センターのイメージを変え続けるニコラ・ヨキッチのアシスト能力

大西玲央 Reo Onishi

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1月19日(日本時間20日)、『NBAオールスター投票2023 presented by AT&T』の第3回途中経過が発表された。ウェスタン・カンファレンスのフロントコートはレブロン・ジェームズが650万票を超える大人気ぶりで1位の座を守っているが、そんななかで安定して同2位にランクインしているのが、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチだ。

2021年、2022年と2年連続でリーグの最優秀選手(MVP)に輝いているヨキッチだが、今季もこれまでのMVPシーズンに匹敵する活躍を見せている。センターというポジションのイメージを変え続けているヨキッチの活躍に今回は注目してみよう。

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今季のヨキッチで特に数字として目立っているのが、アシストの多さだろう。先日のミネソタ・ティンバーウルブズ戦で13アシストを記録したヨキッチは、キャリア通算3686アシストとなり、アレックス・イングリッシュが保持していたナゲッツの球団記録を更新した。イングリッシュが837試合で達成したのに対して、ヨキッチはこの試合が568試合目だったので、どれだけ高ペースでアシストを量産しているのかがわかる。

ヨキッチが今季記録している平均9.9アシストは現在リーグ2位で、2020-2021シーズンに記録した8.3アシストを上回り、自己最多の数字だ。アシストランキングのトップ10は、ヨキッチ以外は全員がガードポジションをプレイしている(ルカ・ドンチッチがガードなのかはまた別問題ではあるが)。ヨキッチ以外のフロントコート選手としては、ドマンタス・サボニス(サクラメント・キングス)が平均7.1アシストでようやく12位にランクインしてくる。

歴代で見ても、センターポジションでこれまで最も高かった平均アシスト数は1967-68シーズンのウィルト・チェンバレンが記録して8.6アシスト。3位には2020-21シーズンのヨキッチ(8.3)、4位も2021-22シーズンのヨキッチ(7.9)と、彼は歴史的に見ても異例な数字を見せているのだ。

ジャマール・マレーの復帰、アーロン・ゴードンやマイケル・ポーターJr.の活躍もあって、例年に比べてヨキッチのフィールドゴール試投数は落ちているものの、その分プレイメイクに回ることができている結果が、この自己最多の平均アシスト数だろう。

12月以降、ヨキッチの平均アシスト数は二桁を超えており、このままいけばシーズン平均でも二桁に乗せることもできる。そのペースを維持することができれば、オスカー・ロバートソンとラッセル・ウェストブルックに次いで、シーズンを通して平均トリプルダブルを記録するNBA史上3人目の選手となる。今季はすでに14回トリプルダブルを達成しており、自己最多は2021-22シーズンの19回なので、それを更新するのも時間の問題だろう。

シーズンの終わりに行われるMVP投票でよく出てくる言葉が『voter fatigue(投票者の飽き)』だ。毎年同じ選手に投票することに飽きて、違う選手に投票してしまう現象のことをこう呼んでいる。

実際にそういった行動があるのかは不透明だが、2年連続での受賞者はヨキッチを含め複数人いるものの、3年連続となると、1961~63年のビル・ラッセル、1966~68年のチェンバレン、そして1984~86年のラリー・バードの3人しかいない。マジック・ジョンソン、マイケル・ジョーダン、レブロン・ジェームズといった偉大な選手たちでさえ達成していないのだ。

ヨキッチがこの活躍をシーズン終わりまで続ければ、十分にMVP選出に値するシーズンとなる。そういった意味でも、今後の彼の活躍とMVP争いに注目だ。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。