「個人的理由」で今季開幕前から戦列を離れていたワシントン・ウィザーズの八村塁が、1月9日(日本時間10日)のオーランド・マジック戦でついに復帰した。
フロリダ州オーランドのアムウェイ・センターで行われたこの試合に途中出場し、今季デビューを飾った八村は、約14分の出場で2本のダンクを含む6得点、3リバウンド、1アシストを記録し、チームは102-100で勝利を収めた(20勝20敗)。
八村は昨年6月にNBAの2020-21シーズンを終えたあと、バスケットボール男子日本代表の一員として東京オリンピックに出場し、8月1日のアルゼンチン戦までグループフェーズ3試合に出場。その後は10月下旬に開幕するNBA3年目のシーズンに向けての準備を進めているものと思われたが、9月25日(同26日)にトレーニングキャンプへの合流が遅れることがウィザーズから発表された。それ以来、約3か月半の時を経てついにNBAのコートに戻ってきた。
昨プレイオフ1回戦のフィラデルフィア・76ersとのシリーズ第5戦の日から数えて222日ぶりにNBA公式戦出場を果たした八村が、試合後の記者会見でメディアからの質疑に応じた。
※前半は英語、後半は日本語での質疑応答。質問は内容の概略。英語部分は翻訳。
「バスケットボールが本当に恋しかった」
――ついに復帰を果たした。
八村:素晴らしかったです。この瞬間を待っていました。少し休まなければいけませんでしたが、コートに戻り、仲間たちと一緒にプレイできてハッピーです。この感覚を恋しく思っていました。素晴らしかったです。
――ここまでの準備について。
八村:みんながサポートしてくれました。選手たち、コーチ、スタッフのことが大好きです。みんなが助けてくれましたし、素晴らしかったです。
――(今季から就任した)ウェス・アンセルドJr.ヘッドコーチの指揮下でのプレイについて。
八村:バスケットボールのオフェンス、ディフェンスについて彼と話してきました。フィルムもたくさん見ました。上手くいっているし、彼のことが好きです。
――新しいコーチによる新システムへの適応について。
八村:チームの近くにいましたし、一緒に練習もしていました。ゲームもすべて見ていました。何人か新戦力が加入しましたが、彼らと一緒に過ごし、練習でも一緒にプレイすることで適応は容易になりました。
――少し離れた場所から試合を見ているのはつらかった?
八村:ゲームの感覚を恋しく思っていました。東京五輪以来、6か月間も離れていたので、プレイしたかったです。この瞬間を待っていました。今日は状態が良く感じたので、コーチにいつでも準備はできていると伝えました。だからプレイしたのです。
――離脱している間、どんな調整を?
八村:個人練習です。チームのアシスタントコーチの1人と練習を続けてきました。映像をたくさん見て、チームと一緒にいる良い感覚を取り戻すようにしました。自分自身の調整に集中してきました。チームは協力的で、コーチ陣、トミー(シェパードGM)、(球団オーナーのテッド)レオンシスさんといったチームの人たちが助けになってくれました。こうして戻れて嬉しいです。
――これほどバスケットボールから離れたのは初めて?
八村:100%、その通りです。13歳からバスケットボールを始め、以降はノンストップでした。説明するのは少し難しいですが、日本にはバスケットボールのシーズンと言えるものはなく、1年中プレイするので(アメリカとは)異なります。だから休むことはありませんでした。(ゴンザガ大学での)カレッジ時代も夏の間は日本代表に参加していました。去年の夏もシーズン後は日本に帰り、(東京五輪に臨んだ)日本代表でプレイしました。厳しかったですよ。ようやく少し落ち着き、こうしてコートに戻れてハッピーです。
――離脱中、自分について何を学んだか。
八村:間違いなく多くを学びました。バスケットボールが本当に恋しかったです。自分のハイライトシーンをたくさん見ました(笑)。また、(ウィザーズの)ゲームも見ました。自分がバスケットボールが大好きだということを学んだのです。
「休養が必要だったんです」
――なぜ今日、準備ができていると感じたのか。
八村:それはわかりません。ただ、状態が良く感じたのです。シカゴへの遠征には帯同できませんでした。ただ、オーランドには帯同できて、昨日は3対3を少しやりました。調子は良かったですし、(フロリダは)天候も良いですし(笑)。そこで今こそがそのときだと感じ、コーチにそう伝えたのです。
――離脱の原因について。
八村:大丈夫でしたが、個人的なことです。それについては話したくありません。チームが僕の状況を理解してくれたのは素晴らしかったです。(チームと)コミュニケーションはとっていましたし、ドラフトで指名されて以来、特にトミーはとても良くしてくれています。新しいコーチ、新しいチームメイトのことも大好きですし、このチームは良いグループです。
――今日のコンディションは?
