アイザイア・トーマス インタビュー「必要なのは試合でやるプレイを練習すること」(青木崇)

青木崇 Takashi Aoki

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開幕直後はシックスマンだったボストン・セルティックスのアイザイア・トーマスは、その後先発PGに定着すると、チームのオフェンスで最も頼れる存在になった。身長175cmという小柄なサイズながら大男たち相手に得点を奪い、ハートの強さを象徴する姿は、多くのファンを魅了している。

5年目の2015-16シーズンに記録した平均22.2点、6.2アシストはいずれも自己最高で、オールスターにも選出されるなど大きな飛躍を遂げた。プレイオフは1回戦でアトランタ・ホークスに敗れたといえ、シリーズ平均24.2点とスコアリングガードとしての本領を十分に発揮した。ゲストとして参加したNIKE ALL-ASIA CAMP開催中に行なわれたインタビューでは、自身の経験を話すだけでなく、バスケットボールをやっている子どもたちへのアドバイスとなる貴重な言葉を残してくれた。


――昨シーズンを振り返ってどうでしたか?

一つ言えることは、僕らはハードにプレイしたということ。他のチームと比べると、才能では劣っていたかもしれないけれど、相手よりもハードに戦うことによって、試合に勝つことができていた。

――チームでの役割は?

点を取ることだ。シーズンを通してチームの得点王だった。プレイオフのホークス戦(第1戦)でエイブリー・ブラッドリーがケガしてからは、全力を尽くしてどんな形でも点を取りにいこうとしていたけど、勝つことができなかった。でも、今はそれが新しいモチベーションになっている。

――だからダブルチーム、トリプルチームに対しても点を取っていたのですね。

そうだ。それが僕のスタイルだ。

――ヘッドコーチ(ブラッド・スティーブンズ)から学んだ一番大きなことは何ですか?

自分自身でいること。チームでの役割がなんであろうとも、それに対してベストを尽くすこと。それがチームを助ける。コーチは選手を信頼しているし、自分自身であることを選手に対して望んでいる。それがチームの目標達成に必要なことだった。

――今回のキャンプの印象を教えてください。

才能がある。頑張る。文句を言わない。これらは彼らの一番のいいところ。アメリカ人だったら体育館が熱いだけで文句を言うけど、彼らは文句を言わない。その中で一生懸命プレイしている。休憩時間も少ないが、黙々と取り組めることは素晴らしいスキルだと思う。

――反対に彼らに必要なことは何ですか?

そこまで見てないからわからないけれど、IQは高いと思うし、ゲームを理解してプレイできているから、それを継続してハードに練習を積み重ねれば、NBA選手にもなれるかもしれない。

――正しい食生活というのは、NBA選手にとって大切だと思いますが、実際どう考えていますか?

とても大切だと思う。この夏から初めて食生活を改め、ファストフードやお菓子を食べるのをやめた。それがコートでのパフォーマンスに繋がると信じている。(正しい食生活によって)より長いキャリアを持つことができると思う。この夏までは本当に食生活がひどかった。お菓子も食べ放題。この夏から身体を考えて行動している。

――今のところ、変化がみられましたか?

まだ、実際にプレイはしていないのでわからないけれど、体調はとても良いと感じている。8~9月になったらもっと実感できると思う。

――今までにこのようなキャンプに参加したことがあると思いますが、どのような意識で臨んでいましたか?

キャンプのベストプレイヤーになりたかった。キャンプが終わったときに、「あいつは特別だ」と言われるような選手になりたかった。周りと同じレベルでプレイができるというよりも、頭抜けた存在でいたかったね。

――昔学んできたことでNBAでも通用していることは?

間違いなく結果がついてきているし、学んできたことは今でも通用している。このキャンプにいるコーチは、僕が小さい頃に学んだ人たちと同じだし、アメリカと同じことを教えていて、それは今でも僕の中で生かされている。

――今朝もディー・ブラウン(セルティックスなどで活躍したPG)と一緒に練習をしていましたね。

このキャンプにはトップコーチが来ている。彼らが言っていることや実践していることは説得力がある。ブラウンは僕がサクラメント・キングスに在籍していたときのアシスタントコーチで、彼のドリルはタフだけれど、確実に選手として成長させてくれる。

――ほかにも素晴らしい小柄な選手はいますが、自分がNBAで成功している理由は? 他の選手との違いは?

“Killer’s Mentality”(殺し屋のようなメンタリティ)だ。どんなタフな状況でも引き下がるつもりはなかったし、常に僕が世界一の選手だと思っている。常に意識をセットしているし、その意識が僕をここまで連れてきてくれた。

――そのメンタリティは身につけたものですか?

生まれたときから持っている。僕を疑う人たちを証明したかったし、そのために何時間もジム(体育館)で過ごしていた。

――日本の子どもたちは、あなたのプレイで勇気づけられている。日本にも小さな選手が多いですが、どうしたらあなたのように点が取れるのでしょうか?

まずは最低限のスキルは必要。あとは一生懸命練習するしかない。みんなが試合で見ている僕のプレイは、しっかりと練習をしてきた結果。いつも練習で時間を費やしているから、試合では楽にプレイできる。子どもたちに必要な練習っていうのは、試合でやるプレイを練習すること。試合でやらないプレイは練習をする意味がない。

――あなたにとって最もタフなディフェンダーは誰ですか?

だいたい大きな選手が僕についてくるのだけど、トニー・アレン(メンフィス・グリズリーズ)は良いディフェンダーだと思う。チームメイトだけど、エイブリー・ブラッドリーはNBA内でも屈指のディフェンダーだと思う。だけど、誰も僕を止められないと思っているよ。

――最後に、日本のファンへのメッセージをお願いします。

常にバスケットボールを楽しむこと。そして、一生懸命練習を頑張り、自信を持つことだ。自分を信じて、チャンスをものにしてほしい。チャンスを逃したらほかの人のところへ行ってしまう。そのチャンスを生かしてほしいね。

取材日:6月8日
取材協力:NIKE ALL-ASIA CAMP
写真提供:NIKE JAPAN

文:青木崇 Twitter: @gobluetree629

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バスケットボールライター