プレイオフのシリーズは、調整をしたり、あるいは足りなかったりによって勝負が決まることもある。
マイアミ・ヒートのゴラン・ドラギッチは、ボストン・セルティックスとのイースタン・カンファレンス・ファイナル第2戦で、終盤に重要なショットをいくつか決めた。ドラギッチに苦しめられたのは2試合連続だ。セルティックスのブラッド・スティーブンズ・ヘッドコーチは、対策を練らなければいけないことを分かっていた。
シリーズ最初の2試合で、ドラギッチは1試合平均27.0得点とヒートのトップスコアラーだった。フィールドゴール成功率は55.3%、3ポイントショット成功率は46.2%だ。2シーズン前にオールスターに出場した選手らしかった。ヒートの攻撃の原動力になっていた。プレイオフの12試合のうち、ドラギッチは8試合で20得点超をマークしている。
スティーブンズHCはドラギッチにケンバ・ウォーカーをつかせてシリーズを始め、得点力のあるガード対してピック&ロールへの答えを出せなかった。ヒートはウォーカーを攻め、ドラギッチに簡単に得点したり、セルティックスがスイッチした際はミスマッチを探して正しい決断ができるようにした。
第3戦でセルティックスが初勝利をあげるのに大きな違いとなったのは、その点を修正したからだ。
オールディフェンシブ・ファーストチーム選出2回のマーカス・スマートの起用だ。
スマートは守備で相手にとって厄介な選手として知られている。速く、フィジカルで、守備IQが極めて高い。相手を苛立たせるこつを知っている。ドラギッチの得点を抑えることをセルティックスが重視したことで、その任務を担うのにスマートは完璧な選手だった。
そして第3戦、ドラギッチはFG10本中2本成功、3P5本中1本成功の11得点にとどまり、5ターンオーバーを記録した。出場時間帯のチームの得失点差を示すプラスマイナスは、必ずしもコートで起きていることを正確に描写するものではない。だが、第3戦でドラギッチのプラスマイナスは、マイナス29だった。19点差でチームワーストの数字だ。
ひとつの試合でのある選手の生産性をおおよそで測定する『Basketball-Reference』の『Game Score feature』によると、ドラギッチのプレイオフキャリアで下から2番目の数字だ。
そして、ドラギッチの苦戦は、スマートの功績が大きい。
スマートは守備で休まず、得点ごとにフルコートでドラギッチについた。第3戦で2選手が共有したポゼッションのすべてを見直すと、かなりの頻度でドラギッチは他選手にボールを運ぶのを任せざるを得なかった。スマートのフルコートのプレッシャーに対応するのが簡単ではなかったからだ。
ヒートはスマートからはがそうと、あるいはスイッチさせようと、何度もスクリーンをかけた。だが、それでもスマートがついていたのだ。
ただ、スマートのドラギッチに対する見事な1on1ディフェンスは別にして、本当に見事だったのは、ピック&ロールでスイッチを可能にする彼の力だった。
ポストシーズンを通じて、セルティックスの対戦相手は、より小さいウォーカーをピック&ロールでターゲットにしてきた。セルティックスは守備でスイッチをいとわない。それにより、ウォーカーが重量級にぶつかろうとするミスマッチが生まれることがしばしばあった。だが、ドラギッチを守る責任をスマートが負うようになった今は、スクリーンの際に(大半はバム・アデバヨのようなビッグマンだが、ジミー・バトラーのようなフォワードの時も)、多才なディフェンダーがロールマンにスイッチする。
そして、このプレイのように、セルティックスにとって不利なマッチアップとなる機会が減る。
ウォーカーがドラギッチを守っていたら、スクリーンでセルティックスがスイッチした時に、ウォーカーはミスマッチでバトラーに仕事をさせることになっていただろう。実際は、ドラギッチはスマート相手に得点するのが簡単ではないと分かり、ドリブルからジェイソン・テイタムという堅実なディフェンダー相手に勝負しようとせざるを得なかった。ドラギッチは素晴らしい動きをしたが、テイタムはうまくリカバーし、結果、ショットは外れた。
これは、この守備の修正が、いかにただドラギッチを止める以上の違いとなったかを示す一例に過ぎない。
第4戦でもセルティックスがこの戦略を採用した場合、ヒートがドラギッチを活躍させるためにいかに戦うのか見ものだ。
スマートがプレッシャーをかけ続けられた場合、このシリーズでセルティックスの挽回を阻みたいのであれば、ヒートには攻撃の別の源が非常に必要となるだろう。
原文:NBA Playoffs 2020: The difference-making adjustment that helped the Boston Celtics get back in their series with the Miami Heat by Kyle Irving/NBA Canada(抄訳)