パデュー大のザック・イディーがスポーティングニュース年間最優秀大学バスケ選手に2度目の選出

Mike DeCourcy

石山修二 Shuji Ishiyama

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オスカー・ロバートソン(シンシナティ大〜ミルウォーキー・バックスほか)、ジェリー・ルーカス(オハイオ州立大〜シンシナティ・ロイヤルズほか)、カリーム・アブドゥル・ジャバー(UCLA〜LAレイカーズほか)、ビル・ウォルトン(UCLA〜ボストン・セルティックスほか)、ラルフ・サンプソン(バージニア大〜ヒューストン・ロケッツほか)ーー。

ここに並ぶ5人の名前は、大学バスケットボールの歴史そのものと言える。しかし、そのリストは1983年で終わりを告げたわけではなかった。もちろん、カレッジ・バスケットボールもだ。幸いにも2024年の今、私たちにはザック・イディーがいる。

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1983年にラルフ・サンプソンが数ある大学バスケの年間最優秀選手賞を2年連続で独占してからというもの、すでに40年以上の月日が経っている。その間、大学バスケを取り巻く環境は大きな変化を遂げてきた。

例えば、大学卒業前の選手のドラフトへのアーリーエントリーを認めさせたスペンサー・ヘイウッドとNBAの一連の訴訟であったり、大学1年生の選手資格の再導入、有望選手が即戦力としてプロ入りすることの金銭的な動機をなくすルーキー・サラリーキャップの導入、大学でプレイし続けることが経済的な選択肢として考えられるようになったNIL契約(大学の選手がその氏名・画像・肖像権に対して報酬を得られるようになった契約、2021年に導入)などの変化だ。

こうした変化の全てが、パデュー大ボイラーメイカーズの選手として4年間のうち2年連続でスポーティングニュース年間最優秀選手を受賞した現在のイディーを作り上げたと言える。

ザック・イディーはどんな選手?

ネイスミス大学最優秀選手賞(アトランタ・ティップオフ・クラブ選出の年間最優秀選手賞)やオスカー・ロバートソン賞(米国バスケットボールライター協会選出の年間最優秀選手賞)など、いくつかの年間最優秀選手賞が発表されるのは来月になる。それまでは、イディーが年間最優秀選手賞を独占する6人目の選手とは言えないが、そうなることはまず間違いないだろう。そして、ロバートソン、ルーカス、アブドゥル・ジャバー、ウォルトン、サンプソンというレジェンドたちのリストに、イディーが続くことになる。

正直に言おう。もし、我々がこんなリストに名を連ねることになったら、十分に達成感を味わって、もうベッドから出るのもやめてしまうに違いない。

これ以上、何ができる?

もちろん、もっと上手くなれる。

ザック・イディーはそうし続けてきた

(Getty Images)

「思い出されるのは、彼がここまで常に頑張ってきたということです」と、ボイラーメイカーズのコーチ、マット・ペインターは、イディーの背番号がマッキー・アリーナに掲げられたシニアデー(最後のレギュラーシーズンのホームゲーム)の際に、記者たちに語ってみせた。

「選手たちの昔の映像、パデューで最初の得点を挙げたシーンを見ました。ザック・イディーはまるで別人でした。髪型も、体つきも、同一人物とは思えませんでした。もちろん、2メートル24センチはありましたが」

「何より印象的だったのは彼の闘争心です。体の大きい選手は、時にひどく不相応な判定を受けることがあります。そんなことが2度も続けば、あっという間にファウルトラブルです。ビッグマンがそんな状況に追い込まれるのを何度となく見てきました。その結果、プレイが消極的になってしまいます。仕方ないことです。ゲームに出続けたいと思うからこそ、リスクを犯さない、消極的なプレイになるものなんです。でも彼は違っていました」

「もともと彼は積極的にリクルートされてこの学校に来た選手ではありません。自分を特別な選手だとは思っていません。だから無欲になれるんです。その姿勢が一番現れているのがパスですね。最初にここへ来たときはひどいパサーでした。今は素晴らしいパサーに成長しました。でも、最初から変わってないのは彼が積極的にパスをする選手だということ。スコアする能力とパスする能力を兼ね備えた選手がいたら、チームにとってこれ以上の武器はありません」

驚異的なスタッツの中で埋もれがちだが、イディーは31試合で61のアシストを記録している。これはサンプソンが2シーズンで記録したアシスト数とほぼ同じ。非常に細かな、目に付きにくい部分だが、イディーの大学4年間での成長の証といえるだろう。

より分かりやすい成長の跡は、入学時には強力にリクルートされたわけではなかったビッグマンが、4年の間に大学バスケのレジェンドに上り詰めたことだろう。イディーの登場で、リック・マウントや『ビッグドッグ』ことグレン・ロビンソンといった名選手を輩出してきたパデュー大で、史上最高の選手は誰かという議論はさらに白熱することになった。

マウントはキャリアを通じて1試合平均32.3得点を挙げ、1969年にパデュー大をNCAAチャンピオンシップゲームに導いた。パデュー大から車で40分のインディアナ州レバノン出身というのもマウントを支持する上では大きなアドバンテージだ。

一方、ビッグドッグには皆に愛されたこのニックネームがあり、しかもパデュー大から車で90分のギャリー出身、なによりUCLAの黄金期が終わりを告げた1993-1994年シーズン、彼は他を圧倒するプレイを見せていた。

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436番目の評価から頂点へ

イディーと彼ら2人、さらには2度の最優秀選手賞に輝いた5人の殿堂入り選手たちとの違いと言えば、だれもがみな高校時代からスーパースターで、有力選手としてリクルートされて大学に入って来たことだろう。最初から大学でもオールアメリカンに選出されると期待されていた選手たちで、その期待を上回る活躍を見せたと言える。

