【動画】渡邊雄太 本契約後初の記者会見 完全版

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4月19日、トロント・ラプターズの渡邊雄太が本契約(標準NBA契約)を結んだ。制限のある2ウェイ契約から結び直した形で、その実力が真のNBA選手として認められた証となる。

2018年にジョージ・ワシントン大学を卒業後、ドラフト外からNBAを目指し、サマーリーグを経てメンフィス・グリズリーズの一員となった渡邊は、常々、2ウェイ契約からより上位の契約形態となる「本契約」(標準NBA契約)をひとつの目標に掲げてきた。

グリズリーズでの2シーズンを2ウェイ契約選手として過ごし、3年目の今季はフリーエージェントからエグジビット10契約という開幕前のキャンプに参加するための契約でラプターズのトレーニングキャンプに参加。その後、2ウェイ契約に昇格して今季開幕を迎え、ここまでを過ごしてきた。

そして、12月下旬の開幕から約4か月、持ち前の粘り強いディフェンスや信頼できる武器に磨き上げた3ポイントショットなどで実力をアピールし続けた渡邊は、レギュラーシーズンも残り1か月を切ったこのタイミングで、念願だった本契約を勝ち獲った。

大学卒業後3年目にして大きな夢のひとつを叶えた翌日に開かれた記者会見の模様を、ノーカット完全版でお届けする。


【動画】渡邊雄太 本契約後初の記者会見(英語)


【動画】渡邊雄太 本契約後初の記者会見(日本語)

日本語での質疑応答 全文

※読みやすくするため一部編集箇所あり。

――この契約はラプターズからしたら単純にコンバートする(2ウェイから本契約に切り替える)だけということもできたと思うし、渡邊選手に関してもコンバート以外の道は選ばないという選択肢もあったと思うんですけど、それをギャランティ(保証)がないにせよ、来年までの契約にしたということは、ラプターズに残るということが渡邊選手にとって大事だったということでしょうか?

渡邊:そうですね。本当にそのとおりです。このチームに来てからすごく成長できていると思いますし、出場機会もたくさんもらえて、経験を得ることで自分の良さっていうのをコート上でどんどん出せている部分があるので、僕はこのチームに残って、少しでも長いキャリアを残せたらと思っています。オファーがあったときはすごく嬉しかったですし、来シーズンはまだ保証はされていないんですけど、今後もしっかりアピールして、来シーズンに結び付けるようにがんばりたいと思っています。

――NBAが今季の2ウェイ契約のルールを変えた(※今季2ウェイ契約選手は当初NBAレギュラーシーズンに50試合までしか出場できず、プレイオフには出場できない予定だったが、シーズン途中にそれらの出場制限をなくした)ときに、プレイオフまでプレイできることになって、コンバートもされる必要がなくなった。そのときに、形だけのコンバートではなく自分の力を認めてもらって本契約を交わしたいとおっしゃっていました。契約を変える必要がないなかで本契約にしてくれたということで、チームからそれだけ認められているというのは感じますか?

渡邊:そうですね。やっぱり、ある意味、制限がなくなって良かったなというか。50試合の制限があるなかで、出ても出なくても50試合ベンチにいたから(2ウェイの上限に達したから)コンバートする、じゃなくて、しっかり僕の最近のパフォーマンスとか、プレシーズンを含めて、自分のパフォーマンスを認めてもらった上でのコンバートなんで、そこは素直に嬉しく思います。さっきも言ったとおり、ある意味、ルールがなくなって良かったなと思います。

――3年目でようやくNBAの本契約にたどり着いたわけですけど、本契約をしたことによって肩の荷が下りたとか、そういったことはありますか?

渡邊:特に肩の荷が下りたとかはないですね。正直、まだまだ全然油断はできないというか。来シーズンの保証はまだないですし。来シーズンの保証があるからといって油断するかと言われたらそれは絶対ないですが…ただ、約3シーズンにわたってずっと2ウェイで、なかなか結果が出ない時期もあって苦しんだ時期もありました。そのなかで、目に見える結果として何かを得られるというのは、本当にすごくありがたいことです。また、それが自分のモチベーションにはなるんで、これに関しても素直に喜んでいいのかなと思っています。

――今季を迎える前のオフシーズン、本当に先が見えないなかでのトレーニングを続けていたと思うんですけど、そんななかで「自分は海外(のNBA以外のリーグ)には行かない」「NBAでがんばるんだ」と自分でそう決めたから、という意地みたいなものはあったんですか?

