、先週はその両チームを破っている。

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『BetMGM』によると、サンダーの優勝する確率は現在9位で、上位8チームとの対戦成績は7勝4敗である。強豪チームに対してはさらに有利で、上位4チームとの対戦成績は4勝1敗だ。

サンダーは若いが、これまでに直面したあらゆる試練を乗り越えている。このチームは今季の正真正銘の優勝候補なのだ。

サンダーはいかにしてNBA優勝候補のダークホースになったのか?

シェイ・ギルジャス・アレクサンダーはMVP候補のトップ3

歴史的に見て、優勝のためにはリーグでトップ5の選手が必要になるが、サンダーにはシェイがいる。今季の彼のスタッツは、1試合平均31.4得点、6.4アシスト、5.7リバウンドとずば抜けている。この数字はNBA史上10回しか達成されたことがない。

彼は1試合平均ドライブ数で再びリーグトップで、ディフェンスがプレッシャーをかけても彼を止めることができない。ディフェンダーは緩急のついた彼の動きを止められず、彼のドライブからの平均得点とフリースローの平均試投数は最も多くなっている。

高い得点力のことは少し置いておこう。もし彼が1試合平均2.6スティール、0.8ブロックというディフェンスのスタッツを維持できれば、マイケル・ジョーダン以来の快挙となる。

ギルジャス・アレクサンダーは、本格的にMVP候補として注目され始めている。『SB Nation』のリッキー・オドネル記者は彼をMVP候補に挙げている。『BetMGM』による確率では、ニコラ・ヨキッチ(ナゲッツ)、ジョエル・エンビード(フィラデルフィア・76ers)に次いで3番目の高さだ。彼は優勝チームのベストプレイヤーになるのに十分な実力を持っている。

チェット・ホルムグレンは歴史的エリートルーキー

Chet Holmgren
(Getty Images)

ルーキーがチームを勝たせられるはずはないのだが、ホルムグレンのような活躍をするルーキーはめったにいない。彼は、Estimated Plus-Minus(推定プラスマイナス)などのさまざまな指標による影響力ですでにリーグでトップ10に入るのだ。

そんなはずはないと思うかもしれないが、ホルムグレンの数字を見てほしい。フィールドゴール成功率54.3%、3ポイントショット成功率40.7%、フリースロー成功率83.2%という彼のシューティングの確率は、NBA史上どのルーキーも一度も記録したことがない

オフェンスの機会が少ないわけでもない。ホルムグレンは1試合平均17.6得点、7.6リバウンド、2.7アシストをマークしている。ディフェンス面ではさらに優れており、1試合平均のブロック数は3位タイである。

ホルムグレンが新人王レースで、驚異的なシーズンを送っているビクター・ウェンバンヤマをリードしているという事実がすべてを物語っているはずだ。NBAシーズンが半分も終わっていないのに、彼はすでに将来のオールスター選手としての地位を固めつつある。

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マーク・デイグノートはリーグで最も過小評価されているコーチ

Mark Daigneault and Shai Gilgeous-Alexander / OKC Thunder
(NBA Entertainment)

オクラホマシティ在住でないNBAファンはデイグノートのことをまったく知らないが、NBA通の人たちは彼の優秀さを認めている。彼はメディア投票による最優秀コーチ賞で次点だった。コーチ協会賞でも、同僚のヘッドコーチたちから最優秀コーチに選ばれている。

デイグノートが優れたコーチである理由はいくつもある。元サンダーでデイグノートの元でプレイしたジョシュ・ヒュースティスが『The Athletic NBA Show』で語ったように、彼の人間関係構築スキルは非常に素晴らしい。

デイグノートをこれまでで最も好きなコーチと呼んだ後、「彼はとても親しみやすくて、いつでも質問に応えてくれた。選手と関係を作るのが上手だったんだ」とヒュースティスは話している。

