2024年のNBAトレード期限の評価:補強したニックスやバックス、大きく動いたマーベリックスら

Stephen Noh

坂東実藍 Miran Bando

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2024年のNBAトレードデッドライン(トレード期限)は、近年のような大型トレードがなかった。その代わりに、より規模が小さい取引がたくさん行われている。これらは非常にオープンだった優勝争いのバランスに影響を及ぼすかもしれない。

タイトルを競う多くのチームが、層の厚みを増すクオリティーの高い選手を獲得した。成績が優れないチームの大半は、ベテラン選手たちを放出している。

ここでは、トレードデッドラインにおける動きを評価する。

NBAトレードデッドライン2024の評価

Bojan Bogdanovic Detroit Pistons
(NBA Entertainment)

ニックス

ニューヨーク・ニックスはトレードデッドラインの前にリーグで最も好調だったチームだ。ここ19試合で16勝をあげている。その彼らがボーヤン・ボグダノビッチとアレック・バークスを加え、ロスターをさらに改善させた。そのために要したコストも、複数のドラフト2巡目指名権、ローテーション外の選手たち、そしてクエンティン・グライムズと最小限にとどめている。

ボグダノビッチは数シーズン前のような選手ではなくなっている。だがそれでも、様々なかたちで得点をあげ、スペーシングでフロアを広げることができるのは変わらない。ニックスはジェイレン・ブランソンとジュリアス・ランドルに極めて大きな負荷をかけてきた。ボグダノビッチは自らショットをつくり出せ、彼らの負担を軽減できる。

バークスは、トム・シボドー・ヘッドコーチに合う選手だ。屈強なディフェンダーで、優れた3ポイントシューターであり、求められることを何でもしてくれるだろう。

これでニックスはリーグ有数の層の厚みを持つチームとなった。ジョエル・エンビードが負傷したフィラデルフィア・76ersや、ドック・リバースHCになったミルウォーキー・バックスを巡る不確実さを考えれば、ニックスはボストン・セルティックスのファイナル進出に立ちはだかるチームにもなるかもしれない。

ベバリーとバックス

パトリック・ベバリーは自身のポッドキャストのX(旧ツイッター)アカウントを通じ、自分のトレードを明らかにしたNBA史上初の選手となった。シャムズ・シャラニア記者やエイドリアン・ウォジナロウスキー記者に先駆けて、バックスへの移籍を伝えたのだ。

ベバリーがトレードデッドラインでこういった話題を提供したのは、これで2年連続だ。

コートの上に話を戻すと、ベバリーはバックスにとって良い補強だ。彼らはペリメーターでの守備の助けを必要としていた。ベバリーはすぐに彼らの最高のストッパーとなるだろう。

ホークス

アトランタ・ホークスが揺り動かそうとしていたことは周知のとおりだ。市場で最も話題となったのはデジャンテ・マレーだが、ホークスが好むオファーではなかった。彼らはトレードデッドラインでまったく動かずに今季を終えることとなる。

22勝29敗で分岐点を必要としていたチームにとっては落胆だ。先週は4連勝を飾るなど、最近のホークスはプレイが良くなっている。だが、4連勝の前は4連敗を喫した。4連勝後も2連敗だ。

月並みというチームで、オフシーズンの変化を目指すことになる。

マーベリックス

ダラス・マーベリックスはトレードデッドラインで最も積極的なチームのひとつだった。ドラフト1巡目指名権を使ってダニエル・ギャフォードを獲得し、もうひとつの指名権と指名権交換権を使ってPJ・ワシントンを手に入れた。

ギャフォードとワシントンはともに優れた選手たちだ。しかし、このロスターに自然にフィットしない。ギャフォードは現在の先発センターであるデレック・ライブリー二世とほぼ同じ選手だ。ワシントンは手放したグラント・ウィリアムズからそれほどのアップグレードにならない。

これらの動きは、1年後に良い結果と出るかもしれない。あるいは、ルカ・ドンチッチを満足させ続けるための必死さを反映しているのかもしれない。カイリー・アービングを獲得した昨季のトレードと同じことが言えるだろう。

マーベリックスは上振れも下振れも大きい動きを続けている。これらのすべてが機能しなければ、現在も未来も担保に入れるという、散々な結果となるのだ。逆にこれらのトレードが当たれば、もう少し長くドンチッチを満足させ続けられるかもしれない。

