ロケッツは対ウォリアーズで一歩後退か

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2017年、ヒューストン・ロケッツのダリル・モーリーGMは『SiriusXM NBA Radio』に出演した際、こう語った。

「(ゴールデンステイト・ウォリアーズを)倒すには3ポイントショットで上回るしかない」。

こうしたコメントは異例だった。ウォリアーズ戦におけるロケッツの戦略を明らかにしたようなもので、情報が重視されるプロスポーツではあまりないケースだった。

また、打ち勝つしかないということを露呈したのも稀だ。ロケッツは、ステフィン・カリーやケビン・デュラントらを擁するウォリアーズに、個々の能力だけで対抗することはできないと分かっていたのだ。

昨年のオフシーズンにクリス・ポール、PJ・タッカー、ルーク・バー・ア・ムーテを加えたロケッツには変化が見られた。『Cleaning the Glass』の調べ通り、昨季の3P試投率はNBA最多の46.7%で、彼らが3Pを多く放つチームという特徴は変わらない。だが、他チームと同様、ウォリアーズの攻撃を封じられる守備的な選手を加え、2016-17シーズンは標準レベルだった守備が、昨季は100ポゼッションあたりの平均失点が同6位にまで改善された。

プレイオフでは、鋭い3Pと堅い守りを駆使してウォリアーズとのウェスタン・カンファレンス・ファイナルに臨み、第5戦を終えた時点で3勝2敗と王手をかけた。だが、同試合でポールが負傷したことで流れが変わり、3勝3敗で迎えた第7戦では得意の3Pを27本連続して外してしまい、敗れた。

僅差での敗北を経験した迎えた2018年の夏は、ロケッツにとって大事な時期になった。ポール、バー・ア・ムーテ、トレバー・アリーザがフリーエージェントになり、クリント・カペラも制限つきFAになったからだ。

まずはポールが4年総額1億6000万ドル(約176億3000万円)のマックス契約で再契約を結んだ。今年の5月に33歳になった年齢を考えれば、新契約の最後の数シーズンは高くつくかもしれない。だが、ロケッツが優勝を目指すには必要な決断だった。

カペラの去就問題は長引いた。だが、ダラス・マーベリックスがディアンドレ・ジョーダンの獲得を決めたことで、カペラの選択肢は限られた。24歳のカペラにとって、ロケッツとの再契約が理想的だったのは間違いなく、7月末に結んだ5年総額9000万ドル(約99億2000万円)の契約は、球団にとってボーナスのようなものだった

ポールとカペラとの再契約は、優勝の可能性を繋ぎとめるための最低限の動きだった。アリーザはフェニックス・サンズと、バー・ア・ムーテはロサンゼルス・クリッパーズとそれぞれ1年契約を結んで退団した。仮に両選手と再契約していたら、高額のラグジュアリータックスを支払うことになっていただろう。ただ、資金を投じるタイミングは、今だったのではないだろうか。

ロケッツは、退団した2選手の代役としてジェームズ・エニス三世と契約。ジャーニーマンのエニスは、アリーザと同様に3Pを得意とする選手だが、試投数の差はかなりある。ロケッツではスポットアップでのショットを打つことが求められる上に、アリーザと同等の守備力を持っているとは思えない。

もう一人の新戦力は、意外な選手だった。最後の一手は、カーメロ・アンソニーを1年240万ドル(約2億6000円万)で獲得したことだった。

たいていの場合なら、アンソニーの獲得が問題になることは少ない。金額も格安で済んだ。しかしロケッツへの移籍となると話は変わってくる。彼らはウォリアーズを追い詰めたチームであり、獲得する選手の実力を十分に考えて判断すべき状況にあるチームなのだ。アンソニーの獲得には、厳しい目が向くだろう。

オクラホマシティ・サンダーでプレイした昨季が、アンソニーのキャリアで最悪のシーズンだったという見方は少なくない。オフェンスの中心を要求できる状況ではない上に、先発起用も現実的ではない。シーズン開幕までにポジションを競い合うことになるだろうが、昨季終了後のコメントを聞く限り、彼にはベンチ出場を受け入れる考えがないように思える。

プラスマイナス-3.8という昨季の数字は、ニック・ヤングのそれと同等で、トゥルー・シューティング成功率(3Pとフリースローを考慮したシュート成功率)は50.3%に終わり、2ポイントショットとフリースローの成功率はキャリア最低だった。リムにアタックする際のスピードも落ち、相手から誘うファウルの数も目に見えて減少している。

ただ、昨季のすべてが悪いわけではなかった。アンソニーは、3P試投率で自己最高を記録し、成功率は35.7%をマークした。自分のプレイを今のNBAに合わせられれば、3Pを重視するロケッツにもフィットするだろう。

だが、守備では年齢による影響が出てしまっている。マッチアップする相手を抑えられないアンソニーは、昨シーズン中、対戦相手のターゲットになってしまった。ディフェンシブ・プラスマイナスはキャリアで4番目に低い-1.9で、ワースト4の残り3つの内2つは30歳を過ぎてから記録している。もう、時計の針を戻すことはできない。

アリーザとバー・ア・ムーテの代役として獲得したエニス三世とアンソニーは、ほぼ確実に100ポゼッションあたりの平均失点というカテゴリーにネガティブな影響を及ぼすだろう。その傾向は、ウォリアーズ戦でさらに強くなると見られている。『Cleaning the Glass』によれば、ウォリアーズは昨季のカンファレンス・ファイナルでロケッツと対戦した際、100ポゼッションあたり平均111.1得点を記録したのだが、もし今季のプレイオフで対戦すれば、確実にその数字は上がる。

モーリーGMは、就任からチームに向けられる懐疑的な意見を覆してきた。しかし、今オフの補強により、ウォリアーズに勝つには2017年に発言した方法を再び取るしかなさそうだ。

もはや今のロケッツには、2018年のプレイオフでウォリアーズをスローダウンさせた守備力はない。つまり彼らは、より接戦になると見られるウォリアーズとの対戦で、3Pを多投するしかなくなる。昨季の第7戦が示したように、それは必ずしも上手くいく方法ではない。

原文: Rockets' pursuit of Warriors, NBA title will be defined by moves on margin by Sporting News(抄訳)


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