【NBAスタッツ】注目したいMVPニコラ・ヨキッチの知られざる守備力

大西玲央 Reo Onishi

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5月11日(日本時間12日)、デンバー・ナゲッツのニコラ・ヨキッチが2021-22シーズンのNBA最優秀選手賞(MVP)を受賞し、2年連続での受賞を達成した史上13人目の選手となった。

平均33.5分間のプレイで平均27.1得点(リーグ6位)、13.8リバウンド(同2位)、7.9アシスト(同8位)と3部門でリーグトップ10入りを果たし、1シーズンで通算2000得点以上、1000リバウンド以上、500アシスト以上を記録したNBA史上初の選手にもなっている。

さらに、選手の総合的な能力を評価する指標としてNBAでよく利用されるPER(プレイヤー・エフィシェンシー・レーティング)では、32.85を記録し、ウィルト・チェンバレンが持っていた歴代最高記録の32.08を60年ぶりに更新した(※チェンバレンの時代はブロック、スティール、オフェンシブリバウンドなどが計測されていないため、正確な比較は困難ではあるが)。

ジャマール・マレーとマイケル・ポーターJr.という主力二人を欠いた状態で、チームを牽引し続けたヨキッチの活躍は凄まじく、彼ひとりがいることによって生み出されるオフェンスはリーグ屈指のものだった。

しかし、今回注目したいのはヨキッチのディフェンスにおける貢献度だ。これまでのイメージから、どうしてもヨキッチはディフェンスがよくないという印象を持つ人も多いが、今季はディフェンス面での活躍が特に高かったのだ。

ディフェンシブリバウンドでの貢献

ディフェンスは数値化するのが難しい。よく平均リバウンド、ブロック、スティールなどが項目としてあげられるものの、これらは試合やプレイの状況などに大きく左右されてしまうため、絶対的な指標としては使用されにくい。

例えばリバウンド数は、お互いのチームが多くショットを外していれば、リバウンド機会が増え、必然的にリバウンド数も増える。逆にショットが高確率で決まっている試合では、全体的なリバウンド数が低くなる。必ずしも高い平均リバウンド数=良いリバウンダーということにはならないのがわかるだろう。

そこで利用されるのが、REB%というものだ。これは回数ではなく、リバウンドが発生する状況のうち、何%を獲得できているかを測るものだ。ディフェンシブリバウンドはDREB%、オフェンシブリバウンドはOREB%と分けたスタッツが存在する。

詳細なスタッツを計測しているBasketball-Reference.comで今季のDREB%を見てみると、ヨキッチは35.5%を記録しており、1位のルディー・ゴベアの36.3%に次ぐリーグ2位だ。昨季は26.1%で、自己ベストでも2017-18シーズンの27.9%だったことから、今季は大幅にディフェンシブリバウンドを向上させていることがわかる。

ハッスルスタッツでも高評価

さらにヨキッチが向上させているスタッツに、コンテステッドショットというものがある。これは、ディフェンス時に相手のショットに対して、手を上げて守りにいった回数だ。ヨキッチは昨季の9.1本から、今季は12.2本まで増やしており、これはヤコブ・パートル(サンアントニオ・スパーズ)、ゴベア、エバン・モーブリー(クリーブランド・キャバリアーズ)に次いでリーグ4位だ。

ヨキッチの平均ブロック数は0.9本と決して高いものではない。身体能力が高いわけではなく、ヘルプで飛び込んでリム周りで強烈なブロックで相手を止める彼を想像する人はあまりいないだろう。しかし、こうしてポジショニングを駆使して、相手のショットを邪魔する形でも、しっかりと貢献ができる。

彼はどちらかというと、その上手いポジショニングと、素早い反射神経で相手のパスコースを邪魔する形でディフェンスに貢献する。この結果が見られるのがディフレクションだ。

ディフレクションは、簡単に説明すると相手のパスを弾いた数。ヨキッチはこれが平均2.9本で、シーズンの半分となる41試合以上に出場した選手に絞るとリーグ10位にランクインする。そして彼より上にいる選手は、4.0本でトップのデジャンテ・マレー(スパーズ)や、3.9本で2位のフレッド・バンブリート(トロント・ラプターズ)など、ペリメーターで活躍する選手がほとんどだ。

リーグ平均の6フィート7インチ(201cm)以上の選手に絞り込むと、ロバート・コビントン(ロサンゼルス・クリッパーズ)、ハーバート・ジョーンズ(ニューオーリンズ・ペリカンズ)、OG・アヌノビー(ラプターズ)に次いで4位となる。

今回は、割とわかりやすいスタッツを紹介したが、さらに複雑な数式でディフェンスでの活躍度を測る数値も存在する。例えば、Basketball-Reference.comのDBPM(Defensive Box Plus/Minus)ではリーグトップの4.5(2位はミルウォーキー・バックスのヤニス・アデトクンボの3.5)、ESPNが独自の公式で計測するDRPM(Defensive Real Plus-Minus)でも6.62でリーグ6位と高順位にヨキッチはランクインしている。

オフェンスの選手と見られがちなヨキッチだが、今季はディフェンス面でも高い貢献を見せていたことが、MVP受賞に繋がったのだろう。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。