ラプターズが起用したボックス&ワン・ディフェンスに選手もコーチも注目

Reo Onishi

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ゴールデンステイト・ウォリアーズとトロント・ラプターズによるNBAファイナル第2戦の第4クォーター終盤、ラプターズが少しの時間だけ特殊なディフェンスを起用したことが大きな話題となっている。ニック・ナース・ヘッドコーチが「ボックス&ワン」(ボックスワン)というゾーンディフェンスの一種を展開したのだ。

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ボックス&ワンとは、4人の選手がゾーン(区域)で守り、ひとりの選手が相手の得点源をマンツーマン(1対1)で徹底的に守る戦術だ。第2戦ではラプターズのフレッド・バンブリートが、ウォリアーズのステフィン・カリーをマークした。

日本では人気バスケケットボール漫画『スラムダンク』でも紹介される戦術なので、馴染みのあるファンも多いかもしれない。

しかし、主に大学や高校で見られることが多いものであることから、カリーはそれを“Janky”(低品質、粗悪)なディフェンスであると表現し、デマーカス・カズンズも「中学や高校で見たのを最後にほとんど見たことがない」と話している。

スティーブ・カーHCは「とても効果的だった」とコメントし、試合のリズムが変わったと分析している。

「ゾーンはリズムを変えることができる。試合を見返してみると、いくつか決めることができないオープンショットがあった。しかしそれは、リズムとショットの質がこれまでと変わっていたからだろう。だからとても効果的だった」。

それでも「長い時間展開できるものではない。高校や大学で見るもので、NBAで採用されているのは見た記憶がない」と付け加えている。

では実際にどういう思いでナースHCはボックス&ワンを起用したのだろうか? 6月4日(日本時間5日)の練習後に質問された彼は「ああ、知ってるよ、みんなにバカにされてるんだろう?」と冗談を飛ばしながらも、採用した理由をこう説明している。

「ディフェンスをセットアップするのがうまくいっていなかった。ゴール下のディフェンスがうまくいっていなかったんだ。ゲームのリズムにもうまく乗れていなかった。そういうときにゾーンを採用する。ゴール下の守りが少し良くなり、相手のカットも防ぐことができた。とにかく何か相手を止める方法を探していたんだ」。

これまで練習したことのあるディフェンスではなかったため、ボックス&ワンを使う前のタイムアウト中に、ナースHCは選手たちに相談したことを明かしている。

カワイ・レナードは「とにかくコーチの言うことに耳を傾け、勝つためにプレイしていただけだ」と話した。

「たまにディフェンスに戻る際に、(ボックス&ワンをしていることを)忘れてしまうことがあったが、お互いに話し合いながらそれぞれの位置を守るようにしていた」。

実際にウォリアーズのリズムを狂わせ、何度か止めることに成功したわけだが、今後も効果的に使えるかどうかは別問題となりそうだ。レナードは「おそらく使えないだろう」と語る。

「あのときはクレイ(トンプソン)がコート上にいなかった。KD(ケビン・デュラント)がいつ戻ってくるかもわからない。だから効果的に使えるとは思えない」。

デュラントの第3戦の欠場はすでに発表されているが、トンプソンに関しては未定だ。どこからでも得点できるデュラント、3ポイントショットのスペシャリストであるトンプソンがいれば、当然使えないディフェンスではあるが、ウォリアーズにケガ人が続出している状況を考えると、ラプターズがボックス&ワンを採用する可能性はまだあるかもしれない。それに対してウォリアーズがどう対応するかも、今後注目するポイントとなりそうだ。


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