アダム・シルバーNBAコミッショナーが選手参加方針や放映権、オールスターを語る

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坂東実藍 Miran Bando

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アダム・シルバーは今月、NBAコミッショナーに就任して10周年を迎える。この10年で労使協定を新たにし、球団の評価は大きく上昇。導入したインシーズン・トーナメントやプレイイン・トーナメントは好評で、若い層のファンを取り込み続け、コロナ禍を乗り切った。

NBAオールスターウィークエンドが近づく中、コミッショナーは『NBA.com』の質疑応答に応じてくれた。シルバーは選手参加方針やオールスターウィークエンド、放映権交渉、直近で得点が増えていることなど、様々な話題に触れている。

以下の1対1のインタビューは要約・編集されています。

――ショーン・パウエル記者:今回のオールスターゲームはイースタン・カンファレンスとウェスタン・カンファレンスが対戦する形式に戻る。キャプテンがチームを選ぶかたちから変更した理由は?

アダム・シルバー:特にファンが望んだことだからだ。新しいアプローチを試み、当初は好意的に受け止められた。だがその後、ファンと選手たちは飽きていった。それから特に、とても伝統的なバスケットボール市場であるインディアナでの開催だからだ。東西の対戦に戻すのが適切だった。

――リーグは常にオールスターウィークエンドを復活させようと変化させ、大胆な変更を導入してきた。ロスターが15人になることは?

現時点でプランにはない。12人のままとする理由のひとつは、オールスターに選ばれるのがより特別なことになるからだ。周知のとおり、新たな労使協定の交渉を終えたばかりだが、(オールスターロスター15人は)誰のリストでも高い優先事項になっていなかった。オールスターが非常に特別なものであることで、チームや選手たちとの間にお互いの利益がある。

――オールスターサタデーでは、WNBAのスターであるサブリナ・ヨネスクーがステフィン・カリーと3ポイントチャレンジで対戦する。これも、女子バスケの人気向上をリーグが認識している一例か。

間違いない。近年、女子バスケとWNBAが大きく成長するのを見てきた。ただ、とにかくステフとサブリナの功績もたたえたい。自分たちで思いついたんだ。2人はこれが面白くなると考えたんだ。本当に最高のアイディアが、強制ではなく真に自然なものであれば、最高の評価を受けると思う。

――今季は労使協定の1年目で、リーグのアウォードやボーナスのために最低65試合出場が条件となった。悪影響を受ける可能性のある一部選手からは、否定的な反応もある。想定していたことか。それとも驚いたか。

アウォードの資格を得られない選手たちからの反発は想定していた。ラインを設定することで、一部の選手が資格を得られなくなるのはほぼ当然のことだ。

契約が完全に保証されているリーグにおいて、プレイオフに出場しなかったり、負傷が理由だろうが、一部の試合を休むのが適切だからだろうが、出場試合数が減った場合でも、選手の報酬が減ることはない。選手には報酬の全額が支払われる。

本質的に重要なのは、尊敬や称賛に加え、金銭的な影響もあるということだ。そして、試合数の80%にあたる65試合の出場に制限することが公正だと感じた。

念のために言うと、一部で混同されていると思うが、我々は毎年450人の選手に一定の決まった額を払っている。(バスケットボール関連収入の)51%だ。

この規則を判断する適切な方法は、今季終了後、それらのお金がどのように分配されるかを見るしかないと思う。それから、誰がボーナスを受け取るのかを決めるのに、適切なインセンティブな導入を含め、全員にとってフェアな結果だったのかを問うのは公正だ。

だから、結果は予想されたことであり、不公平に思われるかもしれないような個々のケースがないということではない。今のところは、オールスター級の選手の出場が大幅に増えている。団体交渉において、チームも選手も、全員が必要だと理解していたことだ。特に、プレイに対して支払うかたちに近づいている新たなメディアパラダイムへと移りゆく中だからね。たとえ特定の試合でお気に入りの選手が休むことをファンが支持しても、その同じファンが『でもチケット代は100%にしないでくれ。自分が払うのも減額されるべき』と言うかもしれない。

それに、(NBA)コミュニティは団結し、理解していると言ったと思う。我々はエンターテインメントビジネスをしているんだ。時を戻し、選手がケガをしてもプレイするような状況にはしたくない。だが、選手が合理的に可能な限り多くの試合に出るようにするのは、ファンに対する我々の義務だ。

――つまり、まとめると、まだサンプル数は少ないにしても、選手参加方針は意図していた効果を出しているということか。

イエスだ。繰り返すが、シーズンはまだ約半分だ。だが、私はうまくいっていると思う。

――昨年は4選手が1試合70得点超を記録し、チームの1試合平均得点も再び増えた。これはリーグにとって良い傾向だろうか。

それについては今のところ中立的だ。リーグが高得点試合を望んでいるという誤解があると思う。リーグが望むのは、試合が競争的であることだ。

我々はドラフトで指名される選手のタイプや、スキルセットの変化を目にしている。ビッグマンを含め、選手たちは1990年代初頭に想像もできなかったようなショットを打つことができている。

また、各チームが守備をしなくなったという前提にも反対だ。それぞれ守備をしているよ。他と比べて守備が優れているチームはある。他と比べて守備が優れている選手はいる。だが、意図的に60点、70点を相手選手に許しているわけではない。彼らは地球上で最も腕の立つアスリートたちだ。

その上で、さらに攻守のバランスをとるために調整が必要かどうか、リーグオフィスのジョー・デュマーズ(バスケットボール運営部代表のエグゼクティブバイスプレジデント)を含め、運営部が注視しているのは承知している。

