サンズの渡邊雄太がクリニックを自主開催「日本人NBA選手として子供たちに対してできることが沢山ある」

大西玲央 Reo Onishi

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7月15日、東京都にある有明アリーナのサブアリーナにて、フェニックス・サンズの渡邊雄太が都内の高校で活動するバスケットボール部の男女20名ずつを集め、バスケットボールクリニックを自主開催した。

『渡邊雄太主催バスケットボールクリニック』と銘打たれた同クリニックは、当初予定されていた時間を超えて行われるほどの充実ぶりで、午前10時から午後5時過ぎまで基本的なドリルやバスケットボールに必要な座学、さらに渡邊との昼食タイムを経て、景品をかけたシューティングコンテストなどが行われ、参加者の笑顔は絶えなかった。

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渡邊が1から考えたプログラム

NBAの試合前に選手たちがハドルを組み掛け声を入れてからコートに走り込んでいくのがよく見られるが、このクリニックでも渡邊を中心に選手たちが大きなハドルを組み「Family on 3. 1, 2, 3 FAMILY!」という掛け声で開始された。

しっかりとアップを終えてゴール近くのシューティングから始まると、当初は緊張が見られた学生たちから楽しそうな笑い声、渡邊のプレイへの感嘆の声が聞こえるようになっていった。

クリニックは単純なシューティングから、ディフェンスのタイミングをずらすフィニッシュ方法や、ピック&ロールからのバリエーションなど実戦で使用できる技まで多岐に渡り、渡邊本人が学生たちのことを考えて真剣にひとつひとつのドリルとプログラム全体を作ったことが伝わる内容だった。

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Yuta Watanabe eats lunch with kids
(Reo Onishi)

午前の部を終えると、渡邊は参加者たちと一緒に談笑しながら昼食をとった。クリニックを通して渡邊が離脱する時間はほとんどなく、終始学生たちと一緒に過ごしていたのが印象的だった。

午後の部では、バスケットボールのルールを織り交ぜた鬼ごっこ、ノックアウト形式のフリースロー大会などのゲームが行われた。本来は自身も混ざってプレイするつもりでいたというが、左ふくらはぎを軽く痛めていることから、今回は見送ることとなった。

この後、日本代表での活動も控えているだけに負傷は気になるところだが、「アメリカでピックアップゲームをやっていたんですけど、そのときにちょっと痛めただけで、特に動きにそんなに制限があるわけではないです」と説明した。

「今はそんなに無理してやる時期でもないんで、代表合流も控えて、悪化でもさせたらちょっと意味なくなっちゃうんで。あれ(クリニック)ぐらいの動きでは痛みも出ないです。ケガ自体は全然そんなに深刻なものではないですし、大したこともないんで、ちょっと慎重になっているというだけです」

そんな状態でも、渡邊は子供たちと長時間のクリニックで一緒に時間を過ごすことを選んだ。終盤には自身が普段行うシューティング練習を披露し、体育館の3ポイントラインの遥か遠くから放たれるディープ3Pを決め続けると、会場からは驚きの歓声が沸き起こった。

Yuta Watanabe Clinic
(Reo Onishi)

クリニック開催への熱い想い

最後には、クリニックを通して行われたミニクイズの正解者や、ミニゲームの勝者合計12人にサイン入りのバスケットボールシューズがプレゼントされた。

クリニック終了後の質疑応答では、日本でクリニックを開催することの重要性を語った。渡邊は「自分が現役のNBA選手であるうちに絶対に1度クリニックを開催したい」と常々思っていたことを明かした。

「日本にてNBA選手と触れ合う機会っていうのは、なかなか子供たちはないと思っていて、自分は日本人のNBA選手として今の日本の子供たちに対してできることって沢山あると思うんです」

アメリカでは多くのNBA選手が地元でクリニックを開催したり、海外出身選手なら母国でクリニックを行うことが頻繁に見られる。実際、ルーク・バー・ア・ムーテがカメルーンでクリニックなどを開催し、そこからパスカル・シアカムやジョエル・エンビードが台頭したりしている。

ここ数年で一気に増えているリーグのフランス人選手なども、ニコラ・バトゥームやトニー・パーカーが母国でそういった活動を繰り広げてきた結果だ。

渡邊は「力があってもチャンスのない子供たちとかもたくさんいると思いますし、少しでも多く人目に触れるだったり、自分をアピールできる場所を提供してあげられれば」と今後のクリニック開催への想いを語った。

「やっぱりまだ日本でクリニックだったりキャンプをやるっていうのがそこまでまだ馴染みのないなかでこの第1回を無事終えることができた。これから2回、3回と僕自身はどんどんやっていきたいという風に思っているんで、今後も選手の発掘とかも含めて、やりたいなっていうの(気持ち)は正直すごいあります」

日本人選手のNBAへの道を切り拓いた渡邊が、今度は次の世代の子供たちの新たな道筋を提示しようとしているのだ。

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大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。