対応策ないニコラ・ヨキッチのシンプルなプレイを分析 守備を打ち破る得点力とパス能力

Scott Rafferty

坂東実藍 Miran Bando

対応策ないニコラ・ヨキッチのシンプルなプレイを分析 守備を打ち破る得点力とパス能力 image

「ニコラ・ヨキッチはユニークな選手だ」というのは控えめな表現だ。

今ではありふれた言い方だが、ヨキッチは現在のような高みに成長するとは思われていなかった。NBAドラフト20147では全体41位指名。「筋肉なし」の「平均的アスリート」がリーグでどれほどできるのか懸念されたのが大きかった。

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ヨキッチは今でも走り合いでNBA選手の大半に勝てないだろう。跳躍力もあまりない。だが、それでも歴代最高級の選手となった。

ここ4シーズンのヨキッチは、試合のたびに約30得点を含むトリプルダブルを達成するような好成績を収めてきた。攻撃に関してはできないことが何もないようなところまできている。ただ、特に賢いところがいくつかあり、ナゲッツは彼の支配的得点力や別次元のビジョンを生かしてきた。

相手の守備を破り続けるヨキッチのプレイを分析する。

ニコラ・ヨキッチのシンプルなプレイに対応策なし

🎥 プレイ

✏️ 分析

コートにいるのは、ヨキッチとケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、クリスチャン・ブラウン、ジャスティン・ホリデー、ペイトン・ワトソン。コールドウェル・ポープが右ウィングの3ポイントライン付近でポゼッションを始め、ホリデーは左コーナーに位置し、ブラウンとワトソンは反対側のエルボーに陣取る。

ハーフコートを越えるとすぐ、ヨキッチはコールドウェル・ポープにパスを出す。

Nikola Jokic vs. Spurs No. 1
(NBA)

ヨキッチは右エルボーでブラウンのスクリーンを受ける。

Nikola Jokic vs. Spurs No. 2
(NBA)

ブラウンのスクリーンでヨキッチは一定のスペースを手にし、ポストプレイを披露する。

コールドウェル・ポープからボールが返ってくると、ヨキッチは右側からヘルプがないかを確認する。

Nikola Jokic vs. Spurs No. 3
(NBA)

中央が混雑する中、ヨキッチはベースライン側にスピンし、レイアップを決めた。

Nikola Jokic vs. Spurs No. 4
(NBA)

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🤔 重要性

ヨキッチに低い位置でボールを預け、相手を調理させるのは、第一の選択肢だ。

NBA.com』によると、今季のヨキッチは攻撃の約4分の1がポストプレイで、リーグ最高の数字を残している。ポストアップから平均1.11得点をあげており、基本的には効率的だ。

これらの数字は目新しいものではない。ローポストにおけるヨキッチの支配力に匹敵しそうなのは、ここ数シーズンでジョエル・エンビードしかいなかった。

6フィート11インチ(約211センチ)、284ポンド(約129キロ)のヨキッチとポストで張り合えるサイズの選手は少ない。大半のディフェンダーを苦しめられる。ただ、バスケットを背にしてからのスコアラーとしてヨキッチを過去最高級の選手としているのは、そのフットワークとタッチだ。どちらの手でも、小さなフックショットやフローターでフィニッシュできる。フェイクやアップ&アンダーでディフェンダーを苦しめる。

紹介したプレイではやらなかったが、ナゲッツはヨキッチにボールを返した選手にクリアアウトさせることが多い。相手ディフェンダーがついてくれば、ヨキッチはさらにスペースを手にすることになる。

Nikola Jokic vs. Warriors
(NBA)

ヨキッチが相手にとって厄介なのは、ワールドクラスのスコアラーというだけではないことだ。ヨキッチはパサーとしても非常に優れている。

前述のクリアアウトに関して、カッターを守る相手選手が集中していなければ、ヨキッチとナゲッツはバックドアにつなげることができる。

ヨキッチは眠っていてもこのようなパスを出せるのだ。

ヨキッチがシンプルにボールを返すハンドオフもある。

今季のヨキッチはミッドレンジからのショットの成功率が約50%だ。スペースをつくることができるセンターがいると、相手チームのビッグマンをバスケットから遠ざけることができる。そしてそれがチームメイトのためにペイントを空けることにもなるのだ。

以下のプレイでヒューストン・ロケッツ戦での背番号28、アルペレン・シェングンを見てほしい。

ヨキッチを「かなり優れたパサー」と呼ぶのは控えめすぎる。得点をあげるよりもパスのほうがうまいかもしれない。ヨキッチ以上の平均得点を記録しているセンターが、NBAの歴史においても多くないにもかかわらず、だ。高さのあるヨキッチは、大半の選手を相手にして上から見渡すことができる。彼に通せないパスはないのだ。

ベースラインやペリメーターなどからヘルプがあっても関係ない。ヨキッチに複数の選手をぶつけることは、オープンなレイアップやダンク、3ポイントショットに終わることが多いのだ。コートのいたるところでヨキッチがピンポイントの正確無比なパスを出す。その進め方の早さに、チームメイトですらついていけないこともあるほどだ。

ヨキッチは試合平均のタッチ数がNBAで圧倒的に多いが、ボールを持っている時間はタッチあたり2.7秒とリーグ149位の数字だ。

こうなると、ヨキッチを守るための最善策は何か、頭を悩ませてしまう。どんな守備をしてもヨキッチは対応する。あまりに簡単に守備を破るため、その守備をしたことをすぐに後悔させるほどだ。

だからこそ、今回のプレイは特別なのだ。特別に複雑なことは何もない。だが、ヨキッチの素晴らしさが、守ることを実質的に不可能としているのだ。

原文:This simple Nikola Jokic play has no clear answer: How Nuggets star's scoring and passing breaks defenses(抄訳)
翻訳:坂東実藍

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Scott Rafferty

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Scott Rafferty is an experienced NBA journalist who first started writing for The Sporting News in 2017. There are few things he appreciates more than a Nikola Jokic no-look pass, Klay Thompson heat check or Giannis Antetokounmpo eurostep. He's a member of the NBA Global team.

坂東実藍 Miran Bando

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。