NBAファイナルを映画館でライブ観戦してみた! 新感覚のパブリックビューイングイベント体験記

及川卓磨 Takuma Oikawa

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6月10日(土)、東京・新宿の新たな人気スポット『歌舞伎町タワー』にNBAのジャージーやグッズを身につける人々の姿があった。NBAファイナル2023のデンバー・ナゲッツ対マイアミ・ヒート第4戦(米国フロリダ州マイアミのカセヤ・センターで開催)を観戦するために、およそ80人ほどのファンが集結したのだ。

彼らが訪れたのは、同試合のパブリックビューイングが実施された『109シネマズプレミアム新宿』。普段、NBAの試合中継を行うNBA Rakutenが、ファイナル特別企画として開催した『NBA FINALS 2023 LIVE in Cinema ~映画館でNBAファイナルをLIVEで観よう』というイベントで、午前9時30分開始の試合を見るために集まった人たちだ。

高額チケットも即完売

4月にオープンしたばかりの最新の映画館でNBAファイナルをライブで観戦する、という今回のイベントは、これまで日本で実施されてきたNBAのパブリックビューイングイベントとは一線を画すものだ。

これまでのNBAのパブリックビューイングといえば、午前中に行われた試合の録画を夜にイベントスペースの大画面でドリンクや軽食をつまみながら立ち見観戦する、というのが定番だった。だが今回は、最新設備の整ったラグジュアリーな映画館でソファでくつろぎながらゆったりとライブで試合を堪能する、というものだ。

観戦チケットは9000円と1万円(いずれも消費税込み。以下同)の2種類。通常の映画鑑賞券は大人1900円だが、今回の会場は通常料金が4500円という高級施設であるということを考えても、かなり強気の価格設定だった。それにもかかわらず、蓋を明けてみれば、チケット発売から半日で売り切れとなるほどの人気ぶりだったという。

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思い思いの格好をしたNBAファンが集結

会場に集まったファンは皆、思い思いの格好に身を包んで観戦を楽しんでいた。ヒートやナゲッツのジャージー、NBAキャップ、NBAのTシャツなど、対戦カードにかかわらず、好きなNBAグッズを身につけている方が多い印象だ。

良いプレイがあれば歓声をあげたり、どよめいたり、手を叩いて喜んだりと、実際の試合会場で観戦しているのと同じとまではいかずとも、それに近い感覚での観戦体験を味わえた。映画館でNBAの試合を見るのは筆者にとって初めての体験だったが、自宅のリビングとパブリックビューイングのいいとこどりというような感じで、十分に楽しむことができた。

NBA Rakuten NBA Finals 2023 LIVE in Cinema
(Takuma Oikawa/The Sporting News)

映画館でのNBAライブ観戦イベント

主催の楽天の担当者曰く、2月のNBAオールスターゲームの際にも同様に映画館でパブリックビューイングを実施したが、そのときはライブではなく、日本時間の午前中に行われた試合の録画映像を夜の時間帯に放映する形だった。現地で実際に試合が行われている時間帯にリアルタイムで実施したNBAのパブリックビューイングイベントとしては、筆者の記憶が正しければ、2018年6月に大阪で開催されたNBAファイナルのとき以来となるはずで、少なくとも楽天主催のイベントとしては、映画館でのNBAライブビューイングイベントは史上初の試みとなった。

会場の109シネマズプレミアム新宿は、高級ホテルのロビーのような上品で清潔感あふれるレセプションや、幅広く深々としたリクライニング機能付きソファ席、ドリンクホルダーや荷物を収納する棚、隣席との十分なスペースなどを完備した映画館で、一般的な映画館では味わえないような快適な鑑賞体験を得ることができる。

そんな心地良い施設で、NBAファイナルの真剣勝負をのんびりと堪能できるのは、一般的なパブリックビューイングや、試合会場での観戦、そしてもちろん自宅のテレビや手元のパソコンやスマートフォンで見るのとは異なる体験だ。

観戦スタイルの好みは人それぞれなので、どれがベストというつもりはないが、映画館での観戦もこれはこれであり、というのが筆者の感想だ。特に、立ち見での2~3時間に及ぶ観戦がつらい方、友達とワイワイガヤガヤというよりはゆったりと集中して試合を見たい、という方に適していると言えそうだ。

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NBAリアルイベントの今後の開催予定は?

イベントを主催したNBA Rakutenの担当者は「女性や子供のお客様が来てくださったのはすごく嬉しかったです。コアファンの方にも楽しんでいただけたと思いますし、まずはNBAがもっと広がっていくためにも、こういうイベントを開催できたことが良かったんじゃないかと思います」と言う。

新型コロナウイルスの影響でなかなかリアルイベントの開催が難しかったここ数年だが、日本のNBA界隈でも昨年のNBAジャパンゲームズを皮切りに、少しずつそうした催しを開催できる状況になってきた。NBAの配信事業に加えてマーケティング事業も担う楽天としても、リアルイベントを通してNBAファン層の拡大を計りたいという思いがある。前出の担当者は、今後については未定としつつも、リアルイベントは今後も計画していきたいという。

「やはり(NBAの)モーメントに合わせて企画していくしかないかなとは思うのですが、開幕戦、(NBAが導入を検討している)シーズン中のトーナメント戦、クリスマスゲーム、オールスター、プレイイン、プレイオフ、ファイナルといったあたり(がイベント開催の狙いどころ)になってくるのかなと思っています。カンファレンス・ファイナルなんかも曜日が合えばやっていきたいです」

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課題はタイミング、周辺施設との連携、拡張性

NBAの観戦イベントの課題としては、北米で開催されている試合を時差のある日本でいつ、どのように実施すればベストなのかという点だ。今回は「土曜日の午前中」に、「確実に試合開催が見込めるNBAファイナル第4戦」という条件が揃ったことが、実現にこぎつけられた大きな要因だったようだ。前出の担当者は「試合の内容はコントロールしようがないですが、土曜の午前中に家族や友人と集まってNBAを観戦するという、こういう文化を作っていけたらもっとNBAが盛り上がるのかなと思っています」と話す。

また、今回は映画館での上映のほか、施設近隣にあるバー『HUB』と協力し、観戦を終えたファンがそのまま飲食を楽しめるように営業時間を早めて開店し、試合の店内放映も行うという連携企画も実施した。開催場所や周辺施設の条件次第ではあるものの、観戦イベントに加えて近隣での別イベントの同時開催、会場でのグッズ販売、ゲスト出演、スポンサーアクティベーションのような拡張性も今後の検討材料となるだろう。

今シーズンはまもなく終焉を迎えるが、10月に始まる2023-2024シーズンに向けて、NBA Rakutenがどんなイベントを仕掛けていくのか、楽しみに待ちたいところだ。

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及川卓磨 Takuma Oikawa

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スポーティングニュース日本版編集長。千葉県生まれ、茨城県育ち。2000年日本大学卒。大学在学時を含めて丸14年間バスケットボール専門誌の編集者として企画立案・取材・執筆・編集・誌面制作・マルチメディア運営等に携わる。2013年秋にNBA日本公式ウェブサイト『NBA Japan』編集長就任。サイトやNBA日本公式ソーシャルメディアの新規開設に携わると同時にメディア運営を主導。2022年4月より現職。主な競技経験はバスケットボール、野球、サッカー。