去就が注目される2019年NBAオフシーズンの大物フリーエージェント

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ポストシーズンは、フリーエージェント選手の去就に影響を与える。しかし、特定のチームが前年のシーズンに成功を収めたのかどうかも、FA選手が現在の所属先と再契約するのか、それとも退団を選ぶのかに影響を与えることがある。

📺 NBAサマーリーグ2019配信(Rakuten TV / NBA公式視聴サービス)

2019年のNBAファイナル第5戦と第6戦では、今夏の移籍市場で最も注目された3人のうちの2人が負傷してしまった。誰もが世界のベストプレイヤーと認めるケビン・デュラントは、ふくらはぎの負傷から復帰した第5戦でアキレス腱を断裂。クレイ・トンプソンは、第6戦でひざの前十字靭帯を断裂する重傷を負った。

2人の負傷は、ゴールデンステイト・ウォリアーズだけでなく、彼ら以外のFA選手にも影響を与えるだろう。いや、すでに影響を与えているのかもしれない。ロサンゼルス・レイカーズが若手とドラフト指名権をニューオーリンズ・ペリカンズに差し出し、アンソニー・デイビスを獲得するトレードが成立したと報じられた。これにより、26歳のデイビスと、34歳のレブロン・ジェームズが手を組み、このオフに大物FA選手がさらにレイカーズに加わる可能性もある。

例年通り、FA市場とトレードは関連している。まだ成立こそしていないが、デイビスのトレードが、7月1日(日本時間2日)以降のFA選手とチームに何らかの影響を与えるからだ。もし希望していたFA選手の獲得に失敗しても、チームはトレードでキャップスペースを埋められる。

今回は、この夏に去就が注目される選手のリストを作成した。リスト作成にあたり、以前から噂が報じられた選手だけをピックアップしているため、トンプソンは候補から外した。

 

1. カワイ・レナード/ラプターズ(プレイヤーオプション)

残留か退団か不透明だったとはいえ、昨年のトレードはラプターズにとって価値のあるものになった。レナードは、ポストシーズンで平均30.5得点を記録し、球団に初優勝をもたらした。また、レナードをレギュラーシーズン60試合の出場にとどめたロードマネージメントも機能した。レナードを残留させるには、スポーツ科学部門ディレクターのアレックス・マッケニーが鍵を握っている。

新王者のオフのテーマは、現体制の維持。同じくFAになるダニー・グリーン、プレイヤーオプションを保持しているマルク・ガソルもチームに残すべきだ。もしレナードが長期契約を希望しないのであれば、短期の契約を結べば良い。

全てはレナード次第。攻守両面に優れる才能を他チームで発揮したいのなら、ラプターズは方針を変えないといけなくなる。

注目すべき数字:レナードは昨季のポストシーズンで、トゥルーシューティングパーセンテージ(3ポイントショットとフリースローを考慮して算出したスタッツ)69.1%という数字を残した。これは、プレイオフで平均30得点以上を記録し、優勝した選手の中では過去最多の数字だ。

 

2. ケビン・デュラント/ウォリアーズ(プレイヤーオプション)

アキレス腱を断裂したとはいえ、ウォリアーズを含めて彼に可能な限り最高の条件での契約を提示するのを躊躇うチームはいないだろう。これだけの才能の持ち主が揃った今夏のFA市場においても、彼は比類なき存在だ。

これまでは、デュラントが今夏ウォリアーズを退団するという噂で持ちきりだった。退団する可能性は、トンプソンよりも高いかもしれない。しかし『ESPN』によれば、トンプソンの父親であるマイカル・トンプソンが、デュラントとトンプソンが『やり残した仕事』について話していたのを聞いたという。デュラントは、プレイヤーオプションを行使すれば、FAになるのを1年遅らせることが可能だ。ウォリアーズに残ったまま、リハビリを続けられる。

注目すべき数字:昨季のデュラントは、プレイオフ10試合以上に出場した選手としてはNBA史上初の平均30得点超え、フィールドゴール成功率50%超え、3P成功率40%超え、フリースロー成功率90%超えを達成した。

 

