NBAで活躍する選手はどこ出身? 大学バスケのカンファレンスを紹介:ハイメジャー編

大西玲央 Reo Onishi

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3月と言えば、アメリカでは大学バスケットボールが盛り上がる時期だ。3月中旬に開幕されるNCAAトーナメントを中心に『マーチマッドネス』と銘打たれ全米が熱狂する。

しかし盛り上がるのは決してNCAAトーナメントだけではない。その直前にある各カンファレンス・トーナメントも、NCAAトーナメントの出場可否に関わってくることもあり、カンファレンス内のライバル校たちが激戦を繰り広げる。

今回はNCAAバスケットボールにおけるカンファレンスの紹介と、それぞれを代表するNBA選手たちをチェックしてみよう。

ハイメジャー・カンファレンス

まず、アメリカの大学スポーツは大学の大きさや競技レベルを基準に、3つのディビジョンに分かれている。一般的に注目されているのはディビジョン1だ。2023-2024シーズンは362校がディビジョン1に分類されており、それらが32のカンファレンスに所属している。

当初は同地域で同レベルの学力や競技力を持った学校の集まりだったカンファレンスだが、近年はカンファレンスからの離脱や移籍なども多くなり、地域的な意味合いは薄れている。

32カンファレンスのうち、特に強豪校が集まっている6カンファレンスがバスケットボールではハイメジャー(High-major)と呼ばれる。ハイメジャーに分類されているカンファレンスは以下の通り:

  • アトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)
  • ビッグ12・カンファレンス
  • ビッグテン・カンファレンス
  • Pac-12・カンファレンス
  • サウスイースタン・カンファレンス(SEC)
  • ビッグイースト・カンファレンス

それでは各カンファレンス出身でどのような選手がNBAで活躍しているのか見てみよう。

Zion Williamson, Brandon Ingram
(NBA Entertainment)

アトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)

2023-2024シーズンに所属している大学は:

  • クレムソン大学
  • デューク大学
  • ノースカロライナ大学(UNC)
  • ノースカロライナステイト大学
  • ウェイクフォレスト大学
  • バージニア大学
  • ジョージアテック大学(ジョージア工科大学)
  • フロリダステイト大学
  • マイアミ大学
  • バージニアテック大学(バージニア工科大学)
  • ボストン・カレッジ
  • ノートルダム大学
  • ピッツバーグ大学
  • シラキューズ大学
  • ルイビル大学

マイケル・ジョーダンのUNCや、多くのNBA選手を輩出しているデューク大学など名門が多く、耳にしたことのある大学名も多いだろう。

近年のカンファレンスMVPを見てみると、現役で活躍しているのはマルコム・ブログドン(バージニア大学)、マービン・バグリー三世、ザイオン・ウィリアムソン、トレイ・ジョーンズ(デューク大学)などがいる。

他にもジェイソン・テイタム、カイリー・アービング、パオロ・バンケロ、ブランドン・イングラム(デューク大学)、ドノバン・ミッチェル(ルイビル大学)、コービー・ホワイト(UNC)など活躍する出身選手は多い。

グラント・ヒル(デューク大学)やティム・ダンカン(ウェイクフォレスト大学)など、多くのレジェンドにもACC出身選手がいる。

2024-25シーズンからはサザンメソジスト大学(SMU)、カリフォルニア大学バークリー校、スタンフォード大学の加入が決定している。

Tyrese Haliburton, Joel Embiid
(Getty Images)

ビッグ12・カンファレンス

2023-2024シーズンに所属している大学は:

  • ベイラー大学
  • ブリガムヤング大学(BYU)
  • セントラルフロリダ大学
  • シンシナティ大学
  • ヒューストン大学
  • アイオワステイト大学
  • カンザス大学
  • カンザスステイト大学
  • オクラホマ大学
  • オクラホマステイト大学
  • テキサス大学
  • テキサスクリスチャン大学(TCU)
  • テキサステック大学
  • ウェストバージニア大学

ビッグ12のカンファレンスMVPに選出され、現在も現役で活躍している選手には、ケビン・デュラント(テキサス大学)、マーカス・スマート(オクラホマステイト大学)、バディ・ヒールド(オクラホマ大学)、ケイド・カニングハム(オクラホマステイト大学)などがいる。