渡邊:そうですね。言い方は悪いですけど、ある意味、メディアの皆さんを利用させてもらった、じゃないですけど、プレシーズンのときのそういうのを含めて(意地はあった)。正直、もう辞めたいとか、なんでこんなにやってるんだろうとか、もう逃げ出したくなるってときってたくさんあったんですけど、ただ、そういうときにも、メディアの皆さんに(自分の目標を)伝えて、それを時間をかけて記事にしてもらって、それを読んでくれる人たちがいるんで、「それを言ったからにはやれよ」じゃないですけど、自分にハッパをかけてやっていた部分もありました。それが良い形かどうかはわからないですけど、どうしても自分のなかで自分自身を奮い立たせるのが難しくなってた時期って正直すごくあったので。ちょっと順序が逆で、本来なら、やってる(しっかり結果を出している)から皆さんに伝えてっていう形が良いんですけど。一時期は本当に「言ったからにはやらなきゃいけない」っていう状況を(故意に)作っているときもありました。

――次の試合のことなんですけど、立場が変わって、ここまで好調で来られていて、気持ちが変わったりだとか、次の試合って結構難しいんじゃないかなと…

(脇からパスカル・シアカムが「ユウタ~!」と声をかける)

渡邊:シャラップ、パスカル!

――その辺をどう思われているのかと…

(「ユウタ~!」)

渡邊:(笑)。特にそういう部分で、自分の契約が変わったからといって、さっきも英語のインタビューのときもちょっと言ったんですけど…

(クリス・ブーシェーがカメラの前に乱入し「スーパースター・ユウタ~! チョーズン・ワン!」と声を上げて去る。渡邊、苦笑い)

渡邊:……自分の契約が変わったからといって、自分のやらなきゃいけないことが変わるわけではない。自分のなかではよりプレッシャーがかかるというか、もっとやっていかなきゃいけないっていう気持ちはあるんですけど、ただ、だからといって、自分のプレイスタイルを変えるだとか、そんなことは全然する必要はないと思います。今僕がやっていることが評価されているわけなんで、相手がネッツだからだとか、自分の契約が本契約に変わったからだとか、そういうのは一切関係ない。いつもどおりのプレイをしっかりやれば、本当にどのチーム相手にでもある程度のレベルでやれるっていう自信にはなっているんで、そこは変わらないと思います。

――渡米して8年。その間に一番大きなターニングポイントみたいなことはありますか?

渡邊:毎日新しい発見があったというか。こっちに来てからずっと、アメリカ人に勝つためには、彼らより良い選手になるためにどうしなければいけないか、ということを考えて、日々毎日努力して、それでもうまくいかないときがたくさんありました。それでも、大学をしっかり4年間やりきれて、サマーリーグを経てメンフィスと2ウェイ(契約を)して、今回ラプターズと2ウェイ(契約)のあとに本契約を結んで(と進んできた)。だから、具体的に、ピンポイントにターニングポイントがあったというわけではないんですけど、節目節目に、「努力して良かったな」と思える瞬間がいつもありました。そこは本当に、そういう機会に恵まれたのもすごくありがたかったですし、それは自分がやり続けた結果かなと思うので、そこは今後も続けていかなきゃいけないなと思っています。

――SNSのほうには多数のお祝いのメッセージがあったと思うんですけど、NBA Rakutenの記事やYouTubeの動画などにもお祝いのメッセージがたくさん書き込まれていて、そのなかで「歴史的な瞬間になる」と、そういう形で喜ぶ方たちが非常に多くいました。今回の契約を勝ち獲るに至って、今季のターニングポイントになった試合やプレイなどがあれば教えてください。また、サンダー戦前に今回の契約に関する話など出ていたら、そのときの状況も教えていただけたら。

渡邊:今シーズンに関して言えば、少しずつプレイタイムをもらえるようになっていって、ようやくローテーション入りできるかっていうところで、怪我があったり、自分のパフォーマンスがうまくいかなかった時期が2~3月に続いたなかで、ゴールデンステイト戦ですかね、たしかうちが第3クォーター途中くらいで大量リードして、僕が第3Qの終わりから第4Qの間ずっと出させてもらったんですけど、あの試合で、久しぶりに長い時間、一定の時間を使ってもらいました。そこで、今まで自分があまりできていなかったリング周りでのフィニッシュだとか、そういうのができた。ある意味、あの試合が好調のきっかけになったかなとは思います。あと契約のことに関しては、サンダー戦よりもっと前からそういう話は出ていて、正直、サンダーの試合の前には本契約に変わるっていうのは僕自身はわかっていたんですけど、まだサインするフォームが完全に出来上がってないということで、待っていた状態でした。

――ユーザーの方から「自分もがんばろう」というように自分に反映させているようなコメントが多かったんですけど、そういったバスケットをやっている子どもたちへのメッセージなどがあればお聞かせください。