3. カイリー・アービング/セルティックス

セルティックスにとって残念なシーズンとなったが、アービングのリーダーシップにも疑問が持たれている。それに、過去の負傷歴も考慮されるべきだろう。

しかし、このリーグでは才能が何よりも重視される。アービングは、最も才能に優れた選手の一人だ。まだ27歳で、必要なときに点を決められる。半年前と比べて、セルティックスと再契約する可能性は限りなく低くなった(特にデイビスがセルティックス以外のチームにトレードされてからは)。現時点では、ブルックリン・ネッツに移籍する可能性が浮上している。

注目すべき数字:昨季のレギュラーシーズン中、アービングは第4クォーターもしくはオーバータイム残り5分、5点差以内の状況で、エフェクティブ・フィールドゴール・パーセンテージ(eFG%=3ポイントショットを加味したFG成功率)56.1%を記録。これは、クラッチ(第4Q残り5分、5点差以内の状況)に50本以上のFG試投数を記録した選手の中でリーグ2位の数字だ。

 

4. ジミー・バトラーとトバイアス・ハリス/76ers

フィラデルフィア・76ersは、イースタン・カンファレンス・セミファイナル第7戦で、ネットを通過するまでに4度もバウンドしたブザービーターにより、優勝したラプターズに敗れた。負けたとはいえ、もう一歩のところまで相手を追い詰めた。だが、FAとなる3選手を含めた先発陣は、レギュラーシーズンとプレイオフを合わせても、100ポゼッションあたり対戦相手を21点も上回った。

76ersは、将来的なドラフト指名権をあまり手放さずにバトラーとハリスの獲得に成功した。バトラーはチーム内の役割を受け入れる上で頑固な面もあるが、ディフェンス、自らショットを打てる能力を考えれば、3選手の中で最も重要な存在だ。

ハリスはラプターズとのカンファレンス・セミファイナルで苦しんだ。JJ・レディックのシュートの方がポストシーズンでは重要だったが、ハリスの代役も簡単には見つからない。万能性の高いハリスの獲得には複数のチームが関心を持つと見られているため、退団する可能性が高い。

注目すべき数字:昨季のレギュラーシーズン中、ハリスはプルアップ3Pの成功率41.3%という数字を残した。これは、同ショットを年間100本以上試投した69選手の中でリーグ2位。

 

5. ケンバ・ウォーカー/ホーネッツ

ウォーカーは、シャーロット・ホーネッツ一筋という気持ちを示してきた。しかし、デイビスのトレードに合意した今、レイカーズのトップターゲットになる可能性があると報じられた。

ウォーカーならば、オフェンス面でジェームズとデイビスに足りない部分を補ってくれる。また、昨季のキャッチ&シュート3Pの成功率は35%以下だったとはいえ、オフ・ザ・ボールのプレイも可能だ。そして、プレイメイクの部分でもジェームズの負担を軽減させられる。ホーネッツは、来季ニコラス・バトゥーム、ビズマック・ビオンボ、マイケル・キッド・ギルクリスト、マービン・ウィリアムズ、コディ・ゼラーとの契約だけで年俸合計が8500万ドル()を超えるため、ウォーカーを中心とするチームのアップグレードは期待できない。

注目すべき数字:ウォーカーは昨季、第4Q残り5分、5点差の状況でリーグ最多となる126本のFGを放った。これは、ホーネッツ全体が同じ状況下で放った295本の43%に当たる。ウォーカーが放ったこれらのショットのeFG%は49.6%で、クラッチに50本以上のFG試投数を記録した45選手の中で15位の数字だ。

 

6. ディアンジェロ・ラッセル/ネッツ(制限付きFA)

昨季を通じて最も成長した年間最優秀躍進選手賞の最終候補に選出されたラッセルは、プレイと精神面でも大きく成長した。オールスターにも選出され、前年よりも14勝も上積みしてチームのプレイオフに貢献。まだ23歳と若く、最も爆発力の高いシューターの一人だ。

しかし、バスケットにアタックせず、フリースローを頻繁にもらいにいかないため、ラッセルは効率的(FG試投数500本以上を記録した94人のガードの中で、トゥルーシューティングパーセンテージ53.3%は66位)でもなければ、安定感にも欠けている。また、76ersとのファーストラウンドでもFG成功率36%と苦しんだ。もしネッツがボールハンドラー(キャリス・ルバートとスペンサー・ディンウィディは契約下にあるため)を探しているのであれば、ラッセルを移籍させた方が良い。

