なぜピストンズは勝てないのか? カニングハムにはない歴史的連敗の責任

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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NBAの歴史において、悪いチームはたくさんあった。史上ワーストという不名誉な称号を手にするのは、その中で1チームだけだ。

今季のデトロイト・ピストンズは、その称号を手にする可能性がある。

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ピストンズはすでに単一シーズンにおける最長連敗記録を更新した。そして12月30日(日本時間31日)のトロント・ラプターズ戦で敗れれば、29連敗というNBA新記録を樹立する。

現在のペースなら、ピストンズは今季を6勝で終えることになる。82試合のシーズンにおいて、1972-1973シーズンにフィラデルフィア・76ersがあげた9勝を下回る歴代最少の白星だ。もちろん、ピストンズは昨季もリーグワーストのチームだった。それでも17勝をあげている。経験を積み、ケイド・カニングハムがフルシーズン稼働し、指揮官が新しくなって、向上も期待されていた。

なぜ、ピストンズはこれほど大きく後退してしまったのだろうか。

ピストンズはどれほど悪い?

フィット感を無視したトロイ・ウィーバーのロスター編成

ピストンズにはタレントが何人かいる。問題は、彼らの誰もうまくフィットしていないことだ。

現代のNBAは、スター選手が仕事できるスペースをつくることに基づいている。その点で、ピストンズのロスターは大きく逆行している。彼らは各チームが常にコートに最低3人のシューターを置こうとしてきた理由を示しているのだ。

今季のピストンズで10試合超に先発出場した選手は8人いる。そのうち、3ポイントショット成功率がリーグ平均(36.5%)を上回っているのは、アイザイア・スチュワートとボーヤン・ボグダノビッチの2人のみ。そしてスチュワートはオープンでなければ打たない、試投数が少ない選手だ。

ピストンズは3P成功数で最下位、3P試投数と成功率で29位となっている。

また、スチュワート、ジェイレン・デューレン、ジェームズ・ワイズマン、マービン・バグリー三世の4人の若きビッグマンのうち、ショット力があるのはスチュワートのみ。アサー・トンプソンは1990年代のセンターのようなプレイをするウィングで、彼もショット力がない。

ロッタリーピックであるジェイデン・アイビーは、別のロッタリーピックのキリアン・ヘイズのためにスターティングラインナップから外れた。数少ない光明のひとつである新人マーカス・サッサーは、出場時間を見つけられていない。

ポジションと選手の弱点という双方において重複が多いロスターとなっており、互いにうまくフィットするのはほぼ不可能となっている。

Pistons
(Getty Images)

相次ぐ負傷の不運

ピストンズにはベテランたちのステップアップが必要だった。それが実現していない一因は、彼ら自身のせいではない。

ボグダノビッチは昨季のチームベストプレイヤーだった。彼のショット力は現ロスターが強く必要とするものだ。そのボグダノビッチが、開幕から最初の19試合を欠場した。そして彼が戻ってきた時、ピストンズはすでにシーズンを失っていたのだ。

アレック・バークスも、昨季堅実だったベテラン選手だ。その彼も前腕の負傷で多くの試合を欠場し、良いプレイができていない。モンテ・モリスは長くリーグ有数の控えポイントガードだったが、シーズンを通じて欠場している。堅実なディフェンダーで、ここ数年は素晴らしいシューターだったジョー・ハリスも、昨年足首に重傷を負ってからは以前と同じではなくなった。

クラッチタイムの問題

ニコラ・ヨキッチは以前、「良いチームはプレイが悪くても勝ち、悪いチームはリードしていても常に試合を落とす道を見つけてしまう」と言った。ピストンズはそれを証明している。

ピストンズには何度か勝つ機会があった。5点差で残り5分を迎えるクラッチゲームは14試合あったのだ。その14試合での成績は1勝13敗。そして『NBA Stats』によると、100ポゼッションあたり60.1点も差をつけられている。

良くない状態を示すひとつが、クラッチタイムのショット試投数3本超の選手のうち、カニングハムの成功率26.1%という数字がチーム2位という事実だ。アイビーはショットの半分を沈めているが、守備のミスで終盤にコートに立ち続けるのが難しくなっている。全員が等しく悪いのだ。

ドラフト失敗の歴史

現在のピストンズは、毎年ロッタリーチームとなろうとすることへの反面教師とすべきだ。その位置から抜け出すのは大変なのである。

ドラフトで異なる選択をすれば、違う道に向かっていたかもしれない機会は何度かあった。2020年のドラフトで7位指名権を持っていたピストンズは、タイリース・ハリバートンではなくヘイズを選んだ。16位と19位の指名権でタイリース・マクシーを獲得できたが、スチュワートとサディック・ベイを選んでいる。

2021年の全体1位指名だったカニングハムは、まずまずの指名だが、振り返ってみれば、スコッティ・バーンズやエバン・モーブリー、フランツ・バグナー、アルペレン・シェングンといった選手たちのほうが良かっただろう。

過去2回のドラフトで指名したアイビー、デューレン、トンプソン、サッサーの選択について評価するにはまだ早すぎる。だが、これらの指名を巡っては大きな落胆もあった。

Cade Cunningham
(NBAE via Getty Images)

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ピストンズ連敗でケイド・カニングハムを責めるべきではない理由

再びドラフトを行ったら、全体1位で指名されないかもしれない。だが、カニングハムが優れた選手であることは変わらない。1試合平均23.3得点、7.1アシスト、4.2リバウンドを記録している。

ここ6試合でカニングハムは本当にピストンズを勝利に導こうとした。この6試合で平均31.7得点、7.2アシスト、FG成功率57.1%、3P成功率46.4%を記録している。それでも足りなかった。

これらの試合の終盤で、カニングハムは今にも泣きだしそうなところを見せた。ピストンズには、複数のベテランが彼を助けることが必要だ。この立場で彼以上にうまくやれる若手選手はいない。

NBAはショットがとにかく重要となっているが、このチームにはそれがない。悪いチームでも、3Pが好調であれば、なんとかしてサプライズの勝利を収めることができる。ロングショットを打とうとする選手が十分ではないピストンズは、それすらできないのだ。理論上も良くなく、練習でひどく、試合ではチャンスがないというチームなのである。

こういったすべてが合わされば、史上最悪のチームとなる。

原文:How are the Pistons this bad? Blame bad management for Detroit's historic losing streak, not Cade Cunningham(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。