無制限FAや制限付きFAとは? NBAのFA市場を理解するための用語集

大西玲央 Reo Onishi

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NBAファイナルが終わると、NBAはオフシーズンに突入する。オフシーズンでまず注目されるのがNBAドラフトだ。毎年60人近くのルーキーたちが新たにリーグ入りを果たす。そして次に大きく注目されるのがフリーエージェント(FA)市場の開始だ。2023年は6月30日(日本時間7月1日)が開始日となっている。

この日を皮切りに多くの契約やトレードが発表され、チーム構成が大きく変わっていく。各チームや選手のファンが一喜一憂する夏の風物詩だ。ここではそんなFA市場をより楽しむために、よく出てくる用語を簡単に解説していこう。

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無制限フリーエージェント(Unrestricted Free Agent|UFA)

FAは大きく分けると2種類ある。無制限FAと制限付きFAだ。無制限FAは、選手が所属しているチームから何の制限を受けることもなく、自由にどのチームとも契約することができる。日本語では『制限なしFA』や『完全FA』と表現されることもある。

制限付きフリーエージェント(Restricted Free Agent|RFA)

制限付きFAはどのチームとも契約交渉をすることができるものの、所属チームの制限がある状態のことを言う。選手は獲得を希望するチームからオファーシートを受け取り、所属チームはアメリカ東部時間の正午より前に受け取った場合は翌日の同23時59分までに、正午以降に受け取った場合は翌々日の同23時59分までにそれと同条件のオファーを提示することで、選手に残留してもらう権利を持っている。所属チームが同条件のオファーを提示しなければ、選手はオファーシートを受け取ったチームに移籍することができる。

制限付きFAになるパターンは、主に以下のパターンがある。

  • NBAドラフト1巡目指名の選手が、ルーキー契約の4年目を終え、所属チームからクオリファイング・オファーを提示される。
  • リーグ在籍3年以下の選手がクオリファイング・オファーを提示される。

クオリファイング・オファー(Qualifying Offer|QO)

選手が制限付きFAになるには、まず所属チームからクオリファイイン・オファーを受け取る必要がある。所属チームはNBAファイナル最終戦の翌日からFA市場開始までにオファーしなければならない。

クオリファイング・オファーは1年保証契約であり、所属チームが該当選手と再契約したい意思があることを示すためのものだ。これを受け制限付きFAとなった選手は、先述の通り他チームからオファーシートを受けることもできれば、クオリファイング・オファーをそのまま受けることもできる。後者の場合は、翌オフシーズンに無制限FAとなる。

チームオプション、プレイヤーオプション

契約の話のなかでよく出てくるのが、チームオプションとプレイヤーオプションという言葉だ。これは契約を継続するか打ち切るかの選択肢だと考えると良い。チームオプションの場合はチーム側に、プレイヤーオプションの場合は選手側にその選択肢がある。

例えば選手が4年契約を結び、4年目がチームオプションだった場合、契約3年目を終えた時点でチームがオプションを行使すればそのまま契約4年目に突入する。オプションを破棄した場合その選手はFAとなる。

契約の中にオプションは1年しか入れることはできない。ただし1巡目選手のルーキー契約のみ、3年目と4年目がチームオプションとなっている。

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例外条項(Salary Cap Exceptions)

NBAには全選手の年俸総額が超えてはいけないサラリーキャップという上限が設定されている。しかし実際はほとんどのチームがそのサラリーキャップを超えている。それを可能にしているのが、例外条項だ。

例外条項を利用すれば、サラリーキャップを超えても選手を獲得できるようになっている。様々な種類の例外条項が存在するが、いくつか紹介しておこう。

ラリー・バード例外条項(Larry Bird Exception)

正式名称はクオリファイング・ベテラン・フリーエージェント例外条項。所属している選手と再契約する際に、サラリーキャップを超えてしまうとしてもその選手の上限額で再契約できるようにするための例外条項だ。

この例外条項が適用される選手は限られており、適用できる選手はバード権(Bird Rights)を持っていると表現される。対象となる選手は、FAとして移籍したり、ウェイブ(契約解除)されずに同一チームに3シーズン在籍した選手だ。

3年契約でなくても、1年契約を3回結んだ選手でも適用可能だ。トレードされた場合でも、選手のバード権は引き継がれる。

ほかに在籍年数や制限の違いのあるアーリーバード例外条項、ノンバード例外条項などが存在する。

ミッドレベル例外条項(Mid-Level Exception|MLE)

バード例外条項が所属選手の再契約に使用するためのものだったと違い、ミッドレベル例外条項は再契約だけでなく、他チームのFAにも利用できる。初年度の限度額が決まっており、それがリーグの平均年俸に近い数字であることからミッドレベルと呼ばれている。

ミッドレベル例外条項には3種類あり、チームのサラリー総額の状況によって使用できる種類が変わる。

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大西玲央 Reo Onishi

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アメリカ・ニュージャージー州生まれ。国際基督教大学卒。NBA Japan / The Sporting Newsのシニアエディター。記事のライティング以外にもNBA解説、翻訳、通訳なども行なっている。訳書には『コービー・ブライアント 失う勇気』『レイ・アレン自伝』『デリック・ローズ自伝』「ケビン・ガーネット自伝』『ヤニス 無一文からNBAの頂点へ』。