7月30日(日本時間31日)からフロリダ州オーランドのディズニー・ワールド・リゾートでNBA 2019-20シーズンが再開されて以降、各チームの選手、コーチ、そして試合を裁く審判も試合前の国歌斉唱の際、腕を組み、コートに片膝をつく行動をとっている。これは、アメリカ国内だけではなく、世界中のあらゆる差別等の社会問題に意識を向けさせるための行動だ。
7月30日に行なわれたニューオーリンズ・ペリカンズ対ユタ・ジャズの一戦を契機に、今後もNBAはメッセージ入りのジャージー、Black Lives MatterのメッセージTシャツを着用し、社会に変革が必要であることを訴えかけていく。再開後の初戦となったペリカンズ対ジャズの一戦について、『AP』がリポートしている。
以下、『AP』記事抄訳。
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黒人の選手も、白人の選手も、そして両チームのコーチも腕を組み、コートに片膝をついた。なかには拳を天井に向かって上げる選手の姿もあった。
NBAはシーズン再開後の初戦で、力強いメッセージを発信した。
試合前のアメリカ国歌『The Star-Spangled Banner』斉唱の際、ニューオーリンズ・ペリカンズとユタ・ジャズの選手とコーチは、コートに片膝をつき、互いに腕を組んだ。これは、平等や人種問題等を社会に訴えかけるためにNBAがとった行動だ。
1980年代序盤から、NBAは国歌斉唱の際に必ず起立するというルールを設けた。しかし、アダム・シルバーNBAコミッショナーは、この規則を現在の社会情勢にアジャストすることを発表した。
「各チームが一丸となり、社会正義を訴える平和的な抗議行動をとる姿勢を尊重しています。現在の特異な状況を踏まえれば、国歌斉唱の際に起立しなければいけないという規則を強要することはできません」。
ペリカンズのアルビン・ジェントリー・ヘッドコーチとジャズのクイン・スナイダーHCは、試合前に隣同士に並び、腕を組み、片膝をついた。
スナイダーHCは、試合中のインタビューに応じた際、「我々全員が一つになり、社会正義に対する意識を持ってもらえるようアピールすることは重要だ」と述べた。
「変化をもたらすため、全選手、コーチが一丸となり、やれることをやる」。
多くの選手はBlack Lives Matterと書かれた黒のTシャツをウォームアップ時に着用し、試合でも“Equality”や“Peace”といったメッセージ入りのジャージーを着用する選手の姿も見られた。
新型コロナウイルスにより3月中旬からシーズンが中断して以降、アメリカでは黒人の男女が警察官による不当な暴力により命を落とす事件が続き、人種差別撲滅に向けた動きが活発化している。
ジャズとペリカンズのコーチは、社会に変化を求め、それぞれが人種問題等に関する教養を身につける行動を起こすことを義務と語った。ペリカンズ対ジャズの一戦で見られた一連の抗議行動は、今後の試合でも見られるだろう。
今回のプロジェクトは、NBAとNBA選手会が共同で行なっている。試合前にはボストン・セルティックスのジェイソン・テイタム、オクラホマシティ・サンダーのクリス・ポールらのメッセージ動画も会場のビジョンに映し出された。
ジェントリーHCは、再開後の初戦がアメリカ公民権運動の指導者を長年務めた故ジョン・ルイス下院議員の葬儀から数時間後に行なわれた偶然に感謝し、およそ60年前に故人が始めた活動が今後も続くと話した。
「若い世代と話す機会があれば、ここからが始まりだと思っている。私には20歳と22歳の息子がいる。息子たちも、この国で変化を起こすためにこの上ないタイミングと思っているはずだ」。
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