渡邊:特に今の若い子供たちには未来がありますし、こうやって今、僕だったり(八村)塁だったりがNBAでやることによって、もっとNBAを身近に感じてもらって、自分たちでも努力し続ければできるんだ、ていうのを感じてもらえるだけで大きな一歩だと思います。ほんとに少しでもそうやって子どもたちの影響力になれればなというのは僕はずっと思っています。なので、僕は当然、僕のためにというか、僕がここで生き残るためにやってるんですけど、その結果、そうやって子どもたちのモチベーションになってくれれば、僕としては本当に嬉しいです。

――本契約は通過点だということではあると思うんですけど、具体的な次のステップとして描いている目標などがあれば教えてください。

渡邊:やっぱりまだ怪我人が帰ってきたときにプレイタイムがもらえる保証は全然ないですし、来シーズンの保証もまだないなかで、自分のアピールというか、もっともっとできるんだっていうところは見せていかなきゃいけない。ただ、さっきもちらっと言ったんですけど、だからといって、自分のプレイスタイルを変えるだとか、そういうことは一切する必要はないと思っています。僕は今までやってきた自分のことっていうのを信じて、それをしっかりコート上で出してやれば結果としてついてきますし、それが周りに評価されるっていうのは自分自身で証明してきたんで、あとはそれを続けるだけかなと思います。

――ここにたどり着くまでに、開幕前とさっきおっしゃっていた3月に2回、厳しい立場から這い上がってきました。ターニングポイントとしてウォリアーズ戦という話があったんですけど、その厳しい時期に積極的に行かなければいけないという、言うのは簡単だけど実際にやるっていうのはそんなに簡単じゃなかったと思います。それができるようになった、4月にちょっとブレイクできたっていうのは、気持ちの部分が大きかったのか、スキルの成長が大きかったのか、あとチーム事情でプレイタイムが増えたことが大きかったのか。今振り返ってみて、何が一番大きかったと思いますか?

渡邊:全部がうまく重なったというか…やっぱりこの世界で生き残っていくのに大事なのは、常に、才能を含めた実力、努力、それから運も僕は絶対すごく大事だと思っています。1月に掴みかけていたチャンスを逃してしまって、なかなか2度目のチャンスって来ないと思うんですけど、本当にありがたいことに、掴み損ねたチャンスをもう一度掴めるチャンスを3月の終わりから4月にかけていただいた。そこで、さっきも言ったウォリアーズ戦が好調の兆しとなったと思います。そこで、今まで自分が苦手としていたリング周りのフィニッシュ、あのときは相手が元チームメイトのエリック・パスカルでしたけど、彼からアンドワンをとることができました。ああいうプレイってNBAに来てからできてなかったんで(自信になった)。そこは自分が試合に出れていなかった期間も継続して練習していた部分ですし、そこを直していかなきゃいけないっていうふうに周りからも言われていました。そういう成功例が出ると、自分のなかでも自信につながりますし、またそれが自分の感覚として染み付いてくるんで、さっき言った3つがこの3月終わりから4月に本当にうまく重なって、それが今、良い感じになってきているのかなと思います。

――これで正真正銘のNBA選手ですけど、ここから最終的に目指すプレイヤー像というか、どういう選手になっていきたいですか? これまでジョー・イングルズ(ユタ・ジャズ)の名前なんかも出てきましたけど、これから先、NBAでどんなキャリアを築いていきたいですか?

渡邊:僕がずっと言っているのは、チームを勝たせられる選手になりたいということです。NBAでいうと、僕が20~30点取ってくることは自分の仕事ではないと思っています。今だとベンチから出て、いつもどおりまずエナジーをチームにもたらして、ディフェンスをやって、リバウンドをやって、最近良くなってきているオフェンスの部分で積極性を見せることによって得点につなげることもできますし、そこからパスをさばいたり…(自己最多4アシストを記録した)サンダー戦はそういった意味では、僕はすごく自分の成長が大きく見えた試合だったと思いました。そのパスの部分だったりも含めて、与えられた時間で、ベンチから出て流れを変える選手になって、最終的にチームの勝ちにつながるプレイをやれる選手になっていきたいなと思っています。

――さきほど、肩の荷が降りたっていうことはない、っていうお話があったんですけど、率直に、契約の話が出たときに「やっとか」という思いだったのか、あるいは、単純に「嬉しい」という感じだったのか、それはどうでしたか?

