第6戦のクラッチタイムでサンダーを救ったクリス・ポール

Michael C. Wright, NBA.com

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接戦のために準備してきたサンダー

8月31日(日本時間9月1日)のNBAプレイオフ・ウェスタン・カンファレンス1回戦の第6戦で、オクラホマシティ・サンダーがクラッチタイムで再びヒューストン・ロケッツを慌てさせ、104-100で勝利してシリーズを引き分けた。試合後、クリス・ポールは、(この状況に)まさにぴったりなフロリダA&MラトラーズのTシャツを着こなしていた。

ポールは、チーム最多となる28得点のうち15得点を第4クォーターであげ、サンダーが6点差で負けている状況から逆転勝利へと導く、最後の3分35秒の間のオクラホマシティの魔法のようなランに拍車をかけた。

クラッチタイムの争いで、31勝15敗というリーグ最高の記録を保持してこの戦いにやってきたOKCに、これ以外に期待するものはないだろう。

「これこそ僕たちの姿なんだ」と、TNTの試合後のインタビューでポールは言った。

「僕たちはこういうときのために準備してきた、こういうことができるチームなんだ。僕らのチームのたくさんの選手が(他のチームから)追い出されたり、トレードされたりしてきている。でも僕たちは助け合って結束して、戦い続けるだけだよ」。

明らかにその通りだ。

第6戦のクラッチタイムでの攻防

クラッチタイムとは、最後の5分間に得点差が5点以内の試合と定義される。

ロケッツは、サンダーの16-3のランに対して10-0のランで反撃に出た。オクラホマシティのビリー・ドノバン・ヘッドコーチ(HC)が、ポールとシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、デニス・シュルーダー 、ダニーロ・ガリナーリ、スティーブン・アダムズというクロージングラインナップを投入した時点では、ロケッツは5分を残して94-92とリードしていた。

クラッチタイムまであと10秒のところで、ジェームズ・ハーデンはステップバックスリーを決め、そのリードを5点差に広げた。そして、ポールが怒りを爆発させたおかげで得たテクニカルフリースローを沈め、残り4分19秒でロケッツのリードは6点になった。

「うちの選手たちは自信と信念を持っているんだ」と、ドノバンHCは言う。

「その自信や信念が、必ずしも次の試合に持ち越されるものなのかはわからない。でも、一度何かを成し遂げて、それが一度でなく何度もできる経験をしたら、『我々は負けていても盛り返せる。そのために戦い続けなくちゃいけない』と信じるのは当然だと思うんだ」。

第4戦では、ポールがクラッチタイムに8得点をあげ、サンダーが117-114で勝利してシリーズを2勝2敗の引き分けに持ち込むことに貢献した。ポールは、残り2分57秒で98得点の同点に追いついた連続3Pを皮切りに、サンダーの最後の12得点のうちの8得点をあげた。

ポールは、ロケッツのセンター、ロバート・コビントン越しに26フィート(約8メートル)の距離から、2つ目の3Pとなるステップバックジャンパーを決めたあと、ロケッツが守備に戻る際にコビントンの臀部をポンと叩いた。ポールはまた、残り2分33秒から2つのスティールを奪い、そのあとにサンダーの最後のリードにつながるフリースローを2本決めた。

「彼は偉大な選手だよ」と、ロケッツのマイク・ダントーニHCは話す。

「キャリアを通して彼がずっとやっていることだ。(第7戦で)あれを止めるための対策を打ち出せるのかわからないね。すでに誰かが彼を止める方法を解明していたとしたら、彼は10年前にはリーグを去っていただろう。私たちはとにかくもっと良いプレイをしなくてはいけない。ボールの扱いにもっと気をつけなくてはいけない」。

ロケッツの敗因となったターンオーバー

ロケッツは、最後の1分42秒の間に、ゲーム最多となる7つのターンオーバーのうちの2つを記録したラッセル・ウェストブルックを筆頭に、クラッチタイムで4つのターンオーバーを犯している。彼にとっては、8月11日以来これが2試合目だが、彼は2点差を追う残り13.1秒の時点で、その夜5回目となる逸れたパスを出してボールをターンオーバーした。

プレイオフ最初の5試合で、ロケッツは平均11個というリーグ最少のターンオーバー数にとどまっていたものの、第6戦では22個のターンオーバーを記録している。第3クォーター残り9分7秒の時点で、ヒューストンはすでに12個目のターンオーバーを記録していた。