 

7. デマーカス・カズンズ/ウォリアーズ

アキレス腱断裂から復帰するも、まだ100%の状態には戻っていなかった。その上、プレイオフ2試合目で大腿四頭筋を断裂。ファイナルで復帰し、第5戦では14得点、第6戦でも終盤に得点で貢献したが、攻守両面で苦しんだ印象が残っている。また、ウォリアーズは、カズンズが出場したプレイオフ8試合中6試合で敗れた。再びFAとなるカズンズだが、チームに何をもたらしてくれるのか分からない状況だ。

23歳のケボン・ルーニーは、制限付きFAになる。昨季のウォリアーズにとっては、彼こそ最も重要なセンターだった。ウォリアーズは、ルーニーに対してラリー・バード例外条項を行使できるが、デュラントとトンプソンとの再契約に高額を投じる可能性がある(そしてドレイモンド・グリーンとの延長契約の可能性も)。ウォリアーズよりも大きな役割と、好条件を提示するチームが現れるかもしれない。

注目すべき数字:昨季のレギュラーシーズンでは、ステフィン・カリー、トンプソン、デュラント、グリーン、ルーニーのラインナップは、100ポゼッションあたり121.5得点を記録し、対戦相手を18.7点も上回った。これは、200分以上プレイした40のラインナップ中、100ポゼッションでの得点と得失点差でリーグベストだった。

 

8. マルコム・ブログドン/バックス(制限付きFA)

ミルウォーキー・バックスは、イースタン・カンファレンス・ファイナルの第2戦まではリーグベストのチームだった。しかし、チーム内のトップ8の4人がFA(またはFAになる可能性がある)になるため、ヤニス・アデトクンボの脇を固める攻守に優れる選手をキープするには、やるべきことは多い。

その中でもブログドン、クリス・ミドルトン、ブルック・ロペスは重要な3選手で、年俸アップは当然だ。ブログドンは制限付きFAだが、3選手の中でも一番若い(今年の12月で27歳)。他チームから、より重要な役割と共にオファーが届く可能性もある。

注目すべき数字:ブログドンは、昨季100本以上キャッチ&シュート3Pを放った223選手中3位の成功率(47.5%)を記録。

 

9. ジュリアス・ランドル/ペリカンズ(プレイヤーオプション)

キャリア5年目を終えて、まだ24歳。そう考えれば、デイビッド・グリフィンGMのプランにフィットしないと言えなくもないが、今のペリカンズは、もしランドルがプレイヤーオプションを破棄してFAになった場合、昨季はキャリアハイとなる平均21.4得点を記録した彼が希望する金額を支払う準備を整えていないかもしれない。ディフェンスに関しては難が残るものの、昨季は3P成功率34.4%を記録した。放ったショットの18%が3Pで、成功率は前年までの3シーズンと比べて6%アップした。

注目すべき数字:昨季はペイント内での得点でリーグ7位となる平均13.2得点を記録。同カテゴリーでランドルよりも上の6選手より3P成功数(67)は多かった。

 

10. リッキー・ルビオ/ジャズ

ルビオ本人曰く、彼はユタ・ジャズが最優先する選手ではないそうだ。優れたディフェンダーで、リーグでもベストパサーの一人だが、ジャズが次のステップに進むためにはルビオよりオフェンスで貢献できる選手が必要だ。年間200本以上の3Pを放った163選手中、ルビオの成功率(31.1%)は153位だった。このオフには、パスをさばけるタイプの先発PGを必要としているチームが最大で10チーム(ジャズ以外で)現れる可能性がある。

注目すべき数字:昨季のジャズは、ドノバン・ミッチェルだけが出場した場合と、ルビオとミッチェルが揃って出場した場合と比べて、後者の方が100ポゼッションあたり平均5.8得点多かった(100ポゼッションあたり平均110.4得点。ミッチェルだけの場合は104.6得点)。

原文:Ten most intriguing free agents by John Schuhmann/NBA.com(抄訳)


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