【NBAトレード評価】アヌノビーやバレットが移籍したニックスとラプターズのトレードをどう見るか

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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しばらく前から動く必要のあったトロント・ラプターズが、ついに大きな動きを見せた。OG・アヌノビーを放出するトレードでニューヨーク・ニックスと合意したのだ。

今回の取引が各チームの様相を変えることは確かだ。ここでは、ラプターズとニックスのトレードを評価する。

 

OG・アヌノビーのトレード内容

ニックス獲得

  • OG・アヌノビー
  • プレシャス・アチューワ
  • マラカイ・フリン

ラプターズ獲得

  • RJ・バレット
  • イマニュエル・クイックリー
  • 将来のドラフト2巡目指名権

ラプターズの評価

RJ Barrett 08292023
(FIBA)

アヌノビーは非常に優れた選手だ。もっと早くに取引していれば、ラプターズはさらなる見返りを手にしていたかもしれない。アヌノビーは今季終了後に無制限フリーエージェント(FA)となる。そのために見返りが月並みとなった。

財政的にも、フィットの問題からも、アヌノビーとパスカル・シアカム、スコッティ・バーンズの3人全員をキープすることはできなかった。見返りなしでアヌノビーを失う深刻なリスクがあったのだ。

その観点から言えば、この取引は理にかなっている。バレットとクイックリーは優れた選手たちだが、ラプターズのファンが望んでいた最大級の見返りではない。だが、少しその点は脇に置いておき、彼らが得たことを見ていこう。

バレットは故郷のチームが必要としていたショットクリエイトをもたらすことができる。キャリア通算の3ポイントショット成功率は34%。ラプターズのショット力の欠如を解決するのには役立たないだろう。だが、少なくともショットを打てるようになるはずだ。

キャリアを通じ、バレットは効率の点で苦しんできた。今季はトゥルーシューティング成功率が自己最高の53.6%だが、それでもリーグ平均を4.4%下回っている。現在は4年1億700万ドル(約151億9400万円/1ドル=142円換算)の契約の1年目だが、23歳という年齢から改善の余地はある。

クイックリーは今回の取引でより興味深い存在だ。ニックスではベンチスタートで、あまり活用されていないようだった。昨季はシックスマン賞レースで受賞したマルコム・ブログドンに続く2位だった。

非常に感覚が優れたディフェンダーで、通算3P成功率37%と堅実。ドリブルからプルアップで打つことも、ピック&ロールで創造力をもたらすこともできる。フローターは有数の出来で、ラプターズが強く必要としていた、リムにプレッシャーをかけられるガードとなるだろう。

また、クイックリーは数年にわたってアドバンスドスタッツが素晴らしく、ベーシックなボックススコアのスタッツにとどまらない価値を見せている。

しばらく前からクイックリーはトレードが噂されていた。ニックスが延長契約で合意に達することができなかった時から前兆はあった。昨季プレイオフでは消えていたが、マイアミ・ヒートとのシリーズでは足首のケガと闘っていた。

より大きな役割で活躍できれば、24歳のクイックリーは今回の取引における掘り出し物となるかもしれない。その場合、今後のラプターズにとって、今よりもはるかに良い取引となるかもしれない。

評価:B-

O.G. Anunoby 02022023
(NBA Getty Images)

ニックスの評価

アヌノビー以上に完璧なトム・シボドー・ヘッドコーチのための選手がいるだろうか。年間最優秀守備選手賞の可能性も秘めた鼻っ柱の強い選手で、レーンで混乱を引き起こし、複数のポジションでうまく守れ、素晴らしい努力を見せる。3P成功率もキャリア通算37.5%と堅実で、打つことを恐れない。

NBAのどのチームも、ショットを打ち、守ることができるウィングスパン6フィート7インチ(約201センチ)のウィングを必要としている。アヌノビーはそういったタイプの最高級のひとりだ。オールスター選手ではないが、ジェイレン・ブランソンやジュリアス・ランドルをさらに向上させられる。

アヌノビーはFAとなり、夏に巨額の契約を要求するだろう。だが、それだけに見合う存在だ。そしてニックスは、他球団よりも彼に多くを提示するバード例外条項があることを知っている。これにより、バレットの負担を減らすことができ、クイックリーは(不明な理由で)いずれにしても長期計画ではないようだった。

アチューワは才能あるビッグマンで、ミッチェル・ロビンソンがシーズン残りを全休することになったニックスの穴埋めに役立つ選手だ。スターターレベルの選手ではないが、優れたディフェンダーで、まだ完成されていない。現在は負傷中のジェリコ・シムズと、アイザイア・ハーテンシュタインの控えとして出場時間を競うはずだ。

NBA入りしてからの最初の3シーズン、フリンはあまり良くはなかった。アドバンテージをつくり出すことができず、ポイントガードとしてのインパクトが限られていた。だが、4年目になってひと皮むけたようで、ラプターズでベンチガードとしてもっとプレイできるだろう。

ニックスが手放さなければいけなかったドラフト指名権が2巡目のひとつだけだったのは素晴らしい。彼らは多くの1巡目指名権を持っており、今後さらに動くために取っておくことができる。今回の取引は、今、そして将来においてニックスをより良いチームとするものだ。

評価:A

※この記事はスポーティングニュース国際版の記事を翻訳し、日本向けに一部編集を加えたものとなります。
翻訳:坂東実藍
編集:スポーティングニュース日本版編集部

Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。