【チーム分析】開幕から快進撃を続けるユタ・ジャズの強さの秘訣

大西玲央 Reo Onishi

【チーム分析】開幕から快進撃を続けるユタ・ジャズの強さの秘訣 image

ユタ・ジャズの快進撃が止まらない。

現在ジャズは10勝3敗でウェスタン・カンファレンス1位、リーグ全体で見ても10勝1敗のミルウォーキー・バックスに次ぐ2位という好成績だ。

オフシーズンには、これまでチームの主軸だったドノバン・ミッチェルとルディ・ゴベアをトレードで放出。NBAドラフト2023の目玉選手であるビクター・ウェンバンヤマを狙う、いわゆる「タンクチーム」になるだろうと開幕前に予想する人も多かっただけに、今季最大のサプライズチームとなっている。

今回は、どういった要素がジャズの快進撃を生み出しているのかを分析してみよう。

絶好調 ラウリ・マルカネン

まず特筆すべきなのが、ミッチェルとのトレードでクリーブランド・キャバリアーズから移籍してきたラウリ・マルカネンのプレイだ。ユーロバスケットでフィンランド代表として大活躍を見せたマルカネンは、その勢いをそのままNBAシーズンにも持ち込むことに成功。

今季はここまで、13試合で平均22.7得点(キャリア最多)、8.8リバウンド、2.5アシスト(キャリア最多)、フィールドゴール成功率52.7%(キャリア最高)を記録しており、キャリア6年目にしてベストシーズンを送っている。

キャリア2年目にシカゴ・ブルズで平均18.7得点、9.0リバウンドを記録して以来、プレイエリアが全体的に外郭寄りになっていったこともあり、彼の数字は徐々に下落していた。しかし、ジャズでは再びインサイドでプレイする機会が増えている。3ポイント試投数は例年とあまり変わらないが、リム周りでのプレイが格段に増えており、それが効率の高いオフェンスを生み出している。

バランスの取れたオフェンス

オフェンスで活躍しているのはマルカネンだけではない。ジャズの強みは、誰が出ていても得点ができるところにある。現在、ジャズはマルカネンに加えてジョーダン・クラークソン(平均18.6得点)、コリン・セクストン(平均13.7得点)、ケリー・オリニク(平均12.3得点)、マイク・コンリー(平均12.1得点)、マリーク・ビーズリー(平均11.5得点)と、6選手が平均二桁得点を記録している。

そしてその6人全てが平均1本以上の3P成功を記録しており、マルカネンを除いた5人は成功率38%以上という高確率が決めているのだ。特にオリニクに至っては、平均2.8本試投に対して1.2本成功の、成功率56.8%を記録している。

さらにアシストが多いのもジャズの特徴だ。マイク・コンリーはキャリア16シーズン目にして、今季の平均8.0アシストは自己最多だ。そして今季は2015-16シーズン以来となる先発メンバーとしてプレイが続くジョーダン・クラークソンも、自己最多となる平均5.2アシストを記録しており、得点だけではなくプレイメイクもできるのだということを証明している。

当初は、オフシーズンの2つの大型トレードで出来上がった寄せ集めチームかと思われていたが、実際のところは層の厚いチームとして上手く機能しているのだ。

高いオフェンシブリバウンド率

ジャズのオフェンシブリバウンド率(試合中に獲得可能なオフェンシブリバウンドで実際に獲得した割合)は32.1%で現在リーグ6位だ。「もっと上がいるじゃないか」と感じる位置かもしれないが、エフェクティブフィールゴール成功率(eFG%|3P成功数を1.5倍にして計算する、3Pの効率を考慮したFG成功率)と照らし合わせてみると、この数値が突出しているのがわかる。

以下は、今季のeFG%の上位10チームと、それぞれのオフェンシブリバウンド率を表にしたものだ。

順位 チーム eFG% OREB%
1 DEN 57.6% 27.9%
2 BOS 57.5% 22.9%
3 SAC 56.0% 22.7%
4 CLE 55.9% 29.5%
5 GSW 55.7% 27.2%
6 UTA 55.5% 32.1%
7 DAL 54.5% 26.5%
8 BKN 54.4% 25.0%
9 SAS 54.4% 28.6%
10 LAC 54.3% 21.1%

ジャズ以外のチームはどこも20%台であることがわかる。要するにジャズは、高い確率でショットを決めてくる上に、高い確率でオフェンシブリバウンドを奪いにくるチームなのだ。対戦相手よりも攻める機会が増えることとなり、それがリーグトップの平均118.8得点に繋がっている。


高い3P成功率など、今後も本当に持続できるものなのかなど、懸念点は多くあるものの、バランスの取れたオフェンスやオフェンシブリバウンドへの積極性などは意識して継続できるものだ。

シーズン前にはバスケットボール運営部のダニー・エインジCEOでさえもが「ロスター構築には時間がかかるでしょう」と話していたわけだが、このサプライズスタートに対して今後チームがどういったスタンスを取っていくのかも注目される。

▶スポーツ観るならDAZNで。スマホやTVでスポーツをいつでも楽しもう

大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。