渡邊:「やっとか」っていうのは正直ちょっとありました。チームに対して「やっとか」ではなく、自分自身に対して「やっと成果が少し出たか」みたいな気持ち。ただ、満足は一切ないですし、さっきも言ったように、まだまだ今後の保証というのは一切ないんで。NBAで長いキャリアを築いていきたいと思っているなかで、もっともっとアピールしなきゃいけない立場は続くんで、そういった意味では、この3年間で精神的に修行できたというか。しんどい時期があっても努力を続ければ何かしらの形でご褒美がもらえるっていうのを自分自身で証明できたかなと思います。今後もしっかり続けていかなきゃなと思っています。

――ご両親に話を聞いていると、「最近は雄太もアメリカ人っぽくなってきたんだよね」みたいな話をされていたりしました。最初に英語がほとんど話せないところからスタートして、今ではジョークも言えるような状態になって、プレイも含めてですけど、自分を表現することがスムーズになったことが大きいのかなと思うんですけど、自分を表現することの大事さというのは、これまでの期間でどのように感じていますか?

渡邊:プレイ面に関しては自分がこれだけできるんだっていうのを、与えられている時間のなかで出さなきゃいけないんで、それはアメリカに来てからすごく鍛えられた部分だとも思います。ある意味、もっと積極的になっていかなきゃいけないのかなという部分でもあります。自分自身は別にアメリカ人っぽくなったとは一切思ったことはないんですけど、両親が言うならそうなのかもしれないですね。

――自分を表現するためにはプレイだけでなく、仲間とのコミュニケーションだったり、言葉だけでない部分もあると思うんですけど、そういう部分も含めて大事ということですかね。

渡邊:コミュニケーションはすごく大事です。自分自身を、自分がどういう人間かというのをチームメイトを含め、コーチ陣とかスタッフとか皆さんにわかってもらえるっていうのはすごく大事なことだと思います。そうやってチームと良い関係ができているからこそ、コート上でもチームメイトと良い関係が築けると思います。コミュニケーションの部分も含めて、表現力というか、そういうのはすごく大事になってくるかなと思います。

――今、監督には自分の良い部分を十分理解してもらえているという、信頼関係を強く持てているという状態でしょうか?

渡邊:そうですね。だいぶ信頼されてきているのかなっていうのは、特にここ数試合で感じるようにはなってきています。

――さきほど、努力を証明できたっていう話があったんですけど、努力が必ず報われるとは限りません。ここまで努力をし続けられたのはなぜですか?

渡邊:最終的に、それしか自分のなかに残っていなかったんです。努力が報われるっていうのは成功した人が言えること。努力してもなかなか結果が出ない人も当然いると思います。僕もそういう時期が続いたこともあって、過去3年間、それなりの努力で大活躍している選手も何人も見てきて、「世の中、ある意味不公平だな」って感じることって正直すごくありました。ただ、じゃあ自分はそういう選手たちと比べて才能があるわけでもないし、身体が強いわけでもないし、走るのが速いわけでもないし、ジャンプ力が高いわけでもないし…って考えたときに、結局自分に残されていることって何かって考えたら、努力することしかなかったんです。最終的に、シンプルにそこに戻ったっていうだけで…まあ、そういう感じですね。

――努力をするために助けになった言葉であったり、努力を続けるにあたって背中を押したものっていうのがあれば教えてください。

渡邊:両親の存在はすごく大きくて、いつも僕がどういう状況でも第一のファンとして応援してくれていました。僕の親友や、日本時代の恩師を含め、常に僕のことを信じて、今シーズンだけで言っても本当にすごく大きい波があったなかで、自分がダメなときでも僕のことを信じてサポートしてくれた人間が僕の身近にいたっていうのが大きな支えになっていました。さっきも別の質問のときにちらっと言ったんですけど、自分自身を奮い立たせることが難しかった時期がすごくあったんで、こうやって偉そうに皆さんに向かって「自分は努力してますよ」って言うことによって、「努力するしかない」っていう状況を作ってっていうことはやってました。

――さっき言っていた、自分にハッパをかけていたっていうのはそういうところですか?

渡邊:そうです。自分自身にハッパをかけて…僕、口だけの人間大嫌いなんで。自分がそうは絶対なりたくないんで、「言ったからには絶対にやれよ」っていうのを自分に言い聞かせてやっている時期っていうのは、正直ありました。

――本契約したことによってサラリーが上がると思うんですけど、サラリーに対する喜びってあったりしますか?

渡邊:もともとそんなにお金も使わないですし、物欲とかもなくて、自分がお金を得たから今度何か買おうとかも今は特に考えてないです。ただ、こういう世界にいるんで、ある意味、NBAはお金が自分の評価、金額=選手の評価だと思います。それがイコール(優れた選手)ではないですけどね。ただ、お金が上がる=評価が上がったっていう見方は当然できると思うんで、そこは自分が評価されたんだなっていうことで受け取っていいのかなと思いますね。


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NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