トリビュートの映像や、選手たちの笑みや涙、ファンのとてつもないバイタリティー。その夜は、すべてがあった。
優勝リングの授与式に始まり、試合がオーバータイムのドキドキする展開となった10月22日(日本時間23日)のトロント・ラプターズの開幕戦では、過去、現在、未来がすべて示された。
まずは、オーランド・マジックとのシリーズからゴールデンステイト・ウォリアーズとのファイナルまでラプターズのポストシーズンの軌跡を振り返る映像だ。もちろん、球団の歴史をすべて振り返ったわけではない。ただ、ファンや選手たちを感動させた。
試合後、フレッド・バンブリートは映像について問われると「本当に覚えているのは第6戦だけで、そこに至るまでの旅路を忘れてしまっているものだ」と述べた。
「街や国のファンにとってどんな意味があったかを思い出させるものでもあった。そのすべてを振り返って、リングをもらい、最後は試合にも勝った。クールでとても良い夜になったね」。
次に「現在」、それはリング授与式だ。予想されたように、純粋な高揚感に包まれる20分間だった。スタッフから始まり選手たちへと、ひとりずつNBAコミッショナーのアダム・シルバーからリングを受け取る。だが、ラリー・オブライエン・トロフィーが運び入れられてから高まっていったアリーナのエネルギーが、もっとも激しく爆発したのは、最後の名前が呼ばれた時だ。カイル・ラウリーがコート中央でリングを受け取るのを見て、約2万の人々が感極まった。
試合前、ラウリーは「個人的に僕がキャリアを通じてずっと待ってきたことのひとつだ」と喜んだ。
「この街と国は24年も待った。楽しもう。エキサイティングな夜になる。建物の中に活力が満ちていくね。最高の雰囲気になるだろう」。
ラウリーはチームの原動力だった。一貫してチームを予想外の高みに引き上げ、コートで巨匠として振る舞ってきた。そして、彼はこれからもそうあり続ける。
そして試合の時間だ。そこには未来が垣間見える。
ラウリーやマルク・ガソルといったベテランたち以上に目立ったのが、パスカル・シアカムやバンブリート、OG・アヌノビー、テレンス・デイビスといった若い選手たちだ。全員が僅差での勝利に貢献した。
特にシアカムとバンブリートは輝き、前者は38分間のプレイで34得点、18リバウンド、5アシスト、1ブロックを記録。第4クォーターのファウルアウトまで、大事な時間でいかに強力な存在となるかを示した。試合後、ニック・ナース・ヘッドコーチは「かなり良かったね」と、シアカムを称賛している。
バンブリートも44分間のプレイで34得点、5リバウンド、7アシスト、2スティールを記録。完璧なピック&ロールや、ボールを持つたびに知的な選択をし、これまで以上にプレイをつくり、ドリブルからのショットもよく、難しいショットも見事に安定して決めた。
ラプターズが望んでいた以上に接戦となったかもしれないが、まだ25歳でこれから全盛期という若いふたりがいかに優れているか、彼らやさらに向上していくためのこれからの主軸たちのポテンシャルが示された一戦となった。
ラプターズの開幕戦は、過去、現在、未来のすべてが少しずつ見られた。このような瞬間は、なかなかない。たとえラプターズが再びタイトルを勝ち取ったとしても、この特別な瞬間が繰り返されることはないだろう。
だが、この日の夜は、それがあった。
シアカムは笑顔で「またお祝いするためだけに、今夜は最後のディナーをするかもね」と述べた。
「でも、それからはシーズンに突入だ。僕たちはワクワクしている」。
原文:One Ring to Rule Them All: On the Raptors’ Unforgettable Season Opener by Joshua Howe/Raptors.com(抄訳)