MVPには選出されていなものの、ジョエル・エンビード(カンザス大学)、タイリース・ハリバートン(アイオワステイト大学)、トレイ・ヤング(オクラホマ大学)、デズモンド・ベイン(TCU)など多くのスター選手を輩出している。

カンファレンスの結成が1994年と割と新しいが、前身は1907年に結成されたビッグエイト・カンファレンスであり、他チームの合流で新たなカンファレンスとして拡大した形だ。

2024-25シーズンからはオクラホマ大学とテキサス大学が離脱し、アリゾナ大学、アリゾナステイト大学、コロラド大学ボルダー校、ユタ大学が新たに加入する。

Jaren Jackson Jr., Draymond Green
(Getty Images)

ビッグテン・カンファレンス

B1Gと表記されることの多いこのカンファレンスは、イーストとウェストの2つのディビジョンに分かれている。

イースト・ディビジョン

  • インディアナ大学ブルーミントン校
  • メリーランド大学
  • ミシガン大学
  • ミシガンステイト大学
  • オハイオステイト大学
  • ペンシルバニアステイト大学(ペンステイト大学)
  • ラトガーズ大学

ウェスト・ディビジョン

  • イリノイ大学
  • アイオワ大学
  • ミネソタ大学
  • ネブラスカ大学
  • ノースウェスタン大学
  • パデュー大学
  • ウィスコンシン大学

カンファレンスMVPには現役選手にドレイモンド・グリーン(ミシガンステイト大学)、ケイタ・ベイツ・ジョップ(オハイオステイト大学)、ルカ・ガルザ(アイオワ大学)、ジョニー・デイビス(ウィスコンシン大学)らがいる。

MVPだけを見るとオールスター級の少ない印象だが、他にもジャレン・ジャクソンJr.とマイルズ・ブリッジズ(ミシガンステイト大学)、フランツ・バグナー、ティム・ハーダウェイJr.、ジョーダン・プール、キャリス・ルバート、ダンカン・ロビンソン(ミシガン大学)、ディアンジェロ・ラッセルとマイク・コンリー(オハイオステイト大学)など活躍している選手は多い。

1991-92シーズンに全米で一大ムーブメントとなったファブ・ファイブの存在からミシガン大学の名前を知っているバスケットボールファンも多いだろう。

日本代表選手の富永啓生がプレイするネブラスカ大学も同カンファレンス所属だ。富永がどれだけ高いレベルで競い合っているのかがわかるだろう。

DeMar DeRozan, Jaime Jaquez Jr.
(Getty Images)

Pac-12・カンファレンス

2023-24シーズンに所属しているのは:

  • アリゾナ大学
  • アリゾナステイト大学
  • カリフォルニア大学バークリー校
  • カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)
  • コロラド大学
  • オレゴン大学
  • オレゴンステイト大学
  • サザンカリフォルニア大学(USC)
  • ユタ大学
  • ワシントン大学
  • ワシントンステイト大学

しかし同シーズンを最後に12校中、オレゴンステイト大学とワシントンステイト大学を除く10校が別カンファレンスに移籍することが決まっている。残された2校はウェスト・コースト・カンファレンス(WCC)に 間借りした形で2シーズンをプレイする予定で、その期間中にPac-12が拡大できなければ消滅する可能性もある。

近年のPac-12カンファレンスMVPはNBAでも活躍する選手を輩出することが多く、注目度も高い。直近の2022-23シーズンのハイメ・ハケスJr.(UCLA)から遡ると、ベンディクト・マサリン(アリゾナ大学)、エバン・モーブリー(USC)、ペイトン・プリチャード(オレゴン大学)、ジェイレン・ノウェル(ワシントン大学)、ディアンドレ・エイトン(アリゾナ大学)、ディロン・ブルックス(オレゴン大学)、ヤコブ・パートル(ユタ大学)と活躍している選手が多いのがわかる。

