【NBAトレード評価】ラプターズとペイサーズによるシアカムのトレードをどう見るか

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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NBAドラフト2016でトロント・ラプターズに全体27位で指名されたパスカル・シアカムは、ラプターズの最も成功したドラフト例のひとりとなった。だが、トロントでの彼の時間は終わりを迎えたようだ。

ラプターズ、インディアナ・ペイサーズ、ニューオーリンズ・ペリカンズによる三角トレードの一環として、シアカムはペイサーズに移籍する。タイリース・ハリバートンとのコンビは魅力的だ。一方、ラプターズは複数の選手とドラフト指名権を手にする。

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ここでは、ラプターズとペイサーズにとって今回のトレードがどのようなものかを評価する。

パスカル・シアカムのトレード内容

ペイサーズ獲得

  • パスカル・シアカム
  • ドラフト2巡目指名権(ペリカンズから)

ラプターズ獲得

  • ブルース・ブラウン
  • ジョーダン・ウォーラ
  • カイラ・ルイスJr.
  • 2024年のドラフト1巡目指名権
  • 2024年のドラフト1巡目指名権
  • 2026年のドラフト1巡目指名権

ペリカンズ獲得

  • 未定

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ペイサーズの評価

このトレード評価の決め手となるのは、ペイサーズが夏にシアカムと再契約を結べるかだ。シアカムは無制限フリーエージェントとなる。資産を引き換えにして、わずか数か月で彼が別の球団と契約するのを見ることになったら大惨事だろう。

ペイサーズにはトレードでシアカムを手にする利点がある。バード権を得ることで、他球団よりも年俸を高くすることができる。払い過ぎとしなければいけないかもしれないが、これまでペイサーズはそれでもFAでトップクラスの選手を獲得できなかったチームだ。彼らの最高のFA補強は、2011年のデイビッド・ウェストまでさかのぼる。

ペイサーズがシアカムと再契約を結ぶとしよう。タイリース・ハリバートンと組ませることで、シアカムはオールNBAチーム入りした2020年や2022年のころよりもさらに優れた選手となれるかもしれない。

ここ数シーズンのシアカムは、ラプターズで狭いスペースと相手守備からの負担が大きい中で戦ってきた。だが今回、3ポイントショットがリーグ26位のチームから、6位のチームに移籍するのだ。相手チームがシアカムへのマークを増やすのは、もっと難しくなるだろう。

また、シアカムはトランジションやアーリーオフェンスにとてもうまくフィットする。守備が整っていない時の彼は危険な選手だ。ポストの良い位置をとったり、ミスマッチを見つけてそこからうまくやってみせる。

ドラフト指名権を手放すのは痛い。だが、次のドラフトは目玉となる選手があまりいないと見られている。ペイサーズが好成績を残し、2026年の指名権が1巡目の終盤となることも期待される。多くの2巡目指名権なども残っている。

評価:B

ラプターズの評価

シアカムという生え抜きのスターを失うのは痛い。すぐにさらに良い選手を加えられなければなおさらだ。だが、これはラプターズに必要な後退だった。現在のラプターズは機能していない。スコッティー・バーンズはスターのポテンシャルを見せたが、まだ22歳で29歳のベテランであるシアカムとはタイミングが合わなかった。

数か月でFAとなり、別のチームに移籍する可能性があるだけに、シアカムにとっては素晴らしい状況だ。先日、ラプターズがデトロイト・ピストンズとのトレードでFAとなるOG・アヌノビーを放出した際、引き換えにイマニュエル・クイックリーやRJ・バレットとともに獲得したのは、ドラフト2巡目指名権だった。こういった状況で良いドラフト指名権を得るのがいかに難しいかを示している。

これからラプターズがどんな選手を加えるにしても、一番の基準となるべきはバーンズだ。ブラウンはそのバーンズと本当にうまくフィットする。ブラウンは何でもやるロールプレイヤーであり、周囲のスター選手を輝かせることができる。

また、ブラウンは1番から4番までスイッチができるタフなディフェンダーだ。3ポイントショットは今季成功率が32.7%に落ちたが、以前は37%だった。プレイメークも少し可能で、大事な局面で恐れないことは、昨季のNBAファイナルでの大活躍で証明済みだ。

ウォーラはあまりペイサーズの中心ではなかった。25歳のウィングで、キャリアを通じてショットに優れ、良いエネルギーでプレイしてきた。夏にFAとなる。

ルイスJr.は2020年のドラフトで全体13位指名された選手だ。不運なケガに加え、チームの層の厚さもあり、ペリカンズでの4年間はローテーションに割って入ることができなかった。だが、ドラフト指名外ながら素晴らしいスピードを持った有望なポイントガードだ。

今回のトレードは、ラプターズの財政状況を一変させる。シアカムを残し、マックス契約で再契約することを選んでいたら、ラプターズは今後、バーンズと新契約を結ぶ際にサラリーキャップの問題に直面していただろう。だがこれで、柔軟性を手にし、夏にFA選手を加えることができる。ブラウンの契約には来季の2300万ドル(約34億400万円/1ドル=148円換算)のチームオプションが含まれており、ラプターズには様々な道がある。

この取引でメインとなる2チームは、非常に異なる状況にあり、両者にとってウィンウィンとなるトレードだ。ラプターズの未来は明るくなり、ペイサーズはよりうまくフィットし、すぐに役立つことができる選手を手に入れた。

評価:A

ペリカンズの評価

ルイスJr.はペリカンズであまり試合に出ていなかった。ペリカンズはラグジュアリータックス(ぜいたく税)を下げるためのコストカットとして、ドラフト2巡目指名権とともに彼を手放すのだ。『ESPN』のボビー・マークス記者によると、このトレードでペリカンズは1800万ドル(約26億6400万円)を節約できる。

評価:C

原文:Pascal Siakam trade grades: Pacers get a pairing for Tyrese Haliburton, Raptors look towards the future(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。