【NBAスタッツ】MVP級の活躍を続けるジャ・モラント、2010-11シーズンのデリック・ローズと比較

大西玲央 Reo Onishi

【NBAスタッツ】MVP級の活躍を続けるジャ・モラント、2010-11シーズンのデリック・ローズと比較 image

今季MVP級の活躍を続けるジャ・モラント

メンフィス・グリズリーズのスターポイントガード、ジャ・モラントがリーグ入り3年目にして大躍進を見せている。今季初めてオールスターに選出されたモラントは、ここまで平均27.6得点、5.9リバウンド、6.6アシスト、1.2スティール、フィールドゴール成功率49.8%、3ポイント成功率34.4%という数字を残しているのに加え、驚異的なハイライトプレイを量産。多くのファンを魅了する、今NBAで最も見ておきたい選手のひとりだ。

先日のサンアントニオ・スパーズ戦では自身のキャリア最多だけでなく、グリズリーズのフランチャイズ記録も更新する53得点を叩き出した。その試合では、前半終了時にとんでもないブザービーターを決め、この動画はNBAの公式Instagramアカウント史上最も視聴された動画となった。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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リーグ3年目に大きな飛躍を見せるポイントガードというプロフィールで、ある選手を連想する人もいるかもしれない。2010-11シーズンにMVPを獲得し、一気にNBAスーパースターの仲間入りを果たしたデリック・ローズだ。

両者には、ずば抜けた身体能力から繰り広げられるプレイはもちろん、スタッツも類似点が多い。両選手の2年目から3年目への飛躍を見比べてみよう。

ジャ・モラント(メンフィス・グリズリーズ)

シーズン 得点 リバウンド アシスト FG% 3P% FT% Net Rtg USG%
2020-21 19.1 4.0 7.4 44.9% 30.3% 72.8% 2.6 26.7%
2021-22 27.8 5.8 6.6 49.6% 34.3% 76.0% 3.9 33.0%

デリック・ローズ(シカゴ・ブルズ)

シーズン 得点 リバウンド アシスト FG% 3P% FT% Net Rtg USG%
2009-10 20.8 3.8 6.0 48.9% 26.7% 76.6% -0.4 26.8%
2010-11 25.0 4.1 7.7 44.5% 33.2% 85.8% 8.5 31.4%

※FG%(FG成功率)、3P%(3P成功率)、FT%(FT成功率)、Net Rtg(ネットレーティング/100ポゼッションあたりのチームの得失点差)、USG%(ユーセージレート/チーム全体の攻撃ポゼッションのうち当該選手のプレイでポゼッションを終了した割合)

どちらの選手も平均得点を大きく伸ばし、チーム内でのUSG%も3割以上に乗せている。USG%はFG試投数、FT試投数、ターンオーバー数などの数字を元に、どれだけ当該選手のプレイでチームのポゼッションが終了しているかを計算した数値で、チームがその選手にどれだけボールを預けているのかがわかる。

デリック・ローズ、2010-11シーズン
NBA Entertainment

さらにローズの場合、特に評価の対象となったのがチームの成績だろう。ブルズは2009-10シーズンにレギュラーシーズン41勝41敗という成績だったのを、ローズがMVPを獲得した2010-11シーズンには62勝20敗まで向上させ、リーグトップの成績を残した。

グリズリーズは昨季の短縮されたシーズンで38勝34敗という成績で、これを通常のレギュラーシーズン82試合に換算すると43勝となる。今季はここまで43勝21敗でリーグ3位と、大躍進を見せており、このペースを維持すれば、グリズリーズは55勝まで勝利数を伸ばすことができる。

もちろん、プレイスタイルが全く一緒というわけではない。ローズが活躍した当時はまだ3Pショットの革命が起きておらず、3P試投数のリーグ平均が18.0本だったのに対して、今季は35.2本だ。コート上のスペーシングの概念が異なり、両者のショット分配率も大きく異なる。

ローズがミッドレンジからのジャンプショットを1試合平均5.5本(成功率40.3%)打っていたのに対して、モラントはほぼこのエリアからのショットを排除しており、1試合平均わずか1.3本(成功率27.0%)しか打っていない。

その分、モラントはペイント内でのFG試投数が14.9本(成功率56.3%)で、ローズの9.4本(成功率52.7%)を大きく上回る。また、モラントは今季のペイント内得点でリーグトップとなる平均16.8得点を記録している。過去25シーズンで、ガードが同項目でリーグトップに立ったことはなく、モラントの数字は特筆すべきポイントだ。


モラントはシーズンが進むにつれ数字を伸ばしており、このまま成長と活躍を続けていれば、レギュラーシーズンMVP候補として真剣に検討する必要のある選手となるだろう。現在モラントは22歳、ローズが史上最年少でMVPを獲得した年齢と同じだ。

時代の違う選手の比較はいつも難しいものではあるが、スターポイントガードがチーム躍進の原動力となり、リーグを席巻しているという点では間違いなく共通していると言えるだろう。今後もモラントの活躍には注目だ。

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大西玲央 Reo Onishi

大西玲央 Reo Onishi Photo

アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。