他にもラウリ・マルッカネン(アリゾナ大学)、デマー・デローザン(USC)、ジェイレン・ブラウン(カリフォルニア大学バークレー校)、カイル・クーズマ(ユタ大学)、デジャンテ・マレー(ワシントン大学)、ザック・ラビーン、ドリュー・ホリデー、ラッセル・ウェストブルック(UCLA)、ジェームズ・ハーデン(アリゾナステイト大学)、デリック・ホワイト(コロラド大学)、などがいる。

カリーム・アブドゥル・ジャバー、レジー・ミラー(UCLA)、ジェイソン・キッド(カリフォルニア大学バークレー校)、ゲイリー・ペイトン(オレゴンステイト大学)などレジェンド選手も多い。

Anthony Davis, Karl-Anthony Towns
(NBA Entertainment)

サウスイースタン・カンファレンス(SEC)

SECは14校が所属しており、イーストとウェストの2つのディビジョンに分かれている。

イースト・ディビジョン

  • フロリダ大学
  • ジョージア大学
  • ケンタッキー大学
  • ミズーリ大学
  • サスカロライナ大学
  • テネシー大学
  • バンダービルト大学

ウェスト・ディビジョン

  • アラバマ大学
  • アーカンソー大学
  • オーバーン大学
  • ルイジアナステイト大学
  • ミシシッピ大学
  • ミシシッピステイト大学
  • テキサスA&M大学

カンファレンスMVP受賞者で現在現役でプレイしている選手には、アンソニー・デイビス、マリーク・モンク、イマニュエル・クイックリー(ケンタッキー大学)、グラント・ウィリアムズ、ハーブ・ジョーンズ、ブランドン・ミラー(アラバマ大学)などが名を連ねる。

特にケンタッキー大学は毎年多くの選手がNBA入りする名門校だ。MVP受賞者以外にもシェイ・ギルジャス・アレクサンダー、デビン・ブッカー、ディアロン・フォックス、タイリース・マクシー、ジュリアス・ランドル、カール・アンソニー・タウンズ、ジャマール・マレー、タイラー・ヒーロー、バム・アデバヨ、シェイドン・シャープとそのリストは豪華だ。

他校からもブラッドリー・ビール(フロリダ大学)、アンソニー・エドワーズ(ジョージア大学)、ダリアス・ガーランド(バンダービルト大学)などオールスタークラスが輩出されている。

2024-25シーズンからはオクラホマ大学とテキサス大学の新規加入が決まっている。

Jalen Brunson, Josh Hart, Donte Divincenzo
(NBA Entertainment)

ビッグイースト・カンファレンス

11校で構成されるビッグイーストに所属するのは:

  • バトラー大学
  • コネチカット大学(UConn)
  • クレイトン大学
  • デポール大学
  • ジョージタウン大学
  • マーケット大学
  • プロビデンス大学
  • セイントジョンズ大学
  • シートンホール大学
  • ビラノバ大学
  • ゼイビアー大学

カンファレンスMVP受賞者にはジェイ・クラウダー(マーケット大学)、オットー・ポーター(ジョージタウン大学)、ダグ・マクダーモット(クレイトン大学)、ジョシュ・ハート、ジェイレン・ブランソン、コリン・ギレスピー(ビラノバ大学)などが名を連ねる。

他にもミケル・ブリッジズにドンテ・ディビンチェンゾ(ビラノバ大学)、ジミー・バトラー(マーケット大学)、マックス・ストゥルース(デポール大学)などがいる。

ジョージタウン大学やUConnなど名門校がいるだけに、過去にもパトリック・ユーイングにアレン・アイバーソン(ジョージタウン大学)、レイ・アレンにリチャード・ハミルトン(UConn)、ドウェイン・ウェイド(マーケット大学)などのレジェンド選手がプレイしていたことでも有名なカンファレンスだ。


今回はハイメジャー・カンファレンスに焦点を当てたが、次回はこれらに属さないミッドメジャー(Mid-major)と呼ばれるカンファレンスに所属する注目チームを紹介する。八村塁が所属したゴンザガ大学、渡邊雄太が所属したジョージワシントン大学、ステフィン・カリーが所属したデイビッドソン大学などもここに分類される。

出身大学に注目することで、NBAもまた違った視点から楽しむことができるだろう。

大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。