日本バスケットボール界の顔として、八村塁のNBAでの旅路が始まる

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UNLVのキャンパスにある体育館で、八村塁は珍しく休憩の時間を過ごしていた。金曜日の練習はメディア非公開で、ほとんどのチームはすでにバスの時間に間に合わせるためにその場を去っていた。2019年のNBAサマーリーグで最も興味をそそる選手のひとりとなった21歳の八村が、この1か月を振り返った。

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6月20日(日本時間21日)にワシントン・ウィザーズに指名されて以来、コート内外で八村ほど忙しかった選手はあまりいないだろう。まずドラフト当日、ウィザーズの選手として初めての記者会見で大勢の日本人メディア関係者に囲まれた。当日の熱狂が会見後も続いているさまは、これからの八村塁の人生を物語るかのようだった。

ドラフト翌日の6月21日(同22日)、八村は移動先のワシントンDCで入団記者会見を行なった。週末をワシントンDCで過ごし、再び西へと移動し、そこで数日過ごした後、6月25日(同26日)にチームのミニキャンプに合流。ウィザーズの練習は27日(同28日)までワシントンDCで行なわれ、その後サマーリーグのためにラスベガスで再招集された。正式にラスベガスでの練習が再開したのは7月2日(同3日)だったが、その時点で八村を含めた多くの選手はすでにラスベガス入りをしていた。

体育館での時間に加え、八村はサマーリーグに参加している選手のなかで最もメディアの取り巻きが多い選手だった。NBAドラフトにて日本人選手として初めて1巡目で指名された選手という肩書きを持った八村の一挙一動に、日本全国が注目していた。日本は単純にこれほどのバスケットボール選手が存在したことがなく、八村は現在世界で最も有名な日本人のひとりとなったのだ。

ワシントンDCからラスベガスに移動したメディア陣に加え、60人以上の日本人メディア関係者がサマーリーグの取材申請を出していた。その注目度の高さから、八村はメディア対応を英語と日本語のどちらでも行ない、それに加えて独占インタビューやほかの義務もこなした。

幸いにも、自由時間が奪われるほど注目されることに彼はすでに慣れていた。彼の名前は日本の多くの新聞の一面を飾り、毎日テレビニュースに取り上げられ、日本中は八村塁が誰なのかを知っている状態だ。注目されることによって、彼は実年齢以上の忍耐強さと成熟さを身につけており、コート内外で常に落ち着きのある態度を保つことができている。

「高校の頃からこんな感じです」と八村は説明した。

「予想していました。日本でどれだけ凄いことになっているのかは想像もつきません。僕自身、家族、そして国のためにもとても重要なことです。1巡目で指名され、NBA入りできるのは本当におおごとなのです」。

7月11日(同12日)のアトランタ・ホークス戦で八村が25得点、9リバウンドを記録した際に、日本がどれだけ大騒ぎになっていたのかは想像するしかないが、ワシントンにいる彼の新しいファン層も、その内容に満足していた。

この試合で、八村は12本中9本のフィールドゴールを決め、2ブロックも記録。ウィザーズが彼を高く評価していたオールラウンドなスタイルを見せてくれる内容だったのだ。プルアップからの3ポイントショットを決め、ピック&ロールから得点を量産し、自陣のゴールを守り、インサイドではホークスを圧倒した。

「文字通り、自分はなんでもできます」と八村はホークスへの勝利後に自信をのぞかせた。

「相手がどう守ろうと関係ありません。3ポイントも打てるし、ピック&ロールもできるし、ポップもできます。ディフェンスも同様です。1番(ポイントガード)から5番(センター)まで守れます」。

サマーリーグを通じて、八村は平均19.3得点、7.0リバウンド、1.7ブロック、フィールドゴール成功率50.0%を記録した。7月15日(同16日)にはメディア関係者が選ぶオールMGM Resorts NBAサマーリーグ・セカンドチームに選出された。

ウィザーズのサマーリーグコーチであるロバート・パックは「彼はとても良い週を送ったと思う」と八村について語っている。

「ここでの1週間だけでなく、(ミニ)キャンプの開始から彼はとても集中していて、初日からこのベガスまで常に進歩していた。途轍もない競争心と落ち着きを持ち込んでくれた。ここからもっと良くなっていく。サマーリーグでは様々な状況からいろいろなショットを打つことができたので、トレーニングキャンプに向けて良い準備になったはずだ」。

「あれだけの知名度がありながらも、コート上で彼はひとりで全部やろうという意識ではなかった。しっかりとチームのためにプレイしてくれたのが、彼の性格の良さの現れだ」。

ウィザーズのスコット・ブルックスHC(ヘッドコーチ)は7、月6日(同7日)の『ESPN』の放送で「彼の態度は素晴らしい」と称賛している。

「彼が良いプレイをしたのか、悪いプレイをしたのか気付かないレベルで、常に同じ態度でプレイしている。彼がバスケットボールに対する情熱がとても高いことを私はとても気に入っている。バスケットボール選手としてIQもとても高い。チームというものを理解しているんだ。これまで素晴らしいプログラムを経験してきた証拠だ。チームメイトとの関わり方も素晴らしい」。

サマーリーグというレベルではあったものの、八村は自分の出場した3試合の動画を見ることを楽しみにしている。ラスベガスにいたコーチの人数が多かったことが助けになったと彼は話しており、大学のスペーシングとペースの違いを経験することができた。ゴンザガ大学出身の八村は、最初の2試合で多くを学び、日々成長していることを強調した。

ジョン・ウォール、ブラッドリー・ビール、ジョーダン・マクレイといったチームメイトとなる選手が観戦に来ていたことも、八村にとってこれからの日々が楽しみになる要因となった。特にトロイ・ブラウンJr.とはすぐに親しくなり、一緒にプレイするだけでなくコート外でも時間を共にした。

「数試合プレイをしました」と八村は話す。

「まだNBAのゲームに慣れようとしている段階で、わからないこともたくさんあるので、コーチや選手たちにもいろいろと聞いています。とにかくチームを勝たせることに貢献したいのです。自分が何位で指名されたかは関係ありません。チームにとって必要なことをやりたい。少しずつでも毎日成長して、チームの助けにならなければいけません」。

サマーリーグが終わった今、八村は人生の次の章に進むための準備期間が1か月ほどある。次の章は、国際的なハブ都市でもあるアメリカ合衆国の首都で始まるのだ。

夏の後半に、八村は日本代表と合流するために帰国し、2019年のFIBAワールドカップに出場する予定だ。さらに日本は2020年には東京で夏季オリンピックが行なわれ、八村は間違いなくその顔のひとりとなるはずだ。

ここからは、このクレイジーさは高まるばかりで、特に秋に正式にNBA公式戦デビューを果たしてからは常に多くの目の監視下に置かれることとなる。八村を見るために、全米(とトロント)に多くの日本人がウィザーズの行く先々に押しかけることが想像できる。

「なかなかクレイジーですね」と彼は述べた。

「ドラフトされてから、いやその前からですね、全てが変わりました。外を歩いていると気付かれることが増えました。メディアも増えました。でもとにかく、ウィザーズのような素晴らしいチームに入団できたことが嬉しいです」。

原文: Rui Hachimura begins NBA journey as the face of Japanese basketball by Zach Rosen/Wizards.com
翻訳:大西玲央 @ReoOnishi 


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