「率直に言って、あれは僕の責任だ」と、4分半近くの試合後のインタビューの間ほぼずっと自分の携帯電話を見続けながら、ウェストブルックは言った。

「前の試合では(ターンオーバーは)ゼロだった。今夜は7つ。単純な話だ」。

ウェストブルックがいたチーム(ロケッツとサンダー)は、彼が7つ以上ターンオーバーをした試合では4勝10敗を記録している。

一方で、ゲーム最多の32得点、7アシストをあげたハーデンも自らの責任を認めた。

「自分を含めて、不注意なターンオーバーが多かった」と、彼は言う。

「ターンオーバーが多過ぎた。特にプレイオフの、クローズアウトゲームで。僕たちは相手にチャンスを与え過ぎたね。でも僕もターンオーバーを5つしている。だから僕たちはもっと良いプレイをしなくちゃいけない。(ハーデンとウェストブルックの)2人で12のターンオーバーをしている。もしそれを半分に抑えられたら、もっとシュートチャンスが作れるよ」。

選手会会長の大役を務めながらクラッチタイムでも活躍

第6戦でポールが試合に出ているときのサンダーは、ロケッツよりも20点多く得点した。ポールのクラッチパフォーマーとしての評判は上昇する一方だ。彼は、プレイオフを含めた今シーズン、クラッチスコアでNBAトップの171得点、クラッチタイムにおけるフィールドゴール成功率52.5%、3P成功率40.6%を記録している。

ポールはこの試合で、6本中3本の3Pを決め、第4Qには3本中3本を沈めた。

「クリスは、こういう状況おいて、本当に、本当に優秀な3Pシューターなんだ」と、ドノバンHCは話す。

「彼は、深い知識や優秀なスキルを持つ天才肌のバスケットボール選手として周りから認められている。バスケットボールIQや頭脳、ゲームの感覚を持っていて、それは群を抜いて素晴らしい。でも私が思うに、知性やパス以外で、彼が素晴らしいオフェンシブプレイヤーである理由の一つは、適切なスペースがあったら自分の得意なスポットに行けることだよ。彼がその得意なスポットで打つシュートには、大体満足がいく」。

「彼はまた多くの場合、私の見方で言うと、たくさんのシュートを避けているんだ。時には、彼にもっとキャッチ&シュートスリーを打ってほしいと思うことがある。でも、彼が効率的なシューターなのは、彼が自分の(得意な)シュートを打つからなんだ。コーチとして、そこには敬意を払っている。選手がリズムを崩してシュートしているような気にはさせないほうがいいからね。彼が沈めたあの3Pは、彼が自分で状況を判断して、自分の好きなポジションに移動して、スペースを作って決めている。でも彼は、エリート3Pシューターなんだよ」。

クラッチタイムパフォーマー、そして『エリート3Pシューター』。この2つは、2013年からNBA選手会の会長を務め、2009年から実行委員会のメンバーでもあるポールに追加された肩書だ。ポールはまた、7月のNBA再開にあたっても、そしてウィスコンシン州ケノーシャで起きた警官によるジェイコブ・ブレイクさん銃撃事件を受けて、選手たちがストライキを起こしたあとのポストシーズン再開にあたっても、肝要な役割を果たしている。

「僕たちはまだ、ここを出る気持ちの準備ができてない」

ヒューストンにウェストブルックを送る取引の一部として昨年の7月にオクラホマシティにトレードされたポールにとって、以前自分がいたチームを打ち負かすことが、さらなる動機になっているのではないかと人々は思うだろう。

だが、ポールはその考えを一蹴した。

その代わりに、彼は、サンダーが家路に着くために荷造りをしなければならなかったことに触れ、それに対する不本意な気持ちを説明した。

「僕だけじゃない。僕らのチームは全体でひとつのチームなんだ。僕たちがみんなで一緒に決めてやっているからだと思うよ。僕たちはシーズンを通してずっとこういう状況にいる。だからその中で力強く成長している感じだね。3勝2敗の絶体絶命みたいな状況だと、念のために荷造りをして、翌日ここを出るために準備しておかなくちゃいけなかったんだ」。

「でも僕たちはまだ、ここを出る気持ちの準備ができてないんだ。僕らのチームは、記憶に残るシーズンを過ごしてきて、良いときも悪いときもたくさんあった。とにかく戦い続けるつもりだ。それがまさに僕たちが望むことで、何も変えようとは思わないよ」。

原文: Relentless Paul rescues Thunder in clutch to force Game 7 vs. Rockets by Michael C. Wright/NBA.com(現地9月1日掲載)
翻訳: YOKO B Twitter: @yoko_okc


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