トラベリングの誤解を解くために尽力するNBA

NBA Japan

トラベリングの誤解を解くために尽力するNBA image

NBAのなかで最も誤解されている要素のひとつにトラベリングがある。NBAは今年、その誤解を解くために尽力している。『AP通信』のブライアン・マホーニー記者が詳しく報じている。

▶NBAジャパンゲームズ2019を無料で観るには?

ジェームズ・ハーデンが横にスライドしたり、後ろにステップを踏んだ途端、糾弾が始まる。

対戦相手のベンチ選手であろうが、スポーツバーで観戦しているファンであろうが、ハーデンがドリブルを止めてから遠く離れた場所でシュートを放ったことに対して、トラベリングだろうと声をあげる人が誰かしらいる。1歩余分にステップを踏んでオフェンス側の選手がアドバンテージを生み出すことを阻止すべく、レフェリー陣にとってトラベリングは今シーズン注視する動きのひとつだ。

ハーデンのように得点能力の高いスター選手は、以前ペリメーターでのハンドチェックが禁止された際にすでに有利になっているだけに、さらなるアドバンテージを与えるわけにはいかない。

レフェリー運営部門のバイスプレジデントであるマーク・ワンダーリックは「ディフェンスがハンドチェックできない今、オフェンスのトラベリングを許容してしまうと止めるのは不可能になってしまう」と語る。

とはいえ、ハーデンのシグネチャームーブとなったステップバックのほとんどは、トラベリングではない。

NBAのレフェリー育成の代表であるモンティ・マッカッチェンは「ルールに則っている。ただリズムが崩れているときにたまに3歩目が入ることがあるので、どれだけ難しい動きなのかをそれが物語っている」と説明する。

だからこそ、レフェリーは正しいコールができるように努力しているのだ。

NBAの批評家や、時にはファンからもあがる声で多いのが、リーグがトラベリングを取り締まらないというものだ。マッカッチェンによると、レフェリー陣は1試合につき2回ほどトラベリングのコールを間違えているというデータがあるとのことだが、最近のバスケットボールのスタイルでは、そのミスがディフェンスにとってより致命的になってしまうのだ。

選手たちはより大きく、より速く、よりスキルに長けており、前の時代ならセンターをやっているような選手が、何でもできるオールラウンダーになっているのだ。その良い例が211cmのMVP、ヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス)だろう。すでに許されている2歩でかなりの距離を稼げるだけに、3歩目が許されてしまうと守りようがない。

マッカッチェンはその差を、1970年代、80年代に活躍した185cmのガード、タイニー・アーチボルドと比較した。

「彼は2歩で10フィート(約3メートル)ほど進めたのだが、ヤニスはどれぐらいだ? ゲームは変わったんだ」。

それに対応するため、レフェリー陣も対応を変えた。マッカッチェンやワンダーリックが笛を吹いていた時代には、まずディフェンスの選手を見るように教えられていたが、近年では最初のオフェンスの選手の足元を確認し、軸足が確立されており、それが変わっていないかをチェックするように変わっている。

さらにNBAは、ルールブック上で『ギャザー』(ボール保持)をしっかりと定義することで、選手がボールを受け取るかドリブルを終了してから何歩ステップできるのかを明確化した。

先週行なわれたレフェリーのプレシーズン・ミーティングとトレーニングキャンプでは、毎回休憩が終了するたびに、レフェリーたちは3つのトラベリング動画を研究し、トラベリングに関する45分に及ぶ講義を行なったとマッカッチェンは話した。

チーム側にも教育ビデオが送られており、コーチ陣のプレシーズン・ミーティングにレフェリー陣が訪れ、2人のモデルプレイヤーを利用したトラベリングコールのデモンステレーションも行なっている。

ヒューストン・ロケッツのマイク・ダントーニHCによると、リーグ側はハーデンのステップバックからのジャンプショットはルールに則ったものであると主張している。「全ヘッドコーチにあれはトラベリングではないと説明していた」とダントーニHCは述べている。

「これで相手コーチが文句を言うのを辞め、メディアの皆さんもあれがトラベリングではないことを理解してもらえると嬉しい。トラベリングに関してはほかに取り締まらなければならないポイントがあり、NBAはそこをより改善できるよう取り組んでいる」。

昨シーズン、サンアントニオ・スパーズのグレッグ・ポポビッチHCはステップバック・スリーのことを「後ろに飛んで、トラベリングし、3ポイントショットを打つ」動きだと説明した。しかし、レフェリー陣はむしろ、ハーデンの賢さと創造性を賞賛した。

ワンダーリックは「ドリブルからはゴールに向かって2歩踏めるのはいつも言っているだろう? だがギャザーで後ろに2歩ステップを踏むということを、これまで誰も考えたことはなかったんだ」と話した。

リプレイセンターの責任者であるジェイソン・フィリップスも「ルールブックには、あの2歩は一定の方向でないといけないとは記述されていない」と付け加えた。

トラベリングだったらこれまでも吹かれていたはずで、そもそも議論すべきことではなかったとハーデンは主張する。

「コーチ、選手、ヘイトする人、ファン、誰からにせよ、あれがトラベリングだと言われるのには辟易だ」。

しかし、あの動きが怪しく見えるものであることは本人も認めており、レフェリー陣も自分たちの教育だけでなく、チームやファンにもしっかりと教える必要があることを理解している。トラベリングのルールが変わったわけではないが、正しく笛を吹くことにより重きが置かれるようになるのだ。

だからこそ、今年のプレシーズンで強調される点で最も重要視されているのがトラベリングなのだ。マッカッチェンは今回の注目ポイントを「1番がトラベリング、2番がトラベリング、3、4、5番目がトラベリングだ」と話す。

「もちろんそれは冗談で、ほかにも強調される点はある。とにかく、我々としては基本的な部分をしっかりと吹けるようになりたいと思っており、トラベリングはとても重要な要素だということだ」。

原文:NBA working to dispel misconceptions on traveling call by NBA.com

NBA Japan

NBA Japan Photo

NBA日本公式サイト『NBA Japan』編集スタッフ