そういった小さな調整のひとつは、守備側の選手がフィジカルの駆使をどれほど許されるかという点かもしれない。攻撃過多だと不満を述べる人の一部は、多くの場合で真っ先に『ウチの選手はふさわしい判定をしてもらっていない』と言うがね。朗報なのは、かつてないほどに良いゲームになっているということだ。これらは対処可能な問題だよ。

――リーグは間もなく現在のメディアパートナーとの独占交渉に臨む。現在の契約が満了する2025年までに取引することになる。以前の交渉と比べてどのように違うか。

よりグローバルな交渉になるというのが違いだ。我々の主要パートナーである2社、『Disney』と『Warner Bros. Discovery』は、どちらもグローバルなストリーミングサービスを持つ。

NBAは選手の30%が米国外出身で、それは今後も増えていくばかりだ。200を超える国と地域で放送されている。そういったリーグで、特に今後10年で拡大する取引となれば、必ずよりグローバルな話し合いとなる。

――NFLは最近、プレイオフで配信のみという試合を行った。次の放映権契約で、NBAにおいても似たようなことはあるだろうか。

とても注目している。初期の結果は良好だった。長きにわたってコンテンツビジネスにおける自明の理だったことを示しているよ。真の王様はコンテンツということだ。特に上質なスポーツ中継はね。常に視聴者を引きつけるコンテンツだ。

独占的に配信サービスのみとなるかどうかを言うのは時期尚早だ。しかし、そういった配信サービスの一部は国内最大級であることも指摘すべきだろう。『Netflix』や『Amazon Prime』、『Disney』の配信規模は、伝統的なケーブル会社や衛星放送会社を上回っている。

さらに、若いファンは番組を見たい時にテレビではなく、まずスマホに向かう。ゆっくり時間をかけ、より良い仕事をする良い機会だ。

――リーグ拡大に関して、レブロン・ジェームズはラスベガスのチームのオーナーグループに加わりたいと公にしているが、どう思うか。メキシコシティは現実的な候補か。

レブロンほどの選手が史上有数の選手でいるだけでなく、オーナーシップにも加わりたいと夢を見ている事実は誇らしい。シャーロット・ホーネッツのマイケル・ジョーダンや、今ではアトランタ・ホークスのグラント・ヒルを見てきた。シャキール・オニールはサクラメント・キングスに、デイビッド・ロビンソンはサンアントニオ・スパーズに、ドウェイン・ウェイドはユタ・ジャズに関わっている。選手たちが素晴らしい現役キャリアを過ごすことを夢見るだけでなく、オーナーシップの一員となる機会とも見ていることは、このリーグ独特の特徴だと思う。

メキシコシティについては、一流のアリーナでレギュラーシーズンの試合をたくさん行ってきた。北米最大の市場で、アメリカにはヒスパニック系やメキシコ系のアメリカ人が多い。おそらく、拡大の次の波では実現しないが、ゆっくり時間をかけて非常に現実的になると思う。

――コミッショナーに就任して10周年を迎えた。最も困難だった課題は、パンデミックを乗り越えることだったか。

パンデミックの状況全体、そして検査と安全対策を通じて試合を再開するための方法を見つけたことは、コミッショナーとしてだけでなく、NBA全体にとって、私の最も困難な課題のひとつだった。

――前任のデイビッド・スターンはコミッショナーを30年務めた。自分もそれくらい長くと思っているか。

いや、私はもう32年もリーグで働いている。そのうち10年がコミッショナーだ。私がコミッショナーになった時よりも、デイビッドはもっと若い時に始めた。だから、私がコミッショナーを30年やることはないだろう。

――初のインシーズン・トーナメント開催と反響にあなたは満足していた。(Emirates NBA Cupへの)名称以外、次に何か変更を予定しているか。

確かに初のトーナメントに満足している。来季はいくつか調整するかもしれない。だが、迷っている理由のひとつが、現在放映権交渉に入っていることだ。それらの契約は来季から始まるのではなく、その翌シーズンからとなる。どういう変更をしていくか見るために、テレビパートナーたちとの関わりを深めることを少し控えている。

現在のパートナーたちの声明によれば、彼らは最初のトーナメントにとても満足していた。開催時期を変更すべきかどうか話し合ったんだ。もともとはミッドシーズン・トーナメントという名前だった。それをインシーズンに変更したんだよ。ミッドシーズンよりはシーズン序盤だったからだ。

いくつかのタイブレーカーや得点差の問題が大きく注目された。変更すべきかどうかについて、各チームや選手会と話しているところだ。一部の批判は理解する。しかし、最終的な問題は、何が代案になるかだ。グループプレイの試合数は多くないので、タイブレーカーは必要となる。

まだ話すには時期尚早だ。すぐに多くを変えたくない。まだ慣れ始めているところだからだ。中立地でのファイナルフォー開催ですら、まだ1回しかこなしていない。だから、適切な形式かをもっと理解するために、おそらく来季はおおよそ似たようなかたちを保つだろう。

――この数年で、リーグの20%にあたる6つのチームが買収された。全部ないし一部が売却され、その額は高値だった。リーグの健全性を反映しているのか。

大きな値上がりでの売却だった。だが、最も大事だと思うのは、リーグに加わった新オーナーたちが非常に長期的な視点を持ち、多くの場合でアリーナのアップグレードや新アリーナへの投資にすでに意欲を示し、非常にグローバルな視点を持っているグループで構成されているということだ。

彼らは全体に役立つ専門知識をリーグにもたらし、それを生かして、リーグ経営に深く関わりたいと意気込んでいる。

去っていくオーナーたちのこともすでに恋しいが、一方で同じくらいに新オーナーたちに興奮している。

原文:Q&A: Adam Silver talks participation policy, media rights deal and All-Star(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。