コートでのパフォーマンスが数字に大きく表れている選手たち

大西玲央 Reo Onishi

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開幕から2週間が経ち、少しずつ今季のチーム状況や、選手たちの仕上がりが見えてきた。今回はここまでの数字(日本時間11月4日現在)を見ながら、チームの結果やスタッツに大きく影響している主力選手たちを何人かピックアップしてみよう。

ネットレーティングから見る好調ヒート

まず注目したいのが、ネットレーティングという数字だ。このためにはまずオフェンシブレーティングとディフェンシブレーティングを説明する必要がある。当然各チームは攻める回数も守る回数も異なるため、それを平均化して比較するためにこのレーティングが存在する。

バスケットボールでは100ポゼッション(攻撃回数)あたりに換算することで、レーティングを算出している。オフェンシブレーティングは100ポゼッションあたりに獲得する得点数、ディフェンシブレーティングは100ポゼッションあたりに相手チームに許す失点数を計算したものだ。オフェンシブレーティングが高いほど良いオフェンスで、ディフェンシブレーティングが低いほど良いディフェンスであると見ることができる。

ネットレーティングはオフェンシブレーティングとディフェンシブレーティングの差を計算したものだ。チームの力を計測する際に使用されることの多いレーティングだが、同時に選手のレーティングも算出されている。この場合、一緒に出場している他選手の影響なども強く受けるが、その選手のチームへの影響力を測る数値として有効だ。

選手 チーム OFFRTG DEFRTG NETRTG
カイル・ラウリー MIA 114.3 94.2 20.1
ドノバン・ミッチェル UTA 117.4 97.7 19.7
タイラー・ヒーロー MIA 117.2 98.9 18.3
ボーヤン・ボグダノビッチ UTA 116.3 98.4 17.9
ジミー・バトラー MIA 115.1 97.8 17.3
ロイス・オニール UTA 117.1 100.9 16.2
バム・アデバヨ MIA 106.2 91.5 14.7
ニコラ・ヨキッチ DEN 108.3 93.8 14.5
デマー・デローザン CHI 106.4 94.5 11.9
ステフィン・カリー GSW 110.8 99.3 11.6

上の表は、平均30分以上出場している選手のネットレーティングランキングだ。マイアミ・ヒートのカイル・ラウリーはオフェンシブレーティングが114.3、ディフェンシブレーティングが94.2、その差分である20.1がネットレーティングとなり、現在リーグトップの数字を誇る。

実際ラウリーの加入したヒートはここまで6勝1敗と絶好調で、ラウリーというプレイメイクのできるガードが加わったことで、これまでオールラウンダーとしてチームを牽引していたジミー・バトラーがよりスコアラーとしての役割に集中できるようになり、彼自身も数字を大きく伸ばしている。

ヨキッチへの比重が高いナゲッツ

ランキングを見ると、1敗しかしていない好調なチームの選手がほとんどであるなか、突出しているのが4勝3敗という成績ながらも、14.5で8位にランクインしているニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)だ。

なぜ同じ高順位にいながらも、成績に差が出ているのかは、その選手が出場していないときの数字を見てみるとわかりやすい。

例えばヒートの場合、ラウリーがコートに立っている時のチームのネットレーティングが20.1なのに対して、ベンチに下がっている時は11.8。数字が落ちてはいるものの、高めの基準を保てているのがわかる。バトラーに関しては、出場時が17.3なのに対してベンチにいる時も17.6と高く、ヒートがひとりの選手に頼り切っていないことがわかる。

一方で、ヨキッチは自身の出場時が14.5なのに対して、ベンチに下がっているときはマイナス21.4まで大幅に落ちる。オフェンシブレーティングは108.3から88.9、ディフェンシブレーティングも93.8から110.3まで数字が悪化しているのだ。

ヨキッチの出場していない時間帯でいかに数字をプラスに近づけることができるかが、しばらくはナゲッツの課題となるだろう。

USG%

ネットレーティングと合わせて、もうひとつ見ておきたい数字がUSG%(ユーセージ%)だ。簡単に言うと、選手がどれだけチームのオフェンスに関わっているかを数値化したものだ。フィールドゴール試投数、フリースロー試投数、ターンオーバー、チームの攻撃回数などを元に算出される。

現在30分以上出場している選手のUSG%でリーグトップタイなのがダラス・マーベリックスのルカ・ドンチッチの34.5%だ。しかしながら、ネットレーティングはマイナス14.6とマイナスに転じており、ボールを多く持ちながらも、それがチームの上昇に繋がっていない状態となっている。

一方で、ユタ・ジャズのドノバン・ミッチェルはUSG%がリーグトップに並ぶ34.5%でありながら、ネットレーティングは2位の19.7と、ミッチェルがボールを持つことでジャズに良い結果をもたらしているのがわかる。

ネットレーティング1位のラウリーに関しては、USG%が15.2%と決して高い数字ではない。トップ10にランクインしているチームメイトのタイラー・ヒーロー、バトラー、バム・アデバヨの方がそれぞれ10%以上高く、ラウリーはフィニッシュは周りに任せながらも、ゲームメイクでチームに大きく貢献していることが見えてくる。


まだ7、8試合の数字であるため、今後1試合増えるだけでも内容は大きく変動する。こういった数字だけで、選手やチームの良し悪しを全て計測するべきではないが、ひとつの指標であることには違いない。こういったポイントを意識しながら選手のプレイを見ることで、単純な得点やアシストといった数字以上に、どうチームに影響を与えているのかをチェックする楽しさが出てくるだろう。


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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。