NBA4年目を迎えた渡邊雄太が掲げる3つの目標と体調充実の要因

及川卓磨 Takuma Oikawa

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「チームに残るのが直近の目標というか、最低限」

9月28日(現地27日)、トロント・ラプターズの渡邊雄太がメディアデーの一環で日本のメディア向けのオンライン記者会見に応じ、2021-22シーズンの目標として「チーム残留」と「3ポイントショットのさらなる向上」、そして「NBA優勝」を掲げた。また、万全のコンディションで開幕前のトレーニングキャンプを迎えることができた要因についても明かしている。

NBA3シーズン目だった昨季、渡邊は「3ポイントショット成功率40%」や「NBA本契約獲得」という公言していた2つの大きな目標を見事達成して見せた。

だが、NBA入りから4年目、ラプターズで2年目を迎える今季は、現時点で契約が部分的にしか保証されていないということもあり、明日から始まるトレーニングキャンプやその後に行われるプレシーズンゲームを通じて、周囲の選手たちと開幕ロスター入りを争う立場でもある。

そうしたことから、渡邊は「チームに残るというのが一番直近の目標というか、最低限のこと」と話し、ロスター残留争いへの意欲を見せた。その上で、これまで同様に3Pの試投数を増やしつつ、40%以上の成功率を維持することを、昨季から継続する目標のひとつに挙げている。

さらに渡邊は、「これは個人的な目標ではないんですけど」と前置きした上で、「NBA優勝」という、NBA選手として最大とも言える目標を口にした。

「NBAで優勝したいという目標があるんで、ラプターズの一員として優勝に貢献できるような選手になっていかなきゃいけないなと。(個人的な目標としては)ちょっと抽象的にはなってしまうんですけど、やっぱり、そういうチームから求められる選手になっていかなきゃいけない、というふうには思っています」。

昨季終盤まで、NBA入り後の3シーズンのほとんどを2ウェイ契約選手(NBAとそのマイナーリーグであるNBA Gリーグの両方でプレイできる契約の選手)として過ごしてきた渡邊は、NBAチームとの本契約、つまりNBAに定着することを最大の目標とし、昨季終盤にそれをついに実現した。そのキャリアを考えると「優勝に貢献できる選手になる」というのは、これまで以上に大きな、もう一段上のレベルの目標と言っていい。新シーズン初日のメディアデーでそれを公言できるということは、それだけ、NBA選手としての自信が増してきた証と言えるのではないだろうか。

大きな経験となったオリンピック

東京オリンピックでの経験も、選手としての自信を肉付けする要因になっているようだ。渡邊は、45年ぶりの五輪出場となった日本代表の共同キャプテンのひとりとしてチームを牽引。予選ラウンド3連敗とチームとしては悔しい結果になったものの、渡邊個人としては1試合平均35.5分の出場(大会2位)で、17.7得点(大会9位)、8.0リバウンド(大会5位タイ)、2.0アシストと結果を残した。本来であればオフシーズンである夏の時期に、真剣勝負をプレイできたこと、五輪のプレッシャーを経験できたことは大きかったと渡邊は言う。

「オリンピックであれだけやれたというのが大きいと思っています。夏の時期は(通常であれば)オフシーズンで、どうしてもゲーム形式のこととかは(できる機会が少ない)…ピックアップ(ゲーム)とかくらいならできますけど、ああいう(オリンピックのような)ちゃんとしたプレッシャーのかかるゲームができる機会というのはなかなかありません。そういった意味では、オリンピックができて、ああいういろんなプレッシャーだったりとかのなかでプレイができたっていうのは、すごく大きかったなと思っています」。

オリンピックを経て新たな自信を得た様子の渡邊は、万全の体調でトレーニングキャンプを迎えることができたと胸を張る。体調の良さの要因のひとつが、この夏に雇ったという個人シェフの存在だ。

「個人的にシェフを雇って、食事の部分でもすごく充実できています。体重が増えてきつつ、かつ、体の重さを感じないというか。プレイしていても一切重たくなった気がしないのは、すごく大きいと思っています」。

今季のNBA開幕は10月20日(現地19日)。ラプターズは翌21日(現地20日)に八村塁が所属するワシントン・ウィザーズと開幕戦を戦う予定だ。渡邊はそのおよそ1週間前、10月13日に27歳の誕生日を迎える。

これまでの経験によって培った自信に加えて、充実のコンディションと新たな目標を携えて、プロ4年目のトレーニングキャンプに臨む。渡邊は今、アスリートとして心身ともにピークを迎えつつあるのかもしれない。

及川卓磨 Takuma Oikawa

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スポーティングニュース日本版編集長。千葉県生まれ、茨城県育ち。2000年日本大学卒。大学在学時を含めて丸14年間バスケットボール専門誌の編集者として企画立案・取材・執筆・編集・誌面制作・マルチメディア運営等に携わる。2013年秋にNBA日本公式ウェブサイト『NBA Japan』編集長就任。サイトやNBA日本公式ソーシャルメディアの新規開設に携わると同時にメディア運営を主導。2022年4月より現職。主な競技経験はバスケットボール、野球、サッカー。