グリズリーズ

選手たちを引き止めすぎ、何も見返りなしに手放すことになれば、常に批判の的となる。メンフィス・グリズリーズはその過ちを犯さないことに決めた。

大きな動きは見せていない。だが、スティーブン・アダムズとゼイビアー・ティルマンを放出し、引き換えに5つのドラフト2巡目指名権を獲得した。すでに十分な資産を増やしたかたちだ。さらに、トレードに使用可能なもともとのドラフト1巡目指名権も持つ。

グリズリーズにとっては苦しいシーズンだが、フロントオフィスはそれを生かすかたちとしている。

コルクマズ

『CBS Sports』のジェームズ・ハーバート記者によると、フルカン・コルクマズが最初にトレードを要求したのは2018-2019シーズンだ。以降、トレード要求に関して彼はリーグを先導した。毎年の要求し、バディー・ヒールドの76ers移籍の取引でようやく出口を見つけている。

ロサンゼルス・クリッパーズからのトレードを望んでいた元チームメイトのPJ・タッカーは、同じように幸運ではなかった。『TNT』のクリス・ヘインズ記者によると、タッカーはバイアウトを要求するよりもベンチに座り続けるようだ。

デニス・スミスJr.

トロント・ラプターズとブルックリン・ネッツのトレード発表のさ中、ウォジナロウスキー記者が誤って取引にスミスJr.が含まれると投稿した。その後、同記者が間違えていたと釈明。スミスJr.はネッツにとどまった。

ウォジナロウスキー記者の投稿を見たスミスJr.は、この日一番のリアクションを見せている。

スパーズ

サンアントニオ・スパーズのトレードは小さな取引ひとつだった。フリーエージェントになるダグ・マクダーモットをインディアナ・ペイサーズに放出しただけだ。それでも、彼らは大きな勝利を収めた。

スパーズには、ラプターズからのトップ6の保護条件つきのドラフト指名権がある。トレードデッドライン前の確率は65.5%だった。ラプターズはその指名権を保とうとするよりも、今現在の勝利のためにベテランのケリー・オリニクを獲得するという、この日最も奇妙な動きに出ている。また、ラプターズはデニス・シュルーダーを放出し、ネッツとの取引で獲得したスペンサー・ディンウィディーをウェイブ(保有権放棄)するなど、ポイントガードも失った。

ラプターズはプレイイン・トーナメント進出のための最後の努力をしているようだ。一方で、スパーズはその恩恵を受けるだろう。

フォンテッキオ

ユタ・ジャズは開幕7勝16敗スタートからシーズンを完全に好転させた。その一翼を担ったのが、34試合に先発出場したシモーネ・フォンテッキオだ。

その報いは、リーグ最下位のデトロイト・ピストンズへのトレードとなった。さらに失礼なことに、ウォジナロウスキー記者の速報投稿で、フォンテッキオは名前のスペルさえ正しくつづられなかった。

だが、フォンテッキオにとって悪い知らせばかりではない。夏にはFAとなる。リーグ全体を通じて関心を引きつけるはずだ。

ブルズ

過去数年のトレードデッドラインで、シカゴ・ブルズのファンはチームが何かをするように願ってきた。だが、フロントオフィスは継続性で勝つことができると強調。それは彼らを一貫して平凡なチームとしていった。

何もしないことの見事な連鎖だ。

少なくとも今シーズンいっぱい、彼らは月並みなままだ。ブルズの一部選手には関心が寄せられていた。アレックス・カルーソは人気だった。デマー・デローザンとアンドレ・ドラモンドもトレードできたはずだ。

だが、ブルズはプレイイン・トーナメントの座を狙い続けることになる。ファンにとって非常に残念だ。

原文:NBA trade deadline 2024 winners and losers: Knicks, Bucks gear up for playoffs; Mavericks take a big swing(抄訳)
翻訳:坂東実藍

Stephen Noh

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Stephen Noh started writing about the NBA as one of the first members of The Athletic in 2016. He covered the Chicago Bulls, both through big outlets and independent newsletters, for six years before joining The Sporting News in 2022. Stephen is also an avid poker player and wrote for PokerNews while covering the World Series of Poker from 2006-2008.

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フリーランスライター。NBAや欧州サッカーを中心に担当。執筆業は約20年の40代。マジック・ジョンソンのような華麗さを夢見るが、現実は地味キャラ。ならば目指すはサネッティのような継続性か。日々、子どもたちの世話に追われながらバスケとサッカーを追い続け、地道に各種媒体へ寄稿。