NBA.comのショーン・パウエル記者が2019-20シーズンを迎える全30チームの戦力を分析するシリーズコラム。第24回目は、フィラデルフィア・76ers編をお届けする。
2018-19シーズン成績:50勝32敗、カンファレンス・セミファイナルでトロント・ラプターズに敗退
新加入:アル・ホーフォード(フリーエージェント)、ジョシュ・リチャードソン(トレード)、トレイ・バーク(フリーエージェント)、マティース・サイブル(ドラフト)
退団:ジミー・バトラー、JJ・レディック、TJ・マッコネル、ボバン・マリヤノビッチ
ある程度健康なジョエル・エンビード、ベン・シモンズの成長、そしてシーズン中にジミー・バトラーとトバイアス・ハリスを獲得した76ersは、優勝候補のひとつと考えられていた。
多くのスター選手を擁したチームは、全国放送での注目度も高く、その後NBAチャンピオンとなったトロント・ラプターズ相手には第7戦の最終ブザーまでもつれる激戦を演じた。敗戦後、エンビードが涙を流しながらロッカールームに下がっていく姿は、76ersがどれだけ惜しかったのか、そしてイースタン・カンファレンス・ファイナルとNBAファイナルに出場できないことがどれだけ失望に溢れているのかを物語っていた。
新しく就任したエルトン・ブランドGM(ゼネラルマネジャー)が将来のドラフト1巡目指名権とルーキーガードのランドリー・シャメットをクリッパーズにトレードし、このオフシーズンに制限なしフリーエージェントとなったハリスを獲得したことで、76ersが昨シーズンにかけていた期待値の高さがわかる。
シーズン中、エンビードは圧倒的なパフォーマンスでリーグ屈指のビッグマンであることを証明。平均27.5得点、13.6リバウンド、1.9ブロックはどれでもリーグトップ10に入る数字だ。リーグのほとんどのポイントガードよりもサイズがあるシモンズは、またもやユニークなプレイメイカーとして活躍した。そして10フィート(約3メートル)以内のショットを打てない弱点を変わらず突かれ続け、フリースローの成功率はわずか60%に終わった。
一方、JJ・レディックは3ポイントショット成功率39.7%を記録し、ロングレンジからのボリュームシューターとして効果的だった。全体的に層が厚かったことで、マーケル・フルツという失敗は影を潜めた。2年前のドラフト全体1位指名であるフルツはわずか19試合にしか出場せず、トレード期限でオーランド・マジックにトレードされた。
オフの動き
『Forbes』によると、現在の76ersの球団価値は17億ドルと評価されているだけに、2011年にジョシュア・ハリスが2億8700万ドルでチームを買収したのは賢明だったと言えるだろう。
この夏、オーナーであるハリスはわずか8年前にチームを購入した額よりも多くの額を3人の選手に使うこととなった。
76ersはシモンズとマックス延長契約(5年1億7000万ドル)を結び、アル・ホーフォードを4年1億900万ドルで契約し、トバイアス・ハリスと5年1億8000万ドルで再契約したのだ。優勝を狙うチャンス、優勝候補になるためには多くの代償を必要とするのだが、76ersは積極的にそれを支払った。
シュート力がないにしても、シモンズの延長契約は頭を悩ます必要のない決断だった。シュート以外の要素は全て平均以上の能力を持っており、いずれ外から打てるようになる成長は見込める。
33歳のホーフォードの契約は興味深い。バトラーがマイアミ・ヒートに行くことを知った76ersは、すぐホーフォード獲得に意識を切り替え、ホーフォードはボストン・セルティックスからライバルチームへと移籍した。高額な契約となったものの、ホーフォードはシュートレンジもあり、ピック&ロールで活躍もできるビッグマンだ。パワーフォワードになることで、エンビードと強力なコンビを組めるかもしれない。
バトラーの希望を聞いた76ersは、ヒートとサイン&トレードに合意し、代わりにジョシュ・リチャードソンを獲得した。25歳のリチャードソンは熟練した選手であり、もしかしたらバトラーと同じくらいのフィットを見せてくれるかもしれない。ヒートでは得点リーダー(平均16.6得点)だっただけに、ローテーション入り選手としては十分な活躍をするだろう。
そしてトバイアス・ハリスとの大型な再契約だ。ハリスは1年前にロサンゼルス・クリッパーズとの8000万ドルの延長契約を拒否し、契約最終年をプレイすることを選択した。トレード期限に76ersが彼を獲得したことで、ハリスはこのオフシーズンに大型契約を勝ち取りやすい状況に身を置くことができた。なぜならハリスを獲得するために76ersは多くをトレードで放出しており、もし再契約することができなければ、ランドリー・シャメットと複数のドラフト1巡目指名権を無駄に失ったことになってしまうからだ。だからこそ、76ersはハリスの要求通りに動くしかなかった。
NBAで戦い抜くには、周りに負けまいと見栄を張る必要が時にはある。76ersにとってその相手はミルウォーキー・バックスやトロント・ラプターズやボストン・セルティックスであり、まさに大金をかけてそれに挑んだのだ。
原文:30 Teams in 30 Days: New-look Sixers remain contenders after busy summer by Shaun Powell/NBA.com