デイグノートはリーグで最も革新的な戦略家でもある。サンダーはほかのどのチームとも違うオフェンスを展開し、NBAで圧倒的に多いドライブで相手ディフェンスに強烈なストレスを与える。ボールハンドラーとスクリーナーのユニークなコンビネーションを駆使し、ディフェンダーを慣れない違和感のある状況に追い込む。

同様にディフェンスでもサンダーは画期的な考え方を採用している。ホルムグレンという優秀なリムプロテクターが加わる以前でも、彼らのディフェンスが優れていたのは、Xユーザーの『Bowser2Bowser』が詳述しているように、ヘルプローテーションのやり方に関してNBAの常識を破ることを厭わなかったからだ。

デイグノートは試合が中断したあとの戦術に優れている。彼のゲーム終了時のセットはリーグでもトップクラスだ。サンダーはスローインのセットを1つしか行わないが、それは誰も止めることができないほど優れている。

プレイオフ中に修正が必要となったら、彼ほど創造的であることを厭わない、あるいは用意周到な人物はいないだろう。

サンダーのバスケットボールはプレイオフ向き

サンダーのレギュラーシーズンの成功はまやかしではない。サンダーはトランジション・オフェンスに過度に依存するチームではない。それはプレイオフではさらにタフになることもあるのだ。むしろ、『Cleaning the Glass』によると、彼らはリーグ最高のハーフコートオフェンスを展開している。ハーフコートディフェンスも4位だ。

終盤にアイソレーションを使う状況になったら、サンダーほど勝利に匹敵するチームはない。今季、少なくとも25回のアイソレーション・ポゼッションを記録した84選手のうち、ジェイレン・ウィリアムズ、ギルジャス・アレクサンダー、ホルムグレンが、それぞれ3位、4位、6位にランクインしている(ちなみに、ジェームズ・ハーデンとカワイ・レナードが1位と2位にいるということは、ロサンゼルス・クリッパーズも同様に優勝候補として過小評価されていることになる)。

今夏のFIBAワールドカップを観ていない人のために説明しておくと、ギルジャス・アレクサンダーは勝負のかかった場面でクローザーになれることをすでに証明している。彼はこの大会でベストプレイヤーとなり、オールトーナメント・ファーストチームに選ばれ、カナダを3位入賞に導いている。

今のサンダーは最終形にはほど遠い

サンダーがこれほど優秀で、さらに良くなる手段を山ほど持っているということは、リーグのほかのチームにとっては恐ろしいことだ。サンダーは、今後7年間、動かすことができるドラフト1巡目指名権と2巡目指名権を合わせて37個も所有し、ほかのチームが興味を示しそうな若い選手も多く抱えている。

選手のアップグレードを行わなくても、サンダーは今季優勝するのに十分強いチームなのかもしれない。ギルジャス・アレクサンダー、ホルムグレン、ジェイレン・ウィリアムズの3人がシーズンを通して揃って成長し続ける可能性もあるのだ。

ジョシュ・ギディーはセルティックス戦で復活の兆しを見せたが、今季はここまで彼にとっては良い年ではなかった。もしサンダーが彼から何かを引き出せれば、豊富なロスターにもう1人、プレイメイカーが加わることになる。

サンダーはすでに悩みの種であり、これからさらに成長していくだろう。リーグで2番目に若いチームだからといって、彼らが最高のチームの1つであるという事実から目を逸らさないほうがいい。

原文:How Thunder became NBA's dark horse contender: Shai Gilgeous-Alexander's MVP leap not only reason to believe in OKC
翻訳:YOKO B

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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静岡県出身。大学卒業後渡米し、オクラホマ大学大学院修士課程修了。2014年よりオクラホマシティ在住。移住前にNBAのオクラホマシティ・サンダーのファンとなり、ブログで情報発信を始める。現在はフリーランスライターとして主にNBA Japan/The Sporting Newsに寄稿。サンダーを中心に取材するかたわら、英語発音コーチも務める。