一方、高校以前のイディーは、身長の高い選手がプレイするスポーツを避け、野球やホッケーに熱中していた。だが最終的に、自分の能力を最大限に活かせるのはバスケットボールだと考え、高校2年の時にバスケチームに参加した。真剣にバスケに取り組むようになるとフロリダにあるIMGアカデミーに入り、より実践的なトレーニングに取り組むようになった。それでも、224cm 、100kgのサイズを持ちながら、イディーは2020年卒の有力な高校生選手の中では436番目、センターに限っても75番目という低い評価でしかなかった。

しかしながら、イディーは1年目から1試合15分のプレイ時間で平均8.7点をマークし、この低評価を覆してみせた。2年生時には4年生だったトレビオン・ウィリアムズ(元ゴールデンステイト・ウォリアーズ)とプレイ時間を分け合いつつ、1試合19分の出場で平均14.4点を挙げた。そして3年生になると1試合平均22.3得点、12.9アシストと一躍ブレイク。その活躍もあって、パデュー大はビッグ10チャンピオンシップ とNCAAトーナメントの第1シードの両方を手に入れた。イディーのプレイは年々良くなるばかりだった。

これ以上のパフォーマンスは考えづらいものだったが、翌年のイディーはリバウンド以外のスタッツで自己ベストを更新してみせた。得点は1試合平均24.2点でディビジョン1のトップタイ、リバウンドは平均11.7個で3位だった。大学バスケのスタッツ/レーティングサイト「KenPom.com」によれば、イディーのオフェンシブレーティングは129.8、過去20年間で2番目に高い評価だった。このサイトが年間最優秀選手を選び出す公式によると、イディーのスコアは次点だったオーバーン大のビッグマン、ジョニー・ブルームより55%も高いものだった。

この驚異的なシーズンの途中に、ESPNのドラフト解説者ジョナサン・ギボニーが「イディーは2024年NBAドラフトロッタリー指名(1~14位)の中で指名されるだろう」というリポートをして周囲を驚かせた。今月初め時点での最新版の予想でも、ギボニーはイディーを有力選手トップ15のうちの1人に挙げている。1年前には、イディーのオールドスクールなプレイスタイルと体つきは、現代のNBAでは評価されないと考えられていた。だが、運動能力の面で多少の向上が見られたことで、プロバスケットボール選手としての将来性にも変化が生まれてきた。

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だが、それはまだ先の話だ。2年連続でランキングのトップに位置し、第1シードとしてビッグテン・トーナメントに臨むパデュー大のメンバーとして、イディーは今、自身初そしてパデュー大にとって1980年以来となるファイナル4(NCAAトーナメントのベスト4)進出に意欲を燃やしている。今季のボイラーメイカーズは28勝3敗、NCAAのNETランキングでTOP15に入るチームのうち5つから勝利を奪い、ビッグテン・トーナメントに挑む。ちなみに、昨季の王者コネティカット大、NETランキングトップのヒューストン大がTOP15から奪った勝利は3つだ。

今イディーが成し遂げようとしていることをサンプソンが達成したときと比べると、優れた4年生選手というのはレアな存在になってしまった。過去15年間に選ばれた75人のコンセンサス・オールアメリカン(スポーティングニュース、全米記者協会、AP通信、コーチ協会の全てでオールアメリカンに選ばれた選手)のうち4年生は26人にすぎない。ファーストチームに連続で選出された選手で言えば、タイラー・ハンズブロー(ノースカロライナ大)、ダグ・マクダーモット(クレイトン大、現インディアナ・ペイサーズ)、ルカ・ガルザ(アイオワ大、現ミネソタティンバーウルブズ)の3人しかいない。

また、イディーはバスケットボールに攻守両面で変化をもたらしてきた。多くの人にとって、特に対戦相手のファンからすると、イディーがレーン上の選手たちをすり抜け、いとも簡単にダンクを決めている、イディーにとっては簡単なことだと考えがちだ。だが、ここに至るまでに何年もの間、イディーはオフシーズンに過酷な練習を続け、ファウルで止めるしかない(ファウルを取られなければなおよし)と思う小さいな選手たちをかいくぐってきた。

「彼は存在感を発揮してくれる選手です」とペインターは言う。

「常に試合に関われる選手です。驚くほどです。試合をしていると『今日のこの選手はダメだな』ということがよくあります。どんなときでも、常に存在感を発揮して、戦わなくては話になりません。そうでしょう? イディーは試合中に消えてしまうようなことは一度もありません。常に存在感を発揮してくれるんです。もちろん彼にだって良くないゲームはあります。ターンオーバーしたことも、ひどいプレーをしたことだってあります。でも、彼が戦わなかったことは一度たりともりません。それが重要なことなんです」

それが大学バスケ史上に名を残す偉大な選手たちと並び称されることと同じくらいとてつもないことかと言えば、そんなことはないだろう。だが、5人のレジェントたちは、自分たちがザック・イディーと並び称される存在となったことを誇りに思うべきだ。

※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。翻訳・編集: 石山修二(スポーティングニュース日本版)

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Mike DeCourcy has been the college basketball columnist at The Sporting News since 1995. Starting with newspapers in Pittsburgh, Memphis and Cincinnati, he has written about the game for 35 years and covered 32 Final Fours. He is a member of the United States Basketball Writers Hall of Fame and is a studio analyst at the Big Ten Network and NCAA Tournament Bracket analyst for Fox Sports. He also writes frequently for TSN about soccer and the NFL. Mike was born in Pittsburgh, raised there during the City of Champions decade and graduated from Point Park University.

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スポーティングニュース日本版アシスタントエディター