八村:良かったですよ。昨日も3対3をやり、そこで調子良く感じたのが大きかったのです。だから今日こそが復帰すべき日だと思ったんです。
――14分をプレイし、どう感じた?
八村:良かったですよ。コンディションはよく、チームと一緒に練習してきたので体調は整っていました。何度か言いましたが、この感覚を恋しく思ってました。昨季は無観客だったので、新型コロナウイルス(によるパンデミック)が起こって以来、ファンの前でプレイするのはほとんど初めてのように感じました。良かったです。
――離脱期間に関してファンにどう伝えたい?
八村:休養が必要だったんです。これまで説明してきた通り、子供の頃からクレイジーな日々が続いてきました。だから休みが必要でした。それだけです。
「またバスケができることをすごく感謝しています」
※以下、日本語での質疑応答。
――シーズンデビューを勝利で飾った。
八村:よかったですね。こうやって僕もコートに戻ることができて、チームも今、けっこうキツい状態なんですけど、こういうふうにアウェイで勝利を掴めて良かったです。
――チームメイトと一緒にコートに立てて嬉しかったのでは?
八村:ずっとチームとも練習してましたし、プレイヤーともいろいろ話しながら、僕も早くコートに戻りたいなと思っていたので、今日こうやってコートに戻れてみんなとやれてよかったです。
――久しぶりの実戦がぶっつけ本番になったが。
八村:ずっとチームとも練習していたので、そんなに別に何かって感じじゃなかったです。昨日も3対3(の練習)をして、気持ち的にも準備できていたので、今日プレイすることに決めました。
――豪快なダンクを決めたり、ファウルを誘ったり、キックアウトしたり、ペイント内で力を発揮した。
八村:チームとしても今、ファイブメン(=センター陣)がいないので、そういう中で僕もそういうところで活躍できたんじゃないかなと思いました。
――チームメイトとも噛み合っていたように見えたが、アンセルドHCのシステムにも慣れてきた?
八村:チームともずっと練習してきたので。あと僕もずっと試合を見てきたので。自分も(一緒に)やっているふうにイメージしながらずっとやってきたので、その通りにできたんじゃないかなと思いました。
――NBA3年目はどんなシーズンにしたいか。
八村:遅れてスタートしたんですけど、こうやってまたバスケができることをすごく感謝しています。まずはリズムを戻せるように、しっかりとチームにも慣れながら、そこから決めていきたいなと思います。
「バスケが本当に好きだなってことを再確認」
――こうして間が空いたことで再確認できたことは?
八村:試合もずっと見ていましたし、チームにも早く戻りたかったです。時間をかけながらやってきたんですけど、こうやってバスケを続けられて嬉しいですし、またコートに戻ることができて嬉しかったです。僕もバスケが本当に好きだなってことを再確認というか、改めて思いました。
――今朝状態が良くて出場を決めたということだが、そう感じたのはこれが初めて?
八村:ずっとコロナだったり、風邪を引いたりしていたので。その中でけっこう体調崩したりしていたところもあったので、そこで試合に持っていけるまでの体調にできなかった。今回こうやってコロナ明けに体調も良くなったので、そこで、ですかね。
――コロナでなければ昨年12月28日のマイアミ・ヒート戦で復帰の可能性もあった?
八村:そこまでいつ復帰とかは決めていませんでした。
「バスケの試合をこんなにしなかったのは今までないと思う」
――これだけブランクが空いたのは初めての経験だと思うが、コートに立った瞬間にまずどう感じた?
八村:気持ちよかったですね。バスケの試合をこんなにしなかったのは今までないと思うので。自分でもバスケが恋しかったので、こうやって戻れて本当に嬉しいです。
――第2クォーターから積極的になったが、エンジンがかかったきっかけは?
八村:普通に自分でも試合に戻ってきて、チームとも初めてプレイするので、感覚を戻そうとしました。その中で(良い)タイミングが(第)2クォーターでつかめたんじゃないかなと思いました。
――今日はインサイドで積極的で、HCも褒めていた。今後、ミドルレンジ、ロングレンジではどうプレイしていく?
八村:ミドルレンジ(のショット)とかスリー(ポイントショット)とかは感覚だと思うので、試合をやっていくごとにリズムが合ってくると思います。(ジャンパーは)入ってくると思うので、少しずつ合わせていきたいなと思います。
――今季から加入したカイル・クーズマが活躍したが、刺激になっているか。
八村:彼とはポジションが似ているので、練習中とかでもどういうふうにやっていく、みたいなことを話してきました。彼も僕のことをいろいろサポートしてくれていたので、こうやって一緒にプレイできて本当に嬉しいです。
取材&一問一答構成:杉浦大介 @